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キーワードは“選択”&注目の新キャストは!? ついに配信スタートした「イカゲーム」シーズン2をレビュー!

  • 2024.12.29

「俺は馬じゃない、人間だ。だから知りたい。お前らの正体と、なぜそんなにも残虐な理由が」。怒りに震える声で主人公のギフン(イ・ジョンジェ)が言った最後のセリフから、3年。2021年にNetflixで配信され、世界中で社会現象を巻き起こした「イカゲーム」が、待望のシーズン2として帰って来た。「負けたら即死」という残酷なデスゲームの設定、カラフルでスタイリッシュなビジュアル、貧富の格差をはじめとする社会問題への深い洞察が話題を呼び、世界190以上の国と地域で“観なければ置いていかれる”ほどの注目を集めたことは記憶に新しい。

【写真を見る】ワールドプレミアに登壇したイ・ジョンジェとイ・ビョンホン

新たなキャストを迎える今回のシーズン2では、より進化したゲームと、さらに深化した社会の縮図が映し出される。韓国で行ったファン・ドンヒョク監督への独占インタビューで語られた内容を交えながら、シーズン2の見どころをレビューする。

【写真を見る】ワールドプレミアに登壇したイ・ジョンジェとイ・ビョンホン Netflixシリーズ「イカゲーム」シーズン1~2:独占配信中、シーズン3:2025年独占配信
【写真を見る】ワールドプレミアに登壇したイ・ジョンジェとイ・ビョンホン Netflixシリーズ「イカゲーム」シーズン1~2:独占配信中、シーズン3:2025年独占配信

正義に命を懸ける主人公ギフン

「一番大きな違いは、ゲームに再び参加するギフンの『目的』が変化することです」とファン監督は明かす。シーズン1でデスゲームに優勝し、賞金456億ウォンを手にしたギフン。愛娘に会うために飛行機に乗るかと思いきや、直前に主催者側に電話をかけて本記事の冒頭で紹介した言葉を伝え、きびすを返してどこかへ向かう――という謎めいたシーンで幕を閉じた。シーズン2では、そんなギフンが「まったく異なる目的」を持って再びゲームに戻ることになる。監督はギフンの目的について、こう説明した。

再び殺戮ゲームへと舞い戻るギフン Netflixシリーズ「イカゲーム」シーズン1~2:独占配信中、シーズン3:2025年独占配信
再び殺戮ゲームへと舞い戻るギフン Netflixシリーズ「イカゲーム」シーズン1~2:独占配信中、シーズン3:2025年独占配信

「前作では未熟な部分を多く見せていたギフンですが、今回のシーズンでは『ゲームを止める』『復讐を果たす』という強い意志を抱え、まったく別の人物のようになって戻ってきます。お金を目指していた男が正義のために命を懸ける。その変化を見ていただきたいですね」

前作でゲームに参加していた人たちは優勝者を除いて全滅してしまったため、新たに挑戦者のなかでゲームの仕組みを知るのはギフンのみ。「負けたら即死」という原則さえ知らない参加者たちに、ギフンは前回と同じ「だるまさんが転んだ」から始まるゲームのルールを教え、生き抜くコツを伝授する。

シーズン1での無情な結末を知っているのは、わたしたち視聴者も同じ。ギフンの目線で再びイカゲームに参加し、ノンストップで巻き込まれていくのだ。

〇✕投票で深まる命の“選択”

さらに、監督は本シリーズのキーワードとして“選択”を挙げた。シーズン1でも、ゲームを続けるか中断するかを参加者全員の多数決で決めるというルールが序盤に登場したが、シーズン2では、この「投票」がストーリーの鍵となっている。

◯派と✕派に分かれたことで参加者たちの賞金への欲求や殺意が高まっていく Netflixシリーズ「イカゲーム」シーズン1~2:独占配信中、シーズン3:2025年独占配信
◯派と✕派に分かれたことで参加者たちの賞金への欲求や殺意が高まっていく Netflixシリーズ「イカゲーム」シーズン1~2:独占配信中、シーズン3:2025年独占配信

「シーズン2では、参加者たちがゲームを続けるかやめるかを決定する〇✕投票がステージごとに行われます。456人の参加者が一つのゲームを終えるたびに、生き残った人たちで再び『続ける(〇)か』『やめる(✕)か』を選ぶ機会が与えられ、そこで生じる衝突や対立が物語の大きなポイントになるのです」とファン監督は語る。

生き残るたびに「このまま続けてさらに賞金を狙いたい」という〇派と、「これ以上は危険だ、やめて家に帰りたい」という✕派で対立が起きる。相手と自分のあいだに線を引く対立構造が参加者同士の裏切りや駆け引きを生み出し、「人間はどこまで理性と倫理を保てるのか」という問いをさらに過酷な形で突きつける。

ゲームの参加者は、トランスジェンダー、仮装通貨詐欺に遭った元インフルエンサーや彼の助言を信じて資産を失ったフォロワー、海兵隊経験者、巫女など。前作よりも年齢層が幅広くなり、特に若い人が増えた。「最近は仮装通貨や不動産投資などで借金を負う若者が増えた」という時勢を反映したためだ。

