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キーボードがなぜ「QWERTY配列」になったか知ってる?「ある言葉」の打ちやすさが理由だった

  • 2024.12.31
Credit: canva

パソコンのキーボードを見ると、左上に「Q」から始まって「W・E・R・T・Y」とキーが並んでいます。

これを「QWERTY(クワーティ)配列」と呼びますが、アルファベット順なわけでもなく全く意味不明な配列に思えます。

しかしQWERTY配列は今や世界のスタンダードとなっており、ノートパソコンからデスクトップ、スマホの仮想キーボードまで、すべてこの配列です。

誰もが日頃から接しているのですが、なぜこの配列になっているのか、知っている人は意外に少ないでしょう。

ここでは、QWERTY配列が生まれた歴史から、この配列になった理由まで見ていきます。

目次

  • 「QWERTY配列」のキーボードが誕生するまで
  • QWERTYにしたのは「ある言葉」が打ちやすかったから?

「QWERTY配列」のキーボードが誕生するまで

QWERTY配列のキーボードが生まれるきっかけになった場所は、1866年のアメリカ・ミルウォーキーにあった小さな作業場です。

そこで、クリストファー・レイサム・ショールズという新聞編集者が一獲千金をねらって、ある発明をしていました。

本のページ番号を自動でふってくれる機械です。

C.L.ショールズ
C.L.ショールズ / Credit: ja.wikipedia

しかし、1867年7月、ショールズはある雑誌で「タイプライティング・マシン」という短い記事に衝撃を受け、大きく方向転換します。

最終的に作ったのは「ペンで書くより2倍速く、考えたことを文字にする機械」、すなわちタイプライターでした。

ただ、この機械をタイプライターと認識するのは困難です。

白鍵と黒鍵にローマ字がふってあって、パッと見はピアノにしか見えません。紙詰まりが起きやすく、印字の行もズレがちでした。

結局、この機械は商業的にも失敗に終わっています。

ピアノ型のタイプライター
ピアノ型のタイプライター / Credit: ja.wikipedia

その後、ショールズは1872年に、ピアノ型をやめて、円形キーを配列したタイプライターを作りました。

その時点では、まだキーボードの配列は決まっていません。

しかし、この試作品が「E.レミントン&サンズ」という会社で実演されたときのことです。

代表のレミントンが、もとの配列を少しいじった「QWERTUIOPY」という別の試作品を作りました。

これに違和感を覚えたショールズが「Y」をもとの場所(TとUの間)に戻すように頼み、レミントンもこれを承諾。

ショールズの「QWERTY配列タイプライター」
ショールズの「QWERTY配列タイプライター」 / Credit: ja.wikipedia

ここに初めて「QWERTY配列」のキーボードが正式に誕生しました。

1874年に第1号のタイプライターを発売されると、またたく間に人気を得て、商業的に成功した世界初の執筆用機械となっています。

それでは、「QWERTY配列」が現在まで変わらなかったのはなぜでしょう?

QWERTYにしたのは「ある言葉」が打ちやすかったから?

よく言われるのは、「タイピストの打つスピードを遅くさせて、紙詰まりが起きないようにするため」です。

紙詰まりは、初期のタイプライターにとって大きな弱点でした。

とすると、QWERTY配列では、続けてタイプされることの多い2つの文字が遠くに離して配置されている、と予想されます。

ところが、事実はまったく逆なのです。

QWERTY配列
QWERTY配列 / Credit: ja.wikipedia

英語で一番多い並びは「T」と「H」ですが、キーボードを見るとすぐ近くにあります。また、2番目に多い「E」と「R」にいたっては隣同士です。

統計解析でも、QWERTY配列は、ランダムに配列したキーボードに比べ、続いて打つことの多い2文字が近くにある頻度が高いことがわかっています。

なので、この説はおそらく間違いでしょう。

もう1つの説は、QWERTY配列にすると、セールスマンが「TYPE WRITER QUOTE(タイプライターのお見積もり)」という言葉を1列目だけで素早く打てるので、顧客にウケるというものです。

確かに、これらの文字が偶然に集まることはないので説得力はあります。

しかし、残念ながらそれを証明するものは残っていません。

実はタイピングに不向き?
実はタイピングに不向き? / Credit: jp.depositphotos

また、QWERTY配列は、スピードを求めるタッチタイピングには不向きと言われています。

実際、このキーボードがスタンダード化して以来、別配列の競合品が何十種も現れては、消えていきました。

タイピングに不向きのQWERTY配列が生き残った理由は、時間とコストです。

代わりの配列を考案してテストし、設計・製造して、世界中に普及させるには、莫大な時間とコストがかかります。

第一、QWERTY配列も慣れてしまえば、とくに不便な点はありません。日本語の文章を打つのでも、QWERTY配列で支障はないと思います。

普段は気にも留めないキーボードの裏には、これだけのストーリーが隠されていたのです。

参考文献

『NewScientist 起源図鑑』
https://www.amazon.co.jp/New-Scientist-%E8%B5%B7%E6%BA%90%E5%9B%B3%E9%91%91-%E3%83%93%E3%83%83%E3%82%B0%E3%83%90%E3%83%B3%E3%81%8B%E3%82%89%E3%81%B8%E3%81%9D%E3%81%AE%E3%82%B4%E3%83%9E%E3%81%BE%E3%81%A7%E3%80%81%E3%81%BB%E3%81%A8%E3%82%93%E3%81%A9%E3%81%82%E3%82%89%E3%82%86%E3%82%8B%E3%81%93%E3%81%A8%E3%81%AE%E6%AD%B4%E5%8F%B2-%E3%82%B0%E3%83%AC%E3%82%A2%E3%83%A0%E3%83%BB%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%83%88%E3%83%B3/dp/4799322079

ライター

大石航樹: 愛媛県生まれ。大学で福岡に移り、大学院ではフランス哲学を学びました。 他に、生物学や歴史学が好きで、本サイトでは主に、動植物や歴史・考古学系の記事を担当しています。 趣味は映画鑑賞で、月に30〜40本観ることも。

編集者

ナゾロジー 編集部

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