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金子恵美さん、夫の過ちをなぜ許せたか。関係修復の処方箋とは

  • 2024.12.29

「夫をなぜ許せたのか」。元衆議院議員でテレビコメンテーターの金子恵美さんが、夫の二度の“女性問題”報道後、幾度となく問われてきたこの問いに、今出す答えとは。最近も話題になった政治家のスキャンダルへの考えにも触れつつ、夫を許すことで築かれた現在への思いを語っていただきました。

「何やってんだ、玉木さん」。政治家のスキャンダル、どう考える?

先日、国民民主党の玉木雄一郎代表の不倫問題が発覚しました。党は玉木さんを3カ月の役職停止処分にしました。先の衆議院選挙で、所得税がかかる年収の最低ライン「103万円の壁」を引き上げるという訴えが支持され、党が大幅に議席を伸ばした矢先の出来事に、「何やってんだ、玉木さん」と。

政治家にとってスキャンダルは信頼を大きく揺るがす要素です。それは有権者が、政治家を私生活も含めて「倫理観がしっかりしている存在」であるべきと期待するからでしょう。それも当然ではありますが、本当に“聖人君子”であればいいのか、という思いもあります。政治家は、いろんな意味で人が寄ってくるくらいの魅力のある人であってほしい。今はなんだかみんな“こじんまり”としていて、逆にダイナミックなことをできないのではないか。そう思ってしまうのは古い考えなのかもしれないですが。

そして基本的に私は、政治家の仕事とプライベートの問題は別だと考えています。だから玉木さんには政治家としてやるべきこと、掲げた政策の実現に専念してほしいと思います。

ただ、それと違う例を作ったのが、夫の宮崎謙介でした。政治家の不倫問題は古くから取りざたされてきましたが、それによる議員辞職は「憲政史上初」と言われました。宮崎の場合は、当時、育休宣言を掲げ、女性の社会進出や家庭と仕事の両立を訴えながら、その理念に反するような、女性、つまり私に対する裏切りの行動を取った。「言行不一致で政治不信を招くようなことをやってしまった」という理由で辞職しました。そのことは、彼の生き様であり、政治家のひとつの姿勢として、私は評価しています。

そしてこの時私は「誰でも失敗はするもの。大切なのは反省して生まれ変わることだ」と思って、夫を許したのです。だからこそ、「二度目」はさすがにあきれました。

失望した二度目の報道。どん底を味わったはずなのに……

議員辞職から数年、2020年のちょうどコロナ禍に、宮崎の二度目の“女性問題”が報道されました。報道が出る前、宮崎から電話がかかってきた時のことは忘れもしません。私は東京駅の近くに停めた車の中で電話に出ました。「もしもし……」という夫の声を聞いた瞬間、「ああ、まただな」と気付きました。何か言いたいことがあるけれど言えない時の声でしたから。すぐに「またやってしまいましたね」と言いました。

一度目の時、議員辞職までして、顔面麻痺になるほどのどん底を味わって、ようやくこの数年間でここまで立ち直ってきたのに、この人こんなに学習能力がなかったのか……。その脇の甘さに心底がっかりしました。

ただ、説明を聞くと二度目は“未遂”でした。当時、宮崎はネット上で皆さんの相談に応じる活動をしていて、そのうちの一人の医療従事者だという女性から相談を受けていたところ、「会いたい」という話があって、悩んでいる人をむげにもできず、言われるがまま一度会うことに。この時は何もなかったそうですが、そのことを「二度目の不倫」と週刊誌で報じられました。

私も宮崎が親身にいろいろな人の相談に乗っていたことは知っていましたし、困っている人に手を差し伸べずにはいられないキャラクターを知っているので、宮崎らしいなとも思いました。そして、宮崎が私に向き合っている時の目や言葉には噓がない。私にしてくれていることへの偽りはないと信じられました。さすがに、「なんで一人で行っちゃったかなぁ。下心あったんじゃないの?」って突っ込みはしましたよ。

