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鬼ヶ島以外にも鬼がいることに気づけるか…問題解決に成功する人、失敗する人の決定的な違い

  • 2024.12.31

問題解決能力が高い人は何が違うのか。外資系コンサルタントの吉澤準特さんは「感情に振り回されず最適な選択をしている人は、問題を論理的に整理して思考を明確にするためのフレームワークを利用している」という――。

※本記事は吉澤準特『クリティカルシンキング入門』(PHPビジネス新書)の一部を再編集したものです。

創造的でスマートな思考のアイデア
※写真はイメージです
昔話を使って「PAC思考」を理解する

PAC思考は、問題解決や意思決定のアプローチに妥当性があるかを論理的に確かめ、その実現可能性を高めるのに役立つ強力なフレームワークです。ですが、この概念を使いこなすためには、その構造をしっかりと理解する必要があります。そこで、シンプルで親しみやすい題材を使って、論理の妥当性を確かめる方法を学びましょう。

取り上げるのは、日本の有名な昔話「桃太郎」です。桃太郎は鬼ヶ島へ鬼退治に行く話ですが、最初に、「鬼ヶ島の鬼が、村々に被害を与えている」という前提に問題があるケースを解説します。続けて、「桃太郎一行(イヌ・サル・キジを含む)が力を合わせれば、鬼を倒すことができる」という仮定に問題があるケースを解説します。

なぜ桃太郎は鬼ヶ島へ鬼退治に出かけたのか

最初に取り上げるのは、前提に問題があるケースです。まず、桃太郎が鬼退治に向かう理由となった前提、鬼退治を達成するための仮定、その結果として期待する結論を確認します。

前提:鬼ヶ島の鬼が、村々に被害を与えている。
仮定:桃太郎一行が鬼を退治すれば、鬼による被害がなくなる。
結論:桃太郎一行が鬼ヶ島に向かい、鬼を退治する。

このロジックに従って行動を起こした桃太郎は、どうなったでしょう? 残念ながらうまくいきませんでした。鬼ヶ島の近隣にも襲撃中の鬼たちが点在していることを見落としていたため、鬼ヶ島で一網打尽にはできなかったのです。残存した鬼たちが新たな拠点を作り、引き続き村々を襲い続けました。

PAC思考を使って妥当な結論を導くためには、そもそも前提が正しい必要があります。桃太郎一行が鬼ヶ島へ向かったのは、そこに鬼がいるからです。鬼ヶ島の鬼を退治することで、鬼の被害はなくなるという仮定を置くことも、鬼ヶ島の鬼がその原因になっているとの前提があるからです。

桃太郎が見落とした前提とは

しかし、鬼ヶ島以外にも鬼がいたらどうなるでしょう。鬼ヶ島の鬼を退治しても、別の場所にいる鬼が村々を襲ってしまうなら、鬼の被害はなくなりません。桃太郎が前提に加えておくべきであったのは次の点です。

前提:鬼ヶ島の鬼が、村々に被害を与えている。
:鬼の一部は村々を襲うために鬼ヶ島の外にいる。

村々を襲う鬼の一部が鬼ヶ島の外にいるということは、鬼ヶ島にいる鬼を退治するだけではすべての鬼を退治できるといえなくなります。鬼ヶ島の外で活動している鬼たちの動向を把握した上で、鬼たちを効率的に退治する方法を考えなければなりません。島外で活動する鬼たちについて、いつどこでどんなことをしているのか、どれくらいの集団で行動しているのか、事前に情報収集するべきです。鬼たちの行動パターンを把握し、鬼ヶ島の外で活動中の鬼たちの所在を特定、退治する必要があります。

桃太郎のベクターイラスト
※写真はイメージです
前提を変えると仮定と結論が変わる

前提を変えることで、仮定と結論も変わります。当初は「桃太郎一行が鬼ヶ島に向かい、鬼を退治する」だけでしたが、鬼ヶ島の外で活動中の鬼たちへの攻撃計画も盛り込む必要が生じました。「仮定:島外の鬼たちは何らかの連絡手段で情報共有している可能性がある」を追加し、仲間のイヌ・サル・キジに指示をして、最大で3つの別動隊チームを組み、島外にいる鬼の集団を各個撃破することで、討ち漏らしを防ぎます。

前提と仮定の変化を踏まえると、「結論:イヌ・サル・キジが別動隊を組織して島外の鬼たちを退治する」を追加することが望ましいでしょう。こうして桃太郎一行は鬼たちの動向をしっかりと把握し、鬼ヶ島の外で行動中の鬼たちも含めた攻撃計画を立案することにしました。

その結果、イヌ・サル・キジの別動隊による島外の鬼への攻撃と、桃太郎率いる本隊による鬼ヶ島への攻撃は同時に行われ、鬼たちを一網打尽にすることができたのです。

めでたし、めでたし。

桃太郎は本当に鬼を倒すことができるのか?

