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「なぜ『福袋』って買いたくなるの?」6つの心理学的な理由を解説

  • 2025.1.1
Credit: canva

お正月の風物詩と言えば「福袋」です。

初売りの福袋をゲットするため、毎年欠かさず、早朝から百貨店に並んでいるという方も多いのではないでしょうか?

福袋の最大の特徴というと、中身が見えないことですよね。(※ 最近では中身の見える福袋も増えてきましたが)

しかし中に何が入っているかわからないものを買うことは、一見すると、デメリットの大きいリスク行動と取れるでしょう。

それでも大勢の人たちが毎年、福袋を求めて店舗に殺到しています。

一体なぜ私たちは福袋を愛してやまないのでしょうか?

ここでは人々がどうしても福袋を買ってしまう心理的メカニズムについて見ていきます。

目次

  • 「福袋」はいつ始まったの?
  • 福袋を買いたくなる6つの心理的要因

「福袋」はいつ始まったの?

福袋の起源は江戸時代にまで遡るとされています。

正確な年代は定かでありませんが、一説では、日本橋の呉服店「越後屋」がその年に売れ残った生地を袋に入れ、「恵比寿袋」という名前で販売したのが始まりだという。

つまり福袋は在庫を売るための手法として発案され、この特徴は今日の福袋にも受け継がれているのです。

それから時が経ち、百貨店がお正月の初売りの一環として「福袋」を導入し始めたのは、昭和41年(1966年)頃とされています。

これを機に、現在の福袋販売がお正月の風物詩として全国に定着するようになりました。

今では毎年4人に1人が福袋を買っているとのデータが示されており、その人気ぶりは早朝から百貨店前に行列を作っている例年の風景からも明らかです。

福袋の始まりは江戸時代にまで遡る?/ Credit: canva

最近は百貨店に限らず、通販にも多くの福袋が並んでいます。

そのため下着の福袋、ゲームの福袋、食品の福袋…などなど中身が分からない福袋をポチってしまった人は多いでしょう。

こうした福袋の最大の特徴が、中に何が入っているかわからないということです。

実際、福袋を買ったはいいものの、フタを開けてみると「欲しいものが入ってなかった」とか「結局、使わずにすぐ捨ててしまった」という経験があるかもしれません。

中身のよくわからないものを買うことは、一般的な消費行動においてはリスク要因でしかありません。

それなのに私たちはまた新年がやってくると、喜び勇んで福袋を購入してしまいます。

この福袋に特有の不思議な消費者心理は一体何なのでしょうか?

私たちが福袋をどうしても買ってしまう心理的要因を6つに分けて見てみます。

福袋を買いたくなる6つの心理的要因

福袋を買いたくなる1つ目の要因は「割安感」です。

割安感とは、買い手が商品の値段に比べて、中身が充実していると感じる度合いのことを指します。

これは福袋の大きな強みであり、例えば、5千円の福袋に1万円相当の商品が入っていると宣伝されると、人はお得感を感じて福袋を買いやすくなります。

2つ目の要因もお金と関連しますが、「金銭的な余裕があること」です。

年末年始は冬のボーナスがあったり、お年玉をもらえたりするため、いつもより金銭的な余裕があり、ちょっと冒険した買い物をしたくなる心理が働きます。

実際、福袋の中に欲しいものが入っておらず、失敗したとしても、金銭的な余裕から精神的なダメージも少なく済みます。

年末年始はボーナスやお年玉で金銭的に余裕がある/ Credit: canva

3つ目の要因は「抱き合わせ効果」です。

抱き合わせ効果とは、複数の商品をセットにして販売することで買い手にお得感を感じさせて、購買意欲を高める方法を指します。

福袋には色々な商品が詰め込まれており、そのほとんどが不要なものだったとしても、自分の欲しいもの、気になっていたものが一つでも入っていれば、失敗したというよりもむしろ元は取れたと感じやすいのです。

またそもそもの話ですが、自分が日頃から贔屓(ひいき)にしているブランドの福袋を買うことが大半でしょうから、何が入っていても好みが大きく外れることは少なく、福袋を買うリスクも小さくなるでしょう。

4つ目の要因は「イベント感」です。

年末年始になると、SNSやテレビ、ネットなどで福袋の初売り情報が大々的に宣伝され始め、非日常的なイベント感が発生します。

買い手は各種メディアを通じた福袋の宣伝や特集に触発されて、「福袋を買う」という年始のイベントに参加したくなるのです。

ですから、この場合は福袋の中身が大事というよりも、福袋そのものを買うことに意義があります。

中には、年初めのゲン担ぎや運試しのような意味合いを込めて、福袋を買う方も多いでしょう。

このイベント感と密接に関係しますが、5つ目の要因は「他者との共有感」です。

世の中で流行しているイベントはやはり、一人で楽しむというよりも、友人や家族と分かち合うことで楽しさや特別感が倍増します。

特に、仲間内でどのブランドの福袋を買うかを事前に共有し、購入後に輪になって開封の儀を行って、「どれが当たった?」とか「これと交換してよ」といった楽しみ方は、お正月のイベント感を大いに盛り上げてくれるでしょう。

福袋のイベント感も大きな要因/ Credit: canva

そして最後に6つ目の要因は「新しい好みが開けること」です。

中に何が入っているかわからないことは確かにリスクのある消費行動ですが、ここにおいては逆に、中身がわからないことこそが最大の強みとなります。

商品が見える状態であれば、私たちは当然ながら自分の好きなもの、趣味に合うもの、今必要なものを買うでしょう。

しかし福袋を購入すれば、必然的に普段では買わないようなものや趣味ではなかったものと出会いやすくなります。

すると「この路線も意外といいかも」とか「これは盲点だったな」といった新しい趣味や好みが切り開かれる可能性が高まるのです。

つまり、福袋の中には”予期せぬ出会い”が詰め込まれていると言えるでしょう。

こうした要因は明確にこれが欲しいという目的はないけれど、新年だしとりあえず何か買いたいという場合にも当てはまるでしょう。

また私たちには元来、得体の知れないものに好奇心を刺激される性質があり、福袋を開ける瞬間にはそうしたえも言われぬ期待感や楽しさがあります。

これは誕生日プレゼントなども同じ作用を持っており、プレゼントを開けた後よりも、プレゼントを開ける直前の「何が入っているかわからない状態」が最高に嬉しいと感じた経験は多くの人があると思います。

このように福袋には私たちの買い物欲をくすぐる様々な心理作用が盛り込まれているのです。

さあ、今年も福袋を買う準備はお済みですか?

元論文

福袋購買目的の規定要因ー消費経験論の写像ー(PDF)
https://web.tku.ac.jp/~z-morioka/articles/group/2012/group_2012_luck.pdf

福袋に関する研究―消費者 としての評価一(PDF)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjace/16/0/16_16-19/_pdf?utm_source=chatgpt.com

ライター

大石航樹: 愛媛県生まれ。大学で福岡に移り、大学院ではフランス哲学を学びました。 他に、生物学や歴史学が好きで、本サイトでは主に、動植物や歴史・考古学系の記事を担当しています。 趣味は映画鑑賞で、月に30〜40本観ることも。

編集者

ナゾロジー 編集部

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