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考え方から性感にアプローチ。主体的にセックスを楽しむために、メンタルをアップデート

  • 2025.1.2

よりよいセックスライフのためには、体のしなやかさと同様、マインドのあり方も重要

Photo_ Marta Bevacqua / Trunk Archive
mabv20240328-001Photo: Marta Bevacqua / Trunk Archive

よりよいセックスライフのためには、体のしなやかさと同様、マインドのあり方も重要に。特に女性のプレジャーには、それを受け入れ楽しみ実践しようとするマインドがあるかどうかが大きく関係してくるという。「少し前の日本人女性には、性的なことに対してネガティブであることを美徳とする文化がありました」と、婦人科医の海老根真由美先生は明かす。「そうした環境や教育にさらされて育ったことで、性行為に付随する心地よさを感じること自体に拒否反応を起こしてしまう人も。平たく言えば、プレジャーを得ることを自分に許している人と、そうでない人がいるという印象」。刷り込みによる後ろめたさが、感覚にすらセーブをかけてしまうのだ。

しかしそのリミッターは、ホリスティックなウェルネスを追求していく今の時代、捨て去ってよいものなのかも。海老根先生はこう続ける。「今この世の中に人間が存在するということは、私たちのご先祖さまも代々セックスをしてきたということ。好きな人がいて“触れたい”と思うのならば、無理に心を閉ざす必要はありません。“心地よさを求めるのは罪悪ではない”と受け入れて、フラットな考え方にマインドをシフトするだけでも、性生活をより主体的に楽しめるようになるはず」

そもそも日本人は「性に関して圧倒的にオープン」だと語るのは、日本のフェムテック業界を牽引するフェルマータでCEOを務める杉本亜美奈さん。「セクシャルなトピックを含むさまざまな価値観に、ユニークなところが散見されます。“女性の権利問題においては西洋より遅れている”と考えられがちですが、西欧で育ってきた身としてはむしろ反対だと感じていて。例えば私の会社で以前ショップを出したとき、そこで扱っていたNY発のバイブレーターを朝の情報番組で取り上げてくれたことがありました。西洋諸国では、あらゆる人の目に触れる時間帯の生放送でセックストイがフィーチャーされるなんて、まずありません。また夏のお祭りで、花魁道中を模した飾りつけを背景に、小さな子を連れた親子連れが笑顔で写真撮影をしているのを見たことも。国民的ブームとなったアニメの『遊郭編』がゴールデンタイムに放送されていたことだってありました。これらはすべてヨーロッパでは考えられないこと。日本に来てすぐの頃は“この国って性に対してなんてオープンなんだろう!”と、本当に驚きました。女性が強いイメージのある西洋ですがその実、古来より一神教の教えが根強く存在していて、意外と大多数の大衆は保守的な一面も。それに比べて日本は、性的なことに対し、全体的に人々の感度が高いように思います」。この話からわかるのは、“タブー”や“常識”をつくりだすのは、結局自分自身のマインドだということだ。

昨今の情報社会の中で、自分本位の情報しか入ってこない環境に身を置きやすくなっている状況からも、こうした“思い込み”は生まれがちに。ヨガを通して多くの女性をサポートしてきたTaccoさんもは次のように話す。「例えば何かのスポーツにおいて、いくら体の動きの仕組みを頭で理解しても、実際にやってみなければ上手にはなりませんよね。恋愛やセックスもそれと同じ。年々数を増すドラマやリアリティショーを楽しむのはよいことだけれど、その疑似体験で満足してしまい、実際の恋愛をした気分に陥ってしまうのには要注意。また不妊治療やセックスレス、浮気や不倫などの体験談も、最近は少し探せばインターネット上にいくらでも出てきますよね。共感することが一概に悪いこととは思いませんが、経験した気になって“みんなもそうなんだ”と変に安心し、目の前のパートナーとの関係をどこかの前例に当てはめて考えるとか、早々とコミュニケーションを諦めてしまうのはもったいないなと感じます。実際、昨今は“子どもができない”と悩んだとき、不妊治療へ切り替える年齢が若年化する傾向にあるそう。事実、不妊治療の成功率には母体の年齢が影響します。ただ、その後の人生を考えると、絆を深めたり、“子ども”という目的だけでなく愛のあるセックスを楽しんだりする時期があってからでもよいのではと思います」。そうした解放的な姿勢の先に、さらなるプレジャーが待っているのだ。