次に取り上げるのは、仮定に問題があるケースです。鬼ヶ島一帯の鬼が村々に被害を与えていることを前提に、鬼退治を達成するための仮定、その結果として期待する結論を確認します。

前提:鬼ヶ島とその一帯の鬼が、村々に被害を与えている。
仮定:桃太郎一行が力を合わせれば、鬼を倒すことができる。
結論:桃太郎一行が鬼ヶ島とその一帯の鬼を退治する。

このロジックに従って行動を起こした桃太郎は、どうなったでしょう? またしてもうまくいきませんでした。鬼ヶ島とその一帯の鬼たちは徒党を組んで活動しています。ただでさえ屈強な鬼が集団で行動することにより、退治する難易度はいっそう高まります。訓練を積んだ戦闘集団を打ち倒すのに十分な戦力が桃太郎一行にあるかといえばノーです。イヌ・サル・キジが鬼を打ち倒すには、鬼以上の戦力を身につける必要があり、集団を率いて数の優勢に頼ることも考えるべきです。

仮定の実現可能性を見極める必要がある

PAC思考を使って妥当な結論を導くためには、正しい前提と実現可能性が見込める仮定が必要です。

鬼ヶ島とその一帯にいる鬼たちの動向を正確につかんだとしても、最終的には個々の戦闘で勝利しなければなりません。しかし、数十人もの鬼たちは複数個所にいるため、桃太郎はイヌ・サル・キジを別動隊に仕立てて、同時に戦闘を行わなければ鬼たちをすべて退治することはできず、討ち漏らした鬼たちが村々へ反撃することを防げません。

桃太郎が仮定に加えておくべきであったのは次の点です。

仮定:桃太郎一行が力を合わせれば、鬼を倒すことができる。
:訓練で別動隊を率いる能力をお供が身につける。

キビダンゴを使ってそれぞれ仲間になったイヌ・サル・キジは、桃太郎を主体としたチーム戦では相応の戦力になるかもしれません。しかし、彼らがそれぞれチームのリーダーとして別動隊を動かす能力があるかといえば、怪しいでしょう。

仮定を変えると結論も変わる

チームリーダーとしての素養があれば、キビダンゴをもらう時点で集団のリーダーという立場にあったはずです。しかし、イヌ・サル・キジはそれぞれ単体で活動しているところを桃太郎と出会い、そこで仲間になっています。むしろ、集団行動ができずに、アウトローとして外で活動せざるを得なかった背景があることも考えられます。やはり、別動隊として活躍してもらうための訓練は必要です。

吉澤準特『クリティカルシンキング入門』(PHPビジネス新書)
吉澤準特『クリティカルシンキング入門』(PHPビジネス新書)

仮定を変えることで、結論も変わります。当初は「桃太郎一行が鬼ヶ島とその一帯の鬼を退治する」と考えていましたが、「結論:イヌ・サル・キジが別動隊を組織して島外の鬼たちを退治する」に修正・追加することが望ましいでしょう。

こうして桃太郎一行は、複数個所にいる鬼たちを同時攻撃する作戦を立案すると同時に、イヌ・サル・キジの能力を現実的に評価した上での訓練計画も進めることにしました。その結果、イヌ・サル・キジの別動隊による島外の鬼への攻撃と、桃太郎率いる本隊による鬼ヶ島への攻撃は同時に行われ、鬼たちを一網打尽にすることができたのです。

めでたし、めでたし。

吉澤 準特(よしざわ・じゅんとく)
外資系コンサルタント
ビジネスからシステムまで幅広くコンサルティングを行う。『外資系コンサルの仕事を片づける技術』ほか著書多数。

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