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2024年ベスト映画を決める前に! 年末の傑作『ソニック × シャドウ』と『型破りな教室』の意外な共通点

  • 2024.12.29
「2024年のベスト映画」を決める前に見てほしい、年末公開の『ソニック × シャドウ』と『型破りな教室』を紹介しましょう! 実は意外な共通点もあったのです。(※サムネイル画像出典: (C)2024 PARAMOUNT PICTURES AND SEGA OF AMERICA, INC. (C)Pantelion 2.0, LLC)
「2024年のベスト映画」を決める前に見てほしい、年末公開の『ソニック × シャドウ』と『型破りな教室』を紹介しましょう! 実は意外な共通点もあったのです。(※サムネイル画像出典: (C)2024 PARAMOUNT PICTURES AND SEGA OF AMERICA, INC. (C)Pantelion 2.0, LLC)

そろそろ映画ファンが楽しく「2024年のベスト映画」を決める時期です。しかし、ちょっと待ってください……! その暫定ベストのラインアップを大きく変えるかもしれない傑作が、この年の瀬に上映開始しているのですから……! 実は意外な共通点もある2作品を一挙に紹介しましょう!

1:『ソニック × シャドウ TOKYO MISSION』(12月27日より全国劇場公開中)

日本が世界に誇るアクションゲーム『ソニック』シリーズのハリウッド映画化作品の第3弾です。先んじて公開された北米では週末興行収入は6200万ドルを達成し、強力な競合作品を大きく引き離すぶっちぎりのNo.1スタート。さらにはアメリカの批評サービスRotten Tomatoesでは現在は批評家支持率88%、一般観客の評価では97%という超高評価となっています。

その熱狂にも納得する、瞬きするのも惜しいハイスピードアクション、愛らしくもかっこいいキャラクターたち、そしてシンプルなようで多層的でもある物語の奥深さ。映画『ソニック』シリーズの最高傑作なのはもちろん、原作への愛情にあふれたゲームの映画化作品としても、ゲームを知らなくても老若男女が楽しめるファミリー向けの娯楽映画としても最高峰の、本当に素晴らしい出来栄えだったのです……!

(C)2024 PARAMOUNT PICTURES AND SEGA OF AMERICA, INC.
(C)2024 PARAMOUNT PICTURES AND SEGA OF AMERICA, INC.

しかも、今回の目玉は、原作で大人気のダークヒーロー「シャドウ」が映画に初登場(字幕版での声はキアヌ・リーブス!)すること。主な舞台はタイトル通り東京であり、渋谷のスクランブル交差点が登場するほか、アニメ映画『AKIRA』などのオマージュがあるのも日本人には特にうれしいところ。東京の街で主人公とソニックとシャドウが文字通りに超音速のバトルをしたり、はたまたチームそれぞれで目的のものを奪おうとする「潜入作戦」が展開するなど、ワクワクする要素が勢ぞろいしています。

(C)2024 PARAMOUNT PICTURES AND SEGA OF AMERICA, INC.
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さらに重要なのは、本作が「復讐(ふくしゅう)」にまつわる物語であること。目的のためなら手段を選ばない危うさがあるシャドウの悲しい過去が徐々に明らかになり、それは1作目でずっと孤独だったソニックの姿に重なる部分もあれば、対比にもなっています。さらにはシリーズを通して悪役であるドクター・ロボトニックがソニックと「まさかの共闘(?)」をする流れもあり、その後には驚きの設定もあって、ロボトニックの複雑な心理もより深掘りされているのです。

(C)2024 PARAMOUNT PICTURES AND SEGA OF AMERICA, INC.
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個人的に最もグッときたのは、ロボトニックと、助手のエージェント・ストーンとの関係性。2作目『ソニックVSナックルズ』で「ロボトニックの野望である世界征服実現のためにピュアピュアに奔走する」と公式SNSで紹介もされていたストーンですが、今作ではロボトニックとの「友情」をはっきりと意識する場面や、とある理由で「嫉妬」に近い悲しみを抱く場面などもあり、その尊さもまたシリーズ最大級。あるシーンでは大粒の涙があふれてしまいました。

(C)2024 PARAMOUNT PICTURES AND SEGA OF AMERICA, INC.
(C)2024 PARAMOUNT PICTURES AND SEGA OF AMERICA, INC.

