1. トップ
  2. 恋愛
  3. 来季千葉内定のルーキーが決意を燃やす。「絶対に成長した姿を見せたい」と古巣対戦に向けて独白

来季千葉内定のルーキーが決意を燃やす。「絶対に成長した姿を見せたい」と古巣対戦に向けて独白

  • 2024.12.28
来季千葉内定のルーキーが決意を燃やす。「絶対に成長した姿を見せたい」と古巣対戦に向けて独白
来季千葉内定のルーキーが決意を燃やす。「絶対に成長した姿を見せたい」と古巣対戦に向けて独白

Text by ライター

J2ジェフユナイテッド千葉に2025年シーズンから加入する産業能率大MF猪狩祐真は、17季ぶりのJ1復帰に向けた揺るがない決意を口にした。

今季の関東大学サッカーリーグ2部では左ひざ内側靭帯などの負傷により本領を発揮できなかったが、昨季はリーグ戦(2部)20試合14得点7アシストを記録して得点王を獲得。

柔らかいタッチ、すり抜けるようなドリブル、多彩なアイディアによるチャンスメイク、そして傑出した決定力など、傑出したテクニシャンにサポーターは大きな期待を抱いている。

J1川崎フロンターレの下部組織で育ち、日大藤沢高校、産能大と歩みを進めてきた猪狩がこれまでのキャリアを振り返り、来季自身が立つプロの舞台に向けて意気込みを語った。

(取材・文 浅野凜太郎)

川崎アカデミーで培われた確かな技術

――まずサッカーを始めたきっかけを教えてください。

「物心がついたときにはサッカーをやっていました。自分は三人兄弟の末っ子なんですけど、5歳差と6歳差の兄が二人とも幼稚園から大学までサッカーをやっていたんです。

真ん中の兄はフロンターレのジュニアユースからユースに行って、それから産能大。自分はジュニアからフロンターレに行ったので、少しのズレはあるんですけど、経歴はほぼ同じです」

――お兄さんたちの姿は刺激になりましたか。

「それこそ真ん中の兄(和真さん)は(MF)三笘薫選手(プレミアリーグ、ブライトン)と川崎で同じ代でした。フロンターレで兄の試合を観に行ったときにプレーしている三笘選手のドリブルが上手だった記憶があります」

来季千葉内定のルーキーが決意を燃やす。「絶対に成長した姿を見せたい」と古巣対戦に向けて独白
来季千葉内定のルーキーが決意を燃やす。「絶対に成長した姿を見せたい」と古巣対戦に向けて独白

――猪狩選手もそのまま川崎のジュニアユースに進みました。そこで培われたものを教えてください。

「足元の技術は、確実にフロンターレのアカデミーで身についたものだと思います。止める、蹴るの大切さを学べました。止められるから顔も上がるし、顔が上がるからプレーの選択肢も広がる。考えながらプレーすることにつながってくるので、自分のサッカー人生において、フロンターレで過ごした5年間はとても大きかったと思います」

――憧れの選手はいましたか。

「中村憲剛選手はプレーが似ているわけではないんですが、ジュニアからずっと観ていたので、止める、蹴るの部分や視野の広さを参考にしていました」

川崎U-15で足元の技術を磨いた猪狩だったが、高校年代では神奈川県の強豪・日本大藤沢高(以下日大藤沢高)へ進学した。クラブチームから高体連への進学に戸惑いもあったが、中心選手として活躍。

全国高校サッカー選手権大会出場通算7回を誇る名門での日々は、川崎アカデミーで得られなかった責任感と自信をつけることにつながった。

日大藤沢高で生まれた責任感と自信

――高校年代で神奈川県の日本大藤沢高に進学した経緯を教えてください。

「小学校5年から中学校3年までの5年間をフロンターレでお世話になって、その間も出られない時期はありませんでした。だから正直なところ、ユースには上がれると思っていたんです。

でも中学3年の1月から3月まで腰をケガしてしまった。(川崎の)ユースのセレクションには何回か行かせてもらっていたんですが、あまり手応えがなかったですし、合否のときには『保留』と言われていました。

その中で監督とお話しをさせてもらったときに、『高体連に行った方が伸びると思う』と言ってもらえました。結果的に自分はユースへ上がれなくて、そこで一番最初に日大藤沢が声をかけてくれました」

来季千葉内定のルーキーが決意を燃やす。「絶対に成長した姿を見せたい」と古巣対戦に向けて独白
来季千葉内定のルーキーが決意を燃やす。「絶対に成長した姿を見せたい」と古巣対戦に向けて独白

――具体的にはどのような言葉をかけてもらったのですか。

「日藤の監督がすごく情熱のある人で、『こんな人いるんだ』と思いました。自分をすごく欲しがってくれたうえで、日藤の良さやサッカーに対する熱意を強く伝えてくれました。率直にうれしかったですし、この人のもとでサッカーをしたいと思った。クラブチームから高体連に行くことに不安もありましたが、選手権にも出たかったので日藤への進学を決めました」

