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もうニキビを気にしなくなった私に、ニキビを説教してくる母親

  • 2024.12.29

先日、家族が東京にやってきた。せっかくの機会なので、一緒に食事に行った。

その頃の私は、修士論文の提出が1ヶ月後まで迫ってきていて、あまり時間に余裕があるとはいえなかったが、遠方から来た家族とゆっくり食事をするくらいのゆとりがあったほうが、生活にメリハリができて良いかと思い、レストランを予約してもらったのだった。

東京の東端から横浜まで電車を乗り継いで、レストランの前まで来た。家族は私よりも先に着いていたようだった。階段の下にいる家族が私に気づいてくれて、目が合ったので、そのまま歩いて下りて行った。

すると、母親に「ニコッとぐらいしいや」と言われた。

なぜ自分の家族に、他人行儀な愛想笑いを振りまく必要があるのか?そんなにニコッとしてほしいなら、何か面白いジョークでもダンスでも披露してくれたら、私は自然に笑うのに。今ならいくらでも文句が思いつくのだが、その時はただ無愛想に睨みつけることしかできなかった。

◎ ◎

また、母親に「口の周りどしたん。めっちゃ荒れとるやん。食事とか洗顔とか気いつけや」と叱られた。「小麦とか添加物とかが良くないって言われとるよ」と言われたが、そんなの科学的に証明されていない。

私は論文執筆で忙しかったからか、生活がおろそかになりがちだったのだが、ここ1~2年、自分の容姿をネガティブに気にすることがなくなって、むしろ精神的には安定していたのだった。たしかにニキビがポツポツとあるけれど、人に指摘されるほどだとは思っていなかった。

せっかく周りの目を気にしないで過ごしていたのに、母親に言われたその日から、口の周りのニキビが気になってしまって、つい触ったりしていたので余計にひどくなってしまった。

少々肌が荒れていようとも、全然気にせずに外出していたのに、この日以来、マスクをして出掛けることが増えた。

◎ ◎

どうして、ニキビができたくらいで、食事や洗顔について説教されなければいけないのだろうか?

私が今ちょうど肌が荒れているのは、論文執筆で忙しくて、精神的なストレスもあるし、自炊したくても時間に余裕がないことが原因にある。いつも肌荒れがひどいわけではないのだから。スキンケアの方法は、ここ数年ずっと一貫しているし、サボっているわけではない。

母親が私の肌荒れをそんなに気にするのであれば、説教ではなくて、せめて心配してほしかった。何かストレスを抱えているんじゃないか、忙しくて食事が偏ってしまっているんじゃないか、そういった事情があることを想像してほしかった。

私は、母親の優しい言葉を求めていたのである。これもまた、今ならいくらでも理屈で言い返せそうなのだが、その時は「ちょっと乾燥しとるけんよ」とぶっきらぼうに抵抗するしかなかった。

◎ ◎

私は中学生の頃から、肌が荒れやすい体質だった。ニキビのある肌がコンプレックスだったし、私も母も、いろいろな方法を探しては、いくつも試した。もちろん皮膚科にも通っていた。どんなスキンケア商品も塗り薬も特に効果はなかったが、高校生、大学生、と大人になるにつれて、自然とニキビは減っていった。

大学3年生頃までは、いろんな新しいスキンケアを試したりして、「自分の肌を綺麗に保たなければいけない」という意識が強かったと思う。

しかし、今のパートナーと暮らし始めてから、彼はいつも私に「かわいいね」と言ってくれる。最初はお世辞かと思っていたが、今では素直に「ありがとう」と返せるようになった。

肌を綺麗に保たなければいけない、足や二の腕が細くないといけない、顔が小さくなければいけない、二重でないといけない、カラコンで瞳を大きく見せないといけない......今まではそういった意識に縛られていたが、徐々に解放されていったのだった。

彼は別に、肌の綺麗さや、スタイルの良さ、顔のパーツなどで、私を好きになったり嫌いになったりするわけではないだろう。私が私であるから、好きでいてくれるのだと感じる。

すべての人のすべての身体が肯定され愛される世の中になれば、みんながもっと気楽に生きられるのに。

■わけひかりのプロフィール
趣味は、文通です。好きな人は、賢くて、毅然としていて、優しい人です。役に立つとか立たないとか、そんなことは、サンライズに乗れば、都会の夜と一緒に流れ去っていきます。

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