ロボトニックを演じるジム・キャリーは2作目で引退をほのめかしていたのですが、その発言を撤回。本作への出演で、今まで以上にノリノリに悪役を演じ切っていることもうれしくて仕方がありません。助手のストーン役のリー・マジドゥブもXに「絶対に離さないよ、絶対に離さないよドクター」と投稿するなど、自身が演じるキャラクターのことを「分かっている」感がたまりません。 実は、ストーンは原作に登場しない映画オリジナルキャラクターなのですが、今回をもって「史上最高の映画オリジナル要素」だと断言します。

なお、エンドロールの途中と最後にもおまけがあるので、お見逃しなきように。予備知識なく今回の映画からいきなり見ても楽しめますが、キャラクターそれぞれの(特にロボトニックとストーンの)関係性は今までの積み重ねがあってこそ尊さがマシマシになると思うので、可能であれば映画前2作を前もって見ておくこともおすすめします。

『型破りな教室』(12月20日より全国順次劇場公開中)

舞台は、犯罪と貧困が日常化した国境近くの小学校。子どもたちの生活は麻薬や殺人と隣り合わせで、教育設備は不足し、教師に意欲もなく、学力は国内最底辺で、半数以上が卒業を危ぶまれる中、新任教師がユニークな授業を始めるとクラス全体の成績は飛躍的に上昇し、そのうち10人は全国上位0.1%のトップクラスに食いこむ……! そんな驚きの「実話」を基にしたメキシコ映画です。

メキシコ本国で300万人を動員し2023年No.1の大ヒットを記録、さらにアメリカでも限定公開かつスペイン語作品にもかかわらず初週5位の快挙を遂げ、Rotten Tomatoesでは現在は批評家支持率96%に一般観客の評価では99%と、既に世界的な名作とされる評価を得ています。

(C)Pantelion 2.0, LLC
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物語の立ち上がりは、先生が教室の机を救命ボートに見立てて、「どのボートも乗れる人数は同じ、乗れない人はおぼれる、君たちは23人でボートは6つ、さあどうする?」と言うもの。それは単に割り算という「算数」というだけでなく、「浮力」という物理における疑問にもつながり、さらには「哲学」への強い興味を抱かせるきっかけにもなるのです。

(C)Pantelion 2.0, LLC
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型破りな教師が生徒たちの意識を変えていく様から、日本の漫画およびドラマ『ドラゴン桜』を連想する人や、社会問題を背景に教育に関して本質的な問い掛けがされていることから、インド映画の『きっと、うまくいく』を思い出す人もいるでしょう。生徒たちが自主的に考え、自分の才能や「可能性」にも気付き、これまでとは違う日常に希望を抱く過程には大きな感動と、それ以上に「学び」そのものの面白さが満ちていました。

(C)Pantelion 2.0, LLC
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しかし、やはり問題も立ちはだかります。先生の型破りな授業は周りから問題視され、生徒たちの貧困の問題はどうにもできず、先生はある質問をしてきた生徒に対する選択に迷い、さらにはとある悲劇も起きてしまいます。「1人の先生の教育だけではどうにもできない」という現実の問題も容赦なく描いているのです。

それでも、生徒たちの好奇心、可能性、才能を解き放つためにした授業と、それぞれがつかみ取った何かは残ります。安易な解決などないけれど、生徒と先生それぞれが考えた末に出した「答え」には、観客にもまた自主的に考えさせる力のある、かつてないほどの感動があったのです。

(C)Pantelion 2.0, LLC
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未成年者のバイクのノーヘルメット運転の描写がみられるという理由でPG12指定がされており、間接的な表現ながら殺人の描写、ごくわずかに性的な言及もありますが、それも作品には必要なものでした。世界にある子どもの貧困や犯罪やヤングケアラーの問題、教育の在り方を今一度考えたい人にも大いに推薦します。

意外な共通点は「選択」の物語であること

ここで紹介した『ソニック × シャドウ TOKYO MISSION』と『型破りな教室』はジャンルがまったく異なる映画に思えるところですが、実は一致していることがあります。それは「どんなことがあっても、選択をする時は訪れる」という事実を示していることです。

大きな後悔が残り続けていたとしても、その時々の選択しだいで未来は大きく変えられる……それは、なんと大きな希望でしょうか……! 年末年始に、ぜひこの2本を優先的に見てほしいです。

この記事の筆者:ヒナタカ プロフィール
All About 映画ガイド。雑食系映画ライターとして「ねとらぼ」「マグミクス」「NiEW(ニュー)」など複数のメディアで執筆中。作品の解説や考察、特定のジャンルのまとめ記事を担当。2022年「All About Red Ball Award」のNEWS部門を受賞。

文:ヒナタカ

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