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高校女子サッカー漫画『さよなら私のクラマー』は小ネタもリアルさもハイレベル!逆境を乗り越え強豪校に挑む主人公たちに思わず熱くなる!

  • 2025.1.2
ダ・ヴィンチWeb
『さよなら私のクラマー』(新川直司/講談社)

バスケットボールのファンが『SLAM DUNK』を読むと、「坊主頭になってからの桜木花道は明らかにデニス・ロッドマン(NBAの名リバウンダー)がモデルだな」みたいなことが分かるのだが、「そのスポーツのファンが唸るネタがどれだけ盛り込まれているか」というのはスポーツ漫画を読む楽しさの一つだ。

その点、高校を舞台に女子サッカーの世界を描いた『さよなら私のクラマー』(新川直司/講談社)は、サッカーファンが「おおっ!」と声を上げてしまうような描写が多い作品だ。

フォワードの選手が「オフサイドラインで生まれた女」と名乗る場面に出会ったときは、「フィリッポ・インザーギ(元イタリア代表)の異名そのまんまじゃん!」と嬉しくなったし、「この細かな助走からの左足の強烈なシュートはロベルト・カルロス(元ブラジル代表)っぽいなぁ」と思いながら読んでいたら「ロベカルかよ!!」というツッコミが作中にも登場して、思わず笑ってしまった。

また、そうした“実在の選手の小ネタ”のみならず、プロの世界の最先端の戦術が描かれている点にも驚かされた。

全14巻の漫画の序盤では、ボールを保持して主導権を握るポゼッションフットボールのチームが登場するが、途中からはフィジカルを武器に戦う選手が出てきたり、堅守速攻の強いチームが出てきたりする。本作の連載時期は2016~2021年だが、作中で登場する戦術の変化は、現代サッカー界の戦術の潮流の変化をそのまま表しているのが分かって面白いのだ。

そして本作は、「ただ見た目が可愛いから女子を主人公にしたサッカー漫画」ではない。作中に次々と登場する天才少女たちは「自分は1人ぼっちだった」という言葉をよく口にするが、これは「才能ある選手が実力に見合った環境でプレーできずに孤立してしまいがち」という女子サッカー界の実情を象徴する言葉に感じられた。

主人公たちの学校(蕨青南高校)では、男子サッカー部の顧問が「うちの部員が増えたから、お前ら女子サッカー部のグラウンドを譲れ」と女子サッカー部に迫る場面もあったが、こうした事態は学校の女子サッカー部でリアルに起きていることなのだろう。

なお本作の担当編集者の過去のインタビュー(https://news.kodansha.co.jp/comics/20160817_c01)には、「女子がサッカーを続ける困難さを知っていましたし、それを応援したいという気持ちがあったようです」「執筆にあたって高校女子サッカーやクラブチームの取材をさせてもらいました」という言葉もあった。本作のリアルさは、そうした丹念な取材と作者の女子サッカーへの思いに支えられたものなのだ。

そして、困難な環境でプレーしてきた少女たちが、高みを目指してプレーできる仲間を見つけ、チームとして戦う喜びを覚え、強豪校との戦いに挑んでいく物語は、やはり読んでいて胸が熱くなるものがある。サッカー好きなら間違いなくイッキ読みしてしまう作品だ。

文=古澤 誠一郎

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