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賑わいから取り残されたのは私だけ。クリスマスに彼は現れなかった

  • 2024.12.30

恋人のいない冬の空気は、妙に心を締めつける。
寒さが身にしみるだけでなく、どこか寂しさを感じさせるからだ。

特にクリスマスが近づくと、街はイルミネーションで輝き、人々は楽しそうに見える。
夏には感じないのに、なんでだろう。
その光景に心が浮き立つこともあれば、どこか置いていかれたような気持ちになることもある。

◎ ◎

あのクリスマスも、そんな特別な日だった。
ただし、私にとっては忘れたい記憶でもある。

付き合って初めての彼とのクリスマスだった。
彼は「当日はサプライズがある」とだけ言い残し、具体的なプランは教えてくれなかった。

何が待っているのか、それを考えるだけで胸が高鳴った。
どんなプレゼントだろう、どんな場所に連れて行ってくれるのだろう。
想像するたびに、自然と笑みがこぼれた。

待ち合わせは駅前のカフェだった。
赤いニットワンピースにコートを羽織り、少し背伸びしたヒールブーツを履いて出かけた。

彼に渡すために用意したプレゼントも鞄に入れて持っていった。
時間より少し早めに着き、カフェの席で温かいラテを注文した。

窓越しに見えるイルミネーションを眺めながら、特別な時間が始まるのを心待ちにしていた。

◎ ◎

でも、彼は約束の時間を過ぎても現れなかった。最初は電車が遅れているのだろうと気にしなかった。そのくらいの信頼関係があったからだ。

10分、15分と時間が過ぎても連絡が来ない。

「忙しい人だから、何かあったのかもしれない」と自分に言い聞かせた。
しかし30分を過ぎた頃、スマホが鳴った。

期待して画面を見たが、そこに表示されたのは短いメッセージだった。
「ごめん、今日は行けなくなった。また後で話そう」

その一文を目にした瞬間、心臓がぎゅっと締めつけられた。
店内のざわめきも、流れていたクリスマスソングも、すべてが遠く感じた。何が起きたのかわからなかった。ただ、胸にこみ上げる寂しさだけがそこにあった。

カフェを出て、駅に向かう道すがら、イルミネーションの輝きが目に刺さるように感じた。

街の賑やかさが、まるで自分だけが取り残されたように思わせた。
「どうしてこんなことになったのか」「何がいけなかったのか」と考えたが、答えは見つからなかった。

◎ ◎

数日後、彼から会いたいと連絡があった。
彼の口から出た言葉は、「一緒にいるのが楽しい半面、将来のことを考えると不安になった」というものだった。

彼の心が離れていることを感じ、そこで初めて私たちの関係が終わるのだと実感した。

頭が真っ白になり、彼の言葉を受け止める余裕すらなかった。もし、あのクリスマスに戻れるなら、私は何をするだろう。

彼にもっと素直に気持ちを伝えただろうか。それとも、彼の心の変化にもっと早く気づけただろうか。

もしかすると、どんなに頑張っても結果は変わらなかったかもしれない。だけど、あの日の私はただ彼を信じ、期待し、何も気づかないままだった。あれから一年が経った。

今でもクリスマスが近づくと、あの日のことを思い出す。街のイルミネーションを見ると、胸の奥が少しだけ痛む。

◎ ◎

それでも、あの日の経験が私を少し成長させたのだと思う。恋愛体質だと言われる私だが、相手に期待しすぎないことの大切さを学んだ。

傷つくことが怖くても、それが恋愛というものだ。今年のクリスマスは一人で過ごす予定だ。それでもいいと思っている。

自分のためにケーキを買い、好きな映画を観て、静かに過ごそうと思う。

いつかまた誰かと一緒にクリスマスを過ごす日が来ることを信じている。
そのときは、もっと素直で、もっとお互いを思いやれる関係を築きたい。

それでも、もしあのクリスマスに戻れるなら、彼に伝えたいことがある。
「あなたとの時間があったから、私は少しだけ強くなれた。ありがとう」ってね。

■そののプロフィール
恋に恋する女の子

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