今回、教えてくれたのは…
芝大門いまづクリニック院長 今津嘉宏先生
病状だけではなく、患者をとりまく環境や性格にも配慮した医療を実践。漢方医療にも詳しい。『病気知らずの名医が食べている長生き朝ごはん』(ワニブックス)など、著書多数。
症状に合った薬かは自分で判断を
風邪症状が長引いて、のどの奥でウイルスが増えると、気管支炎や肺炎になることも。そうなる前に、早めに治したいもの。
- 風邪で炎症を起こしている状態は、炎が燃えているようなものなので、早めに消火しなければいけません。解熱・鎮痛剤や抗炎症効果のある薬を適切な量を飲む必要があります。処方された薬を飲んでも治らない場合は、遠慮せずに医師に相談しましょう。
今津嘉宏先生
風邪で処方される薬の種類と効果効能
● 解熱・鎮痛剤
熱を下げる作用と、痛みを抑える作用。
アセトアミノフェン、ロキソプロフェンなど
● 抗炎症剤
のどなどの炎症を抑え、腫れや痛みを緩和する作用。
トラネキサム酸など
● 去痰剤
鼻水やたんをさらさらにして排出しやすくする作用。
ムコダイン、ムコソルバン
● 咳止め
咳を鎮める作用。
メジコンなど
● 抗生剤
細菌感染を治療する。ウイルスには効かないので注意。
薬の効果をきちんと得るためのポイント
❶ 薬の飲み方に注意
発熱のときに飲む解熱・鎮痛剤は、炎症を抑えるので、我慢せずに飲んでOK。ただし、飲み方に注意を。
「少ない水で飲んで錠剤が食道や胃につくと、その部分を荒らしてしまいます。コップ 1 杯の水を余分に飲んで」
❷ 市販の風邪薬も活用してOK?
風邪には特効薬はなく、薬を飲むのは熱や炎症を抑えたり、つらい症状を抑えるため。
だから、「風邪だな」と思ったら、市販の総合感冒薬で対処してもOKです。自分の症状に合った処方になっているかは、確認を。
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❸ 医師にはどう症状を伝えるといい?
症状がなかなかよくならない場合は、自分から医師に質問を。
また、受診のときは「ただ風邪です」というのではなく、引き始めて何日くらいたっていてどんな症状がつらいかなどを伝えると、より適切な治療が受けられます。
【症状別 漢方薬リスト】 症状に合わせた漢方薬で、賢く対処しよう
薬局で手軽に買える漢方薬の中にも、風邪に有効なものがたくさん。風邪の場合は、体質よりも出ている症状で選べるので、取り入れやすいでしょう。
☑ 鼻水、くしゃみなど
→ 小青竜湯(しょうせいりゅうとう)
風邪の初期に、さらさらとした鼻水が出るときに。「水」のめぐりを整える漢方薬。花粉症にも有効。
☑ 鼻づまりや、鼻の奥の痛み
→ 葛根湯加川芎辛夷(かっこんとうかせんきゅうしんい)
鼻水から、鼻づまりに進んで鼻の奥が痛いときに。余分にたまった「水」によりむくんだ鼻粘膜の炎症を取り除く漢方薬。副鼻腔炎にも。
☑ のどから始まる風邪に
→ 麻黄附子細辛湯(まおうぶしさいしんとう)
「少し風邪気味だな」と感じるとき、のどの痛みがある風邪の初期に。体が熱を作りだすのをサポートし、症状を改善。
☑ 咳が出る、声枯れ、たんなど
→ 小柴胡湯加桔梗石膏(しょうさいことうかききょうせっこう)※医薬品用
風邪の始まりから2日以上がたち、咳や声枯れたんなどの症状があるときに。扁桃炎や扁桃周囲炎に用いられる漢方薬。
☑ 咳が出てゼーゼーする、胸が苦しい
→ 麻黄湯(まおうとう)
咳が出たり、胸が苦しいなどの気管支炎の症状があるときに。体を温めて発汗することで、風邪を治す漢方薬。
☑ ぞくぞくやこわばりから始まる風邪に
→ 葛根湯(かっこんとう)
風邪のひき始めで寒気がしたり、頭 痛や首、肩のこわばりがあるときに。体を温めるとともに、筋肉の緊張を緩める漢方薬。
☑ 長引く咳に
→ 麦門冬湯(ばくもんどうとう)
昼間起きているときに、たんを伴わない、コンコンという乾いた咳が出る場合に。 咳の反射を抑える、即効性のある漢方薬。
☑ 風邪が長引いて、夕方から咳が出るときに
→ 竹茹温胆湯(ちくじょうんたんとう)
風邪の回復期に咳が長引き、特に夕方や夜寝る前に咳が出るときに。消化器を助けて、余分な水分を排出する漢方薬。
冬に急増! 長引く咳の理由は?
咳だけが続く場合は、咳をし続けたせいでのどの粘膜を傷めている場合が。また、うがいはのどをしめらせるには有効ですが、殺菌力のあるうがい薬はのどの粘膜を乾かすので逆効果に。水うがいや加湿、マスクでのどをうるおして。
風邪以外にも咳が出る感染症はあるので、呼吸苦などがあるときは病院へ。
注意したい咳が出る感染症
●マイコプラズマ肺炎
マイコプラズマという細菌による感染。飛沫感染し、学校などで流行しやすい。軽症で、自然に治ることも。
●結核
結核菌によって、肺などに炎症が起こる感染。感染しても必ず発病するわけではなく、免疫力の低下で症状が出る場合が。
●非定型抗酸菌症
結核以外の土壌や水まわりにいる細菌による感染。高齢者など免疫力が低い人がかかりやすい。
illustration:fukucoco text:Tanaka Ema
リンネル2025年2月号
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