元インフルエンサーのミョンギ(イム・シワン)と彼の子を妊娠したジュニ(チョ・ユリ) Netflixシリーズ「イカゲーム」シーズン1~2:独占配信中、シーズン3:2025年独占配信
元インフルエンサーのミョンギ(イム・シワン)と彼の子を妊娠したジュニ(チョ・ユリ) Netflixシリーズ「イカゲーム」シーズン1~2:独占配信中、シーズン3:2025年独占配信

「いまの世の中でも、『自分は正しい』『相手は間違っている』と対立する状況を数多く目にします。資源や機会が限られていることで競争が激化し、自分の利益を奪う存在を『敵』とみなし、排他的・攻撃的になっていく。それがまるでイカゲームの参加者たちの姿と重なるのです」

実力派俳優のなかで異彩を放つ意外なキャスティング

ギフン役のイ・ジョンジェやフロントマン役のイ・ビョンホンら韓国を代表する俳優が揃ったキャストで注目すべきは、イム・シワンとチェ・スヒョン(T.O.P)だ。イム・シワンは、アイドル出身でありながら俳優としても評価が高く、映画『ボストン1947』(23)やドラマ「ミセン~未生」などでその演技力の高さを目の当たりにした人も多いはず。監督は「彼の持つ独特の外見と演技の幅広さが、今回のキャラクターに最適だった」とし、「実際に観れば、なぜキャスティングしたのか皆さん納得いただけるだろう」と絶大な信頼を寄せている。誠実な青年から悪役まで演じ分ける実力派だが、今回演じるのは、仮装通貨詐欺でフォロワーにも損失を負わせたにもかかわらず逃げ腰のインフルエンサー、ミョンギ役。ゲームの現場で再会する元恋人ジュニ(IZ*ONEの元メンバーチョ・ユリ)との切なくも複雑な関係の行方もストーリーの一つの軸となっている。

一方、チェ・スンヒョンはアイドルグループ「BIGBANG」でT.O.P名義として活動する傍ら、俳優としてもキャリアを重ねてきた。ところが、近年は大麻吸引で摘発され、活動を休止していた時期もあり、韓国では、今回のキャスティング時に物議をかもしたことも。しかし監督は「彼が持つ俳優としての潜在力を信じている」と語り、彼にまさにフィットする役を与えたという。それは、ミョンギの動画の影響で投資した全財産を失ったラッパー役。どん底から体当たりでゲームに挑む姿には凄みさえ感じられ、まさに彼の新境地といえるだろう。

現実に潜む矛盾や格差をあぶりだすテーマ

監督はこれまでも『トガニ 幼き瞳の告発』(12)や『怪しい彼女』(14)など、社会的なテーマや家族ドラマを巧みに描く作品を手がけてきた。その創作の原点について、次のように明かす。

「私の場合、作品の始まりはほとんどが個人的な経験に基づいています。『怪しい彼女』には、祖母や母に対する思い出が大きく影響していますし、『イカゲーム』は、子どもの頃に友だちと遊んだ遊びやそこで感じたささいな出来事がインスピレーションになりました」

借金を抱えた息子ヨンシク(ヤン・ドングン)と、息子のためにゲームに参加する母グムジャ(カン・エシム)の親子 Netflixシリーズ「イカゲーム」シーズン1~2:独占配信中、シーズン3:2025年独占配信
借金を抱えた息子ヨンシク(ヤン・ドングン)と、息子のためにゲームに参加する母グムジャ(カン・エシム)の親子 Netflixシリーズ「イカゲーム」シーズン1~2:独占配信中、シーズン3:2025年独占配信

そこに社会問題や時事ニュースへの関心をかけ合わせることで、あの強烈なテーマ性が生まれるのだという。シーズン1で描かれた貧富の格差や借金地獄のリアリティは、決して絵空事ではなく、監督自身が日常で目にした社会の歪みをデスゲームという極端な形で具現化したものだ。シーズン2でも、コロナ禍以降に深まる「閉塞感」や「不信感」「国際的な対立」「生活の困窮」など、私たちが実際に体感する世界の問題を色濃く反映している。

「いまや紛争は、富裕層と貧困層だけに限られたものではありません。世代、性別、政治思想の違いなどでも激しくぶつかっている、そんな葛藤を描写してみたかった。こうした社会状況は悲しいことではありますが、ただ嘆くのではなく、それを直視して少しでも変えようとする努力が大切だと考えています。『イカゲーム』を観て共感する人々が増えれば、行動を起こす人も増えるのではないかという期待を抱いています」

ゲームを支配するフロントマン(イ・ビョンホン) Netflixシリーズ「イカゲーム」シーズン1~2:独占配信中、シーズン3:2025年独占配信
ゲームを支配するフロントマン(イ・ビョンホン) Netflixシリーズ「イカゲーム」シーズン1~2:独占配信中、シーズン3:2025年独占配信

新シーズンで伝えたいメッセージについて監督は「私たちに希望があるのか、わたしたちは世の中を変えられる存在なのかという質問を真剣に語り合いたいと思った」と語る。

アメリカの大統領選挙や韓国大統領の「非常戒厳」宣布を機に広がるデモなど、分断が一層浮き彫りになり、世界情勢が混沌を深めた2024年。その年末に放たれた「イカゲーム」シーズン2は、過酷なフィクションを通じて、現実に潜む矛盾や格差をあぶりだす。それが、次なる「選択」を考えるきっかけとなり、新たな希望に向かう糧になることを願っている。

文/桑畑優香

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