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箱根駅伝を往復ボーっと観る人は危ない…和田秀樹「テレビ視聴パターンでわかる脳がヨボヨボになる人の特徴」

  • 2025.1.2

脳の老化を防ぐための生活習慣は何か。老年精神科医の和田秀樹さんは「相手の言うことを鵜吞みにせず、『この人たちはこう言っているけれども、それは本当だろうか?』と疑う力が前頭葉の劣化を防いでくれる」という――。

※本稿は、和田秀樹『50代うつよけレッスン』(朝日新書)の一部を再編集したものです。

アルツハイマー病研究を描いた3Dイラスト
※写真はイメージです
テレビは脳の老化を速める「老化促進マシーン」

テレビの見方には、注意が必要です。

テレビはちょっとでも悪いことをした人をまるごと人格否定して、「いい人/悪い人」の二元論的な価値観を視聴者に押し付ける傾向があります。それこそボーッとテレビを見続けていたら、そうした押し付けによって思考力が低下し、前頭葉が劣化して心身の老化が進行してしまう恐れがあります。

特に、ワイドショーを見てコメンテーターたちの言うことに「そうだそうだ!」なんて言っている人は、うつになりやすい思考パターンを持っていると言えます。

年末年始の特番を見続けるのも禁物です。テレビの前に座るのが習慣になり、実はその時間何もしていないのに、“何かをしたような”気になってしまう。正月2日3日と、箱根駅伝の往路復路をテレビで完全制覇したとしても、自分自身はこたつの中で暖まっているだけでしかない。

その意味では、テレビは脳の老化を速める「老化促進マシーン」であると言っても過言ではないのです。

そこで、もしもワイドショーを見るのなら、コメンテーターの一人になったつもりで、叩かれている側を擁護してみるとか、他のコメンテーターに“反論”してみるのが、メンタル的にも脳科学的にもお勧めの「テレビの見方」です。

「それは本当だろうか?」と常に考え脳を活性化させる

ある意見に反論するとは、どういうことか。

反論するためには相手の言うことをそのまま鵜吞みにせず、「この人たちはこう言っているけれども、それは本当だろうか?」と疑う力が必要になります。「どの部分がおかしいと思うのか」と考え、「実際はどうなのか」と調べてみる。こうした作業が前頭葉を活性化させるのです。

また、どんな罪を犯した人でも、そこに至った理由があるはずです。もちろん犯罪そのものは許されるものではありませんが、その背景には成育環境の影響もあるかもしれませんし、複雑な事情があるのかもしれません。

しかし、「こいつだけは許せない」「こんな悪人は人間ではない」という硬直した見方を続けていると、それ以上は思考停止して何も考えられなくなってしまいます。

一見わかりやすいレッテルや決めつけ、また脳にとってラクな考え方に流されるのではなく、常に意識して疑い、考えを巡らせ、問いかけてみる。それこそが自分自身の老化の進行を食い止め、うつ的な思考に陥るのを防いでくれるのです。

「常識」や「当たり前」を疑ってみる

テレビの刷り込みを信じたい人に見てとれるのは、「皆と同じ意見だと安心する」「一人だけ違う意見を持つのは不安」という同調意識です。

それは「常識」と言われるものを重んじて、異端を許さないという同調圧力にもつながります。

しかし本来、人間というのは全員が同じ意見を持つことなどあり得ません。それなのに「皆と意見を揃えるべきだ」などと考えているとストレスは溜まっていくばかりです。あまりに強い同調圧力が常に存在している状態はストレスのもとになり、うつ病などの精神疾患にもつながりかねません。

ですから、うつにならないためには、その社会で「常識」とか「当たり前」とされるものを疑ってみることも大事です。

本書(『50代うつよけレッスン』)で詳述した、注意すべき「12の不適応思考」の「かくあるべし思考」を思い出してください。「〜すべきである」「〜しなければならない」といった道徳的な考えに強く縛られる思考パターン、いわゆるそれが、常識に囚われた生き方です。まずはその常識を、疑ってみる。疑うことで、自分の思考が次第に解放されていくのを実感してみましょう。

頭の中から飛ぶ風船
※写真はイメージです
常識から解放されるためにするべきこと

年をとれば常識から解放されるかといえば、そうとも限りません。

一部では、いまだに年老いた親を介護施設に預けることを良しとしない50代の人たちもいますが、「育ててもらったから」という義務感や「年老いた親を介護施設に預けるのはかわいそう」といった感情論で介護を引き受けた結果、その重圧で苦しんでいる人は少なくありません。

