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愛しているからこその諦観と葛藤。互いを思うが故の切ない純愛ボーイズラブ『もう少しだけ、そばにいて』

  • 2024.12.29

この記事はセンシティブな内容を含みます。ご了承の上、お読みください。

大好きだからこそ、言えないことがある。大切だからこそ、離れなければならない時がある。『もう少しだけ、そばにいて』(白野ほなみ/リブレ)は、愛と人生の選択を描いた純愛ボーイズラブ・ストーリーだ。愛することや生死の本質を描いた本作は、気軽に読むには重い内容ではある。だが真摯な愛情と決断は、読者の心を掴み大きく感情を揺さぶる。私の中にも重く深く残り、煌めき続ける大切な作品になった。この作品が多くの人に届いてほしいと、心から思う。

小説家の晴人とサラリーマンの晃は、大学時代からの恋人同士で同棲中。晴人は数年前の事故をきっかけに、下半身不随となり車椅子生活を送っている。晃は毎日1秒でも早く帰宅し、2人の時間を何より大切にしている。ツンデレで面倒くさがりな晴人と、明るくて愛情表現が止まらない晃。多少の不便があっても、大好きな人と暮らせることにささやかな幸せを感じる日常が描かれている。

しかし、お互いが人生や夢への葛藤を抱えていた。晃に迷惑をかけてしまうことや身体や心の辛さに苦しむ晴人。一方で、晃は晴人が大好きで一緒にいたいが、もともと好きだった旅から遠のき、自身の夢や在り方を見失ってしまう。

下半身麻痺の現実や介助の苦悩が、痛切なまでにリアルに描かれている。日常生活で感じるしんどさや神経痛の苦しさ、車椅子になって初めて感じる周りからの視線、外出へのハードルの高さ、介助する側の生活の制限。事故に遭う前の回想シーンも度々描かれることで、戻らない日々への切なさや当たり前の日常の尊さが胸に刺さる。晴人の絶望や諦観と晃の葛藤やもどかしさが、痛いほどに伝わる。読み進めるほどに、「もう少しだけ、そばにいて」というタイトルが持つ意味と、その重みが心に迫ってくる。

もし自分やパートナーが車椅子生活になったらどうするだろう? 2人のように互いを思い合い、愛に溢れた決断ができるだろうか。ヘビーなテーマかもしれないが、柔らかく温かいイラストなのでぜひ手に取っていただき、最後まで、2人の愛に満ちた人生を見届けてほしい。

文=ネゴト / fumi

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