朝日新聞telling,(テリング)

「夫の気持ちは私にある」。信じ切れたからこそ

怒りはないのかと聞かれたら、女性としての感情の部分で、何もないと言えば噓だと思うんです。思い返しても、一度目は知らされたのが出産した日の夜でしたからね。幸せの絶頂でそれを聞き、何も思わないことはなかった。ただ、本人はこんなに反省しているし、目の前には生まれたばかりの子どもがいる。そしてその瞬間にも、彼がいつも私にしてくれていることと天秤にかけた時に、そちらが勝った。今の日常をこんなことで失いたくない、と思ったんです。そして、次の瞬間には、政治家としてこれから起きることにどう対応するか、という思考に自分を切り替えた。その時、感情はもしかしたら押し殺したのかもしれないですね。

私が彼を許せたのは、気持ちが私にあると信じられたからです。宮崎は元々、普段から私に対してスキンシップも含めて愛情表現が豊かなタイプ。だからこそ、「あんなに愛情表現をしてくる人がなぜ」という思いがあったのも事実ですが……。宮崎が辞職会見で言ったのが、「人間としての欲が勝ってしまった」という言葉でした。心まで持っていかれたら、女性は絶対わかると思うんです。もしそうなら、私は絶対に許せなかったでしょう。

今も、気持ちが自分にあることは日常的な会話の中で確認しています。今の気持ちもそうですし、もっと先の二人の将来の話をできるかどうか。「子どもが自立したらどうする?」という将来設計を話しつつ、「もちろんその相手は私だよね?」と。

直球で、太い〝釘″を刺す

「二度あることは三度ある」? それは大丈夫かな。私は、夫婦の間でもプライベートなスペースや時間、知らないことはあっていいと思うんです。彼からしたら、自由に動けるし、そうさせてもらっていることに感謝もあるはず。厳しくされると、やっぱり誰でも逃げ出したくなりますよね。だから締め付けるより“放牧”するんです。

その代わり、夫婦間で共有すべきことについては密にコミュニケーションを図っています。例えば朝は子どもを送り出した後に築地に行って朝食を食べるとか、それぞれ外での仕事が終わった後にカフェで落ち合って遅いランチを食べるとかしながら、子どもの学校であったことなどを共有しておく。家でやることをやっておいてくれれば、あとはどうぞ、というスタンスです。

ただ、私なりに一度目の経験から学んだこともあります。当時はお互い議員をしていて、あまりにも忙しかった。おなかに子どももいて、夫婦間の会話はありましたが、やはり私は宮崎よりも地元に目が向いていました。宮崎に対するチェックは全くしていなくて、本当に全然気付かなかったんですね。正直言って、不倫なんてドラマの中の出来事で、まさか自分の身に起きるなんて思ってもいませんでした。自分に何か落ち度がなかったかと振り返った時に、そこをあまりにも意識しなさすぎていたと思いました。

だからそれ以来、私なりの教訓として、ちょくちょく釘は刺しています。「最近、○○県に行くことが多いですね。誰かそこに特別な人がいるんですか?」「カラオケに行ったわりにはのどが枯れていませんね。ほかのところに行っていませんでしたか?」などと、超ストレートに、シンプル聞きます。こちらが聞けば、そこまで聞いてないというくらい何でも話しますよ。

やっぱりバランスが大事なんですよね。放牧させておいて、でも越えてはいけない柵を越えそうになったら、すぐに回収するわけです。毎日のように言われたら窮屈だと思うんですけど、忘れた頃に太い釘は刺しておいた方がいい。そして、この時一番効くのは「息子を悲しませることをしたら許さないよ」という言葉です。

息子に過去を語ることが父としての「けじめ」

小学3年生の息子は、私が落選して議員を辞めたことは知っていますが、宮崎が辞職した理由は知りません。国会議事堂の前を通ると、「パパは政治家だったんだよ。あそこにいたんだよ」という話をするのですが、「なんでパパは今、そこにいないんだろう」と思っているでしょう。先日、私と宮崎が出演したある番組を見た時には、「パパなんかしたの?」と聞いてきました。