症状の軽いうちはまだ何とか対応できても、重症化すると義務感や感情論だけでは親を支え切れなくなり、介護負担が増えるにつれて共倒れになってしまうケースもあります。お互いに助け合える親族が多いならまだしも、そうでないなら介護施設を利用することは、けっして悪いことではないはずです。

それに、一口に介護施設と言ってもいろいろあります。入居条件や施設の中身、費用などはまったく違いますが、たとえば、生活保護を受給している方であっても老人ホームに入ることは可能です。

公的機関や社会福祉法人が運営する特別養護老人ホーム(特養)、また条件によっては民間が運営する有料老人ホームに入居できるケースもあります。事前にケースワーカーや入居希望の施設に入居条件をきちんと確認しておく必要がありますが、「生活保護だから、老人ホームには入れない」と思い込まずに、まずは調べてみることが大事です。

このように、事前に知っておいたほうがいい情報はたくさんあるのです。常識から解放されるためにも、情報調べは有益です。

テレビの情報番組が本来やるべきこと

そもそも生活費がなくて困っている人は、生活保護を受ける権利があります。

先日、某ワイドショーで、昨今の物価高によって貯金もなく持ち家もない年金受給者が生活に困窮しているという報道を見ました。

番組では、毎月6万円の年金では生活していくのが苦しいと言っている人を取材していましたが、実は年金を受給している人でも、最低生活水準を満たしていない場合は生活保護を受けることができます。

最低生活費が13万円ぐらいですから、毎月6万円の年金を受給していて他に収入がない場合、差し引いた7万円が生活保護として支給されるのです(ただし、子どもが援助可能と見なされたり働ける状態と判断された場合や、売却して生活費に充てられる財産を保有している場合は支給されません)。

また基本的に医療費も無料になります。本来ならば、テレビの情報番組はこうしたことをきちんと伝えるべきです。そうなれば、今まさに苦しんでいる人もラクになるでしょう。年金生活者が物価高にあえいでいるのであれば、その人たちがどうしたら助かるのかを伝えるのが、メディアの役割のはずです。

最低限の生活が保障されている日本

生活保護は、憲法25条の「生存権」で保障されている国民の権利です。

日本が民主国家であり、先進国である以上は当然の権利ですから、何も恥ずかしいことはありません。資産や自分の能力を活用しても最低限の生活が維持できないときには、国民は権利の行使として生活保護を利用できるのです。

【図表1】厚労省による月平均の生活保護者数推移
厚生労働省「被保護者調査」、「福祉行政報告例」より作成

そもそも消費税が導入されて以来、国に税金を払っていない人はいないはずですから、生活保護を受けることに罪悪感を抱く必要もないのです。

ひょっとしたら、そんな情報を流したら生活保護を受給したい人が増えて国の財政に影響してしまうという圧力がかかっていて、テレビ局が忖度そんたくしているのではないかと私は見ています。

和田秀樹『50代うつよけレッスン』(朝日新書)
和田秀樹『50代うつよけレッスン』(朝日新書)

とにかく覚えておいていただきたいのは、私たちの住む日本という国は、税金を払っている以上は最低限の生活が保障される国だということです。ですから、年金が少ない人は堂々と自治体に行って生活保護を申請したらいいのです。

そうすれば、今困っている人ももう少しラクな暮らしができるはずですし、月に一回ぐらいは外食で美味しいものも食べられるはずです。

とにかく、困っているときは一人で何とかしようとせず、周りの人に相談して、助けを求めること。どんなことにも、何かしらの方法はあります。常識を疑い、一人ひとりが自分らしく生きていく術を身につけていくことが、50代以降の後半生には肝心です。

和田 秀樹(わだ・ひでき)
精神科医
1960年、大阪府生まれ。東京大学医学部卒業。精神科医。東京大学医学部附属病院精神神経科助手、アメリカ・カール・メニンガー精神医学校国際フェローを経て、現在、和田秀樹こころと体のクリニック院長。国際医療福祉大学教授(医療福祉学研究科臨床心理学専攻)。一橋大学経済学部非常勤講師(医療経済学)。川崎幸病院精神科顧問。高齢者専門の精神科医として、30年以上にわたって高齢者医療の現場に携わっている。2022年総合ベストセラーに輝いた『80歳の壁』(幻冬舎新書)をはじめ、『70歳が老化の分かれ道』(詩想社新書)、『老いの品格』(PHP新書)、『老後は要領』(幻冬舎)、『不安に負けない気持ちの整理術』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『どうせ死ぬんだから 好きなことだけやって寿命を使いきる』(SBクリエイティブ)、『60歳を過ぎたらやめるが勝ち 年をとるほどに幸せになる「しなくていい」暮らし』(主婦と生活社)など著書多数。

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