さまざまなことがバーチャルで済ませられ、体験できるようになった今の時代。しかしやはり、人間が根本的にリアルな存在である以上、フィジカルな感覚や、対面でのコミュニケーションから得られる喜びをないがしろにすることはできない。「座ったまま手許で調べて“はい、終わり”ではなく、自らの心身が実際に感じた内容を積み重ねていくこと。自分と向き合ったり人と関わったりすることによって新たにめくられる人生のページは、たくさんあります」とTaccoさん。包括的に心身を観察し、不要なリミッターを脱ぎ去って、ポジティブかつ柔軟なスタンスでいる─それこそが、自分自身と他者の両方とのより適切なコミュニケーションを生み出し、さらに一歩上の満たされた感覚へと導いてくれるのではないだろうか。

考え方から性感にアプローチするチェックリスト3

Photo_ Getty Images
Photo: Getty ImagesPhoto: Getty Images

1. イメージトレーニングでセクシャルな感受性をアップ

例えば骨盤底筋のトレーニングを行うときにセックスの場面を思い浮かべてみるなど、想像力を駆使することで身体的な感覚もアップする。「その際、どのようにすれば自分が心地よいと感じるかを考えたり、探ってみたりすることもおすすめです」(Taccoさん)。セクシャルなトピックはごく私的なこと。だからこそ、まずは自分の中で気づきを得て言葉にしておくことが、いざ相手を目の前にした際に思いや希望を率直に伝えるための自信にもつながるのだという。

2. パートナーがいる人は積極的な意思疎通を

互いのセンシュアルな気持ちを高めるものごとや、産後の体の悩みについてなど、「最初は恥ずかしいと思うかもしれませんが、積極的に話題にしていくべき」(杉本さん)。というのも、レズビアンのカップルのほうがお互い性的に充足しているというデータがあるのだといい、「それはきちんとコミュニケーションをとっているからだといわれています」。セックスのマンネリ化や性交痛が原因であれば然るべきアイテムを取り入れてみるなど、解決策も見つけやすくなる。

3. ライフステージに合わせセックスの捉え方を柔軟に

体の状態は男女問わず、歳を重ねれば変化する。そうした事実に対してもフレキシブルな考え方を持つようにしたい。「20 ~ 30代のセックスを無理に続けていこうとする必要はないのです。年齢とともに体が硬くなってきたのであれば苦しくない体位を試せばよいし、必ずしも性器の挿入や射精をゴールにせずとも、本人たちが心地よいコンディションでスキンシップできていればそれで十分」(海老根先生)。“こうあるべき”という固定観念を捨て、今の自分のベストを探って。

Text: Misaki Yamashita Editor: Muramatsu Kyoko

話を聞いたのは……

MAYUMI EBINE

白金高輪海老根ウィメンズクリニック院長。妊娠から出産、産後までの周産期の母子医療に長らく携わり、人々の生活をホリスティックに見据えた医療を実践する。その姿勢は多くの信頼を集め、院内には多彩な年齢や国籍の人の姿が。

TACCO

ヨガインストラクター。妊娠前後から周産期を対象にした骨盤ヨガの講師を数多く務め、自身も45歳で自然妊娠、出産した経験を持つ。サーフボードの上で行うサップヨガをこよなく愛し、ROXY fitness公式アンバサダーとしての顔も。

AMINA SUGIMOTO

フェルマータ共同創業者、CEO。女性特有のウェルネス課題を解決するための製品販売や支援事業に広く取り組み、フェムケアの重要性の認知拡大に努める。海外で育った経験から得たグローバルな視野が持ち味のひとつ。

※『VOGUE JAPAN』2024年12月号「ウェルビーイングなセックスを考える」転載記事。

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