過去の件について、息子には宮崎がタイミングを見て自分で話すと言っているので、任せようと思っています。辞職会見でも「父として出直していきたい」と言っていましたし、それが自分のけじめだと思っているようです。息子はパパのことが大好き。私の母が「断然パパっ子だね」って言うほどです。息子に恥じない生き方をすると誓ったのが、息子にも伝わっているのかもしれないですね。

朝日新聞telling,(テリング)

未来が想像できるなら、継続も選択肢に

今、恋人や夫の浮気に直面している方もいらっしゃるかもしれません。わかった時点で迷いなく関係を終わりにする方もいると思いますし、それはもちろんそれぞれでいいと思います。気持ちをこちらに向かせるのが難しいのに、ズルズル時間をかけるのも違うと思います。そこまで苦しい思いをし続けるのは、自分や子どもにとってもよくない。自分の幸せのために見切ることも大切だと思います。

でももし、やっぱり好きで、これから関係を続けるか悩んでいる方は、目先のことよりも、もう少し先のことを考えてみるのはいかがでしょうか。10年後、20年後の自分をイメージしてみて、その相手が自分の隣にいることが想像できるか、いても違和感がないか、自分がなりたい自分になれているか。

もしなんとなく一緒にいることをイメージできたら、ひとつの過ちに目をつぶって、もう少し関係を続けてみるという選択肢もあると思うんです。そこで終わらせてしまったら、その先の未来はない。瞬間的な怒りの感情に流されず、ちょっとひと呼吸を置いてから判断するのもいいと思います。

継続という選択肢を選ぶ時、おすすめなのが、具体的な改善のアクションプランを出させること。「ごめんなさい」とか「もう二度としません」とか口で言うのは簡単ですし、表面的な謝罪を信じることはなかなか難しいと思うので、本当に反省しているのか見極めるのが大事だと思います。相手ももし継続を望んでいるなら、なんとか努力するはず。口だけでなく態度で示すということですね。

宮崎の場合、一度目は生まれたばかりの息子の育児に専念すること。二度目はちょうど息子が小学校受験を控えていたので、受験のサポートに徹するということでした。私の両親も驚くほど全身全霊で子育てに向き合う宮崎の姿を見て、彼の懺悔と真剣さが伝わったんです。

あの選択は良かったと今は思える

私の場合は、許したことで結果的に今の幸せな日々があります。当時、それを確信していたわけではありませんが、あの時の選択は良かったと今は思えています。

大変だった当時に戻りたいとは全く思いませんが、乗り越えてしまえばあれもいい思い出。夫婦の絆にもなっていると思います。夫婦間のことだけでなく、家族や社会に対しても、寛容な人、許すことのできる人の方が周りに人が集まってくるし、幸せが寄ってくるはず。私は昔からそんな人でありたいと思っていましたし、宮崎の出来事を通じて、それが実践できたのかもしれませんね。

■金子恵美のプロフィール
1978年、新潟県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。2007年新潟市議会議員選挙に当選、新潟県議会議員を経て、12年に衆議院議員に初当選。16年に総務大臣政務官に就任。17年の衆議院議員選挙で落選。現在フジテレビ系「めざまし8」、CBC系「ゴゴスマ」など、多数のメディアにコメンテーターとして出演中。

■黒澤真紀のプロフィール
愛媛県生まれ。5年間の都内学習塾勤務を経て、2011年にフリーライターに転身。ウェブや雑誌のインタビュー記事、教材や試験問題の作成や小論文の添削などを担当する。高校生と中学生の息子とのおしゃべりが大好き。

■岡田晃奈のプロフィール
1989年東京生まれ、神奈川育ち。写真学校卒業後、出版社カメラマンとして勤務。現在フリーランス。

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