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「花園」で日本高校ラグビーの頂点をめざす!アク強めな不良たちの青春ドラマ『ONE FOR ALL』

  • 2025.1.1
ダ・ヴィンチWeb
『ONE FOR ALL』(柳内大樹/講談社)

2015年、イングランドで開催されたラグビーワールドカップで、当時、ワールドラグビーランキング3位で、過去2回のワールドカップ優勝を誇った強豪、南アフリカを、桜のジャージの日本代表が破った一戦。ラグビーファンの間で「ブライトンの奇跡」と呼ばれるこの一戦を機に、ラグビー日本代表は生まれ変わったかのように強くなり、日本大会(2019年)、フランス大会(2023年)と応援する人も増えてきている。

『ONE FOR ALL(ワン フォー オール)』(柳内大樹/講談社)は、高校ラグビー部を舞台にした青春スポーツ漫画。80年代に実在の高校と選手をモデルに制作されたテレビドラマ『スクール☆ウォーズ』同様に、無名の高校が日本高校ラグビーの頂点をめざしていくという物語だ。ここでは、その一端を紹介していこう。

不良はラグビーで更生する?

主人公の一嵐(にのまえ・あらし)は、中学生ラグビーフットボール都大会を制したチームの一員で、トライ数ナンバーワンとなった伝説男(レジェンドマン)。中学ラグビー界の常識の多くを塗り替えたあと、暁天学園高校ラグビー部に唯一のスポーツ特待生として入部する。

プロップというポジションもあり、二人乗りして走っているスクーターを、正面から受け止め持ち上げて交通事故を回避するというパワーと、映画のワイヤーアクションのように空中回転しながら蹴りを決めるという俊敏さ、グラウンドの端から左脚で超ロングゴールを決めるキック力などを併せ持つスポーツ万能選手だ。もちろん、完璧なキャラクターではなく、授業中はいびきをかいて寝ているし、あっという間に拳や足が出る喧嘩早さも持っている。

自称「嵐を呼ぶ男」の一嵐を中心に、アクが強めのキャラクターが周囲を固め、暁天高校ラグビー部が花園をめざすストーリーは始まっていく。

例えば行天樺丸(ぎょうてん・かばまる)は、行天財閥の御曹司で、暁天高校創設者を曾々祖父に持つお坊っちゃま。行天家の家訓として「真の紳士道を学ぶため」にラグビー部に入部してくる。身長は高く、体格もよいのでラグビー向き、それもフォワード向きだが、高校入学時に間違って中学校に行ってしまうというぐらいのバカキャラで、なにをやらかすかはわからない。

物語の始まりから一嵐との絡みが多い町田千春は、一帯の中学生ヤンキーをすべて束ねていたという不良の頭。身長180cmで体格もよく、当然ながら腕力にも自信があるはず。つねに二人の子分を連れて歩いているギャングキャラだが、なぜかやられているシーンが多く、笑える存在だ。

その町田千春をぶっ飛ばした側の一人が、身長190cm、ピンク髪の女良雅治(めら・まさはる)。この女良も不良キャラで、なんの前触れもなしに拳をふるい、意識を失う人を作っていく。

このようなアクが強いキャラクターが暁天高校ラグビー部に集まり、それぞれの物語をつむぎながらチームとしてまとまり、強くなっていく。

「この物語に主人公はいない……」

こう第1巻にあるように、『ONE FOR ALL』の物語も、登場人物一人ひとりのさまざまなエピソードを描きながら進んでいく。その様子は、不良漫画のレジェンド、柳内大樹の筆で時に真摯に、時にギャグ混じりで描かれていく。

ラグビーというスポーツにもエースはいない。多種多様で太っている者や背が低い者といった、いわゆる一般的に運動が不向きとされている人間でも充分活躍できる稀有なスポーツだ。激しくぶつかるラグビーで最も必要なことは『勇気』……そして1チーム15人と他の競技に比べて人数が多いため、大切なのは仲間との『絆』である。

一嵐たち暁天高校ラグビー部が、どのような困難を乗り越えて全国高等学校ラグビーフットボール大会をめざしていくのか。

「みんなで花園行こうぜ!」という一嵐の言葉が現実のものになるプロセスを、物語の一員になった気持ちで楽しんでもらいたい。

文=井上 淳

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