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時代を映すカルティエのヘリテージピースとは?

  • 2025.1.2

価値があるからこそ、一度購入した持ち主の手を離れて市場に戻る時計やジュエリーがある。作り手であるメゾンに買い戻された逸品は、新たな持ち主へ受け継がれる。高い技術と誇りを持つメゾンだけができる、アーカイブ販売の物語。

Cartier

貴重なヘリテージピースは、まるで時代を映した鏡。

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ベルエポック期のヨーロッパでメゾンが大流行させた、プラチナとダイヤモンドの白いジュエリー。優美なリボンや花綱をモチーフにした象徴的な「ガーランド」スタイルのネックレス。カルティエ パリ、1905年制作。「カルティエ トラディション」(個人蔵)より。

とびきりモダンで、いつも時代の最先端を駆け抜けるジュエラー、カルティエ。このメゾンでは最新作だけでなく"古いもの"も販売していると言ったら驚くだろうか。カルティエは歴史的価値の高いミュージアム級のヘリテージピースを買い戻し、修復して未来に受け継ぐ「カルティエ コレクション」という文化事業を1980年代から行っている。オークションや古美術市場、代々続く顧客たちなどを通じて買い戻された貴重な過去の作品のうち、同じデザインやよく似たデザインがすでにコレクションに収蔵されていた場合、それらは「カルティエ トラディション」として再販売されるのだ。「カルティエの顧客にはコレクターの方々も多くいます」と話してくれたのは、メゾンのイメージスタイル&ヘリテージ ディレクターのピエール・レネロ。

「コレクターのように目の肥えた方々は、目に見えるデザインの美しさだけでなく、作品の背後に秘められた歴史やスタイルの進化といった、目に見えない魅力にも興味を抱くものなのです。そんな需要にこたえ、買い戻した作品の真贋をメゾンが鑑定し、必要があれば修復を施し、100%カルティエのオリジナルであることを証明書にして提供しています」

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上左:1931年にマハラジャがオーダーしたネックレスのデザイン画。ダイヤモンドのサイズやカラーが詳細に記録されている。上右:現代の「グラン ドゥ カフェ」コレクションの着想源となった1953年のデザイン画。モチーフはコーヒー豆。

レネロが率いるヘリテージ部門では、買い戻した作品をつぶさに調べ、あしらわれたジェムストーンの種類や制作年代を特定し、販売先までも知ることができるという。これはアーカイブに膨大な数のデッサンや顧客台帳、石膏でとった型、写真が残されているから。第2次世界大戦中も守り通されたメゾンの貴重な記録だ。

「過去の作品の研究を続けていると、変化する時代のそれぞれにカルティエのオリジナリティを示す足跡が残されているのに気付きます。ジュエリーやウォッチ、装飾美術などすべてのシーンにおいて、あらゆる時代にカルティエがいつも新しい風を吹かせてきたのは本当に驚くべきことなのです」

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アールデコ期に高い人気を誇った「ジャルディネット」スタイルのブローチ。ロッククリスタル(水晶)の鉢に、ルビーのビーズでできた花とエメラルドの葉が添えられている。カルティエ ニューヨーク、1926年制作。「カルティエ トラディション」より。
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色鮮やかなターコイズとアメシストの組み合わせが印象的。かつてアメリカの著名人が購入したものだそう。カルティエ パリ、1952年制作。フクロウのブローチ「カルティエ トラディション」(YG×PG×ターコイズ×アメシスト×ダイヤモンド)¥11,550,000(参考価格)/カルティエ(カルティエ カスタマーサービスセンター)Studio Gérard ©Cartier

1847年の創業から20世紀を通じて、時代の移り変わりとともに進化してゆくメゾンのスタイルを「カルティエト ラディション」から感じとることができる。20世紀初頭のベルエポックの時代には、カルティエはプラチナを使った白く輝くジュエリーで上流社会を魅了し、その後に続くアールデコの時代には鮮やかな色彩のモダンなデザインで人々を熱狂させた。「カルティエ トラディション」はまるでジュエリーヒストリーのクロニクルだ。でもレネロはこうも語る。

「カルティエの黄金期がいつだったかと問われれば、それは"これから"です、と答えるしかありません。あらゆる時代でカルティエらしさを象徴する作品がいくつも生み出され、伝統はいまも受け継がれていますが、カルティエは美を追求して絶えず進化を続けているからです」

過去の作品が現代を豊かにし、現代の作品が未来のアンティークになる─特別な価値のサイクルが「カルティエ トラディション」にはあるのだ。

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「ガーランド」スタイルのさまざまなアイデアを貼り付けたスケッチブック。宝石をあしらったエレガントなブローチやジャボピン、イニシャルを組み合わせたモノグラムが描かれている。カルティエ パリ、1904年頃。Archives Cartier Paris ©Cartier

問い合わせ先:
カルティエ カスタマー サービスセンター
0120-1847-00(フリーダイヤル)
https://www.cartier.jp/

*「フィガロジャポン」2025年1月号より抜粋

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