――高体連に行った方がいいと言われた理由を教えてください。

「自分自身が伸び悩んでいた時期でもあったからだと思います。ケガ明けからなかなかパフォーマンスが上がらず、ユースに上がれないんじゃないかという不安や焦りもありました。そのときに、高体連で試合に絡んだ方が注目されるし、人間性も含めて成長できるかもしれないと言ってもらえました。結果的に、日藤に行く選択をして良かったです」

来季千葉内定のルーキーが決意を燃やす。「絶対に成長した姿を見せたい」と古巣対戦に向けて独白
来季千葉内定のルーキーが決意を燃やす。「絶対に成長した姿を見せたい」と古巣対戦に向けて独白

――日大藤沢高で成長した部分を教えてください。

「自分の技術に自信を持てました。フロンターレでは周りが上手だったので、自分が何かに突出していると思えなかった。でも初めて日藤へ行ったときに『自分、結構やれるな』と思ったんです。

フロンターレの選手たちに囲まれた中でサッカーをすれば、上手くなると思います。でも自分は日藤の中心選手としてプレーすることにより、自信を持つことができた。そこが一番の強みになっていると思いますし、『自分がやらなきゃ』という責任感も生まれた。いい意味で自由にやらせてもらったことで、プレーにも幅が生まれました」

日大藤沢高で成長を遂げた猪狩だったが、後にJ1ジュビロ磐田で活躍するMF植村洋斗(ひろと)が1学年上にいたため、思ったような出場機会を得られなかった。最終学年ではコロナ禍の影響や負傷もあり、大舞台で結果を挙げられなかった。

高校卒業後は産業能率大(以下産能大)へ進学。取材時にはコーチ陣からいじられていた21歳は、同大で傑出した活躍を見せてプロから注目される存在へと進化した。

関東大学1部の選手たちと差はない

――その後、産能大に進学された理由を教えてください。

「高卒でプロは無理だと感じていた中で、大学選びには困っていました。そんなときに自分の兄が産能大にいたこともあり、練習試合を組んでいただける機会があって、そこでスカウトしていただきました」

――なぜ大学選びに困っていたんですか。

「インハイ(全国高校総合体育大会)で結果を残して、1部リーグの大学に行きたいと思っていましたが、コロナで(大会が)なくなってしまいました。高校2年のときには植村くんとポジションが被っていて、なかなか試合に絡めませんでしたし、選手権のタイミングでも鎖骨を折ってしまった。結局、全国ベスト16の試合に少し出ただけで、経歴は何もないような状態だったからです」

来季千葉内定のルーキーが決意を燃やす。「絶対に成長した姿を見せたい」と古巣対戦に向けて独白
来季千葉内定のルーキーが決意を燃やす。「絶対に成長した姿を見せたい」と古巣対戦に向けて独白

――産能大に進学した際の心境を教えてください。

「産能大へ行くなら自分は大学1年からトップチームに入って、試合に出てアピールしなければいけないと思っていました。結果として大学1年からトップチームに入れて、計画通りに過ごせた。自分の努力をプロにつなげられたことが、大学生活で一番の自信になりました」

来季千葉内定のルーキーが決意を燃やす。「絶対に成長した姿を見せたい」と古巣対戦に向けて独白
来季千葉内定のルーキーが決意を燃やす。「絶対に成長した姿を見せたい」と古巣対戦に向けて独白

――産能大で伸びた部分を教えてください。

「もともとのストロングポイントだった足元の技術やチャンスメイク、シュートのパンチ力がより伸びました。特に一番は得点力のところで、ミドルシュートやクロスからのダイレクトシュートが自分の形になりました。

大学2年からレギュラーになって、さらに自信がつきました。U-20全日本大学選抜へ行ったとき、はじめは1部の選手たちと差があるのかもしれないと思っていましたが、実際にプレーしてみて『意外と差はないな』と感じました。大学3年のときは『自分が何とかしないといけない』と思っていた中で、得点王を取れて、7アシストを記録できた。チームの中で半分以上の得点に絡めたことで、『絶対にプロへ行ける』と思いました」

大学3年のリーグ戦終了後に、千葉から練習参加の打診を受けた。わずか2日間の練習参加だったが、猪狩の優れた才能と卓越した技術を強化部、スタッフは見逃さなかった。練習2日目の終わりに獲得オファーを受けた逸材は、悩みに悩んだという。

古巣川崎でのプレー、他のJ1クラブ加入の可能性など胸中にあったが、オリジナル10に名を連ねた名門の熱意にほだされていった。

千葉への加入を即決できなかった理由

――千葉への加入の経緯を教えてください。

「大学3年の関東リーグが終わったタイミングで、ジェフ千葉のスカウトをされている斉藤和夫さんから名刺をいただきました。そこから毎試合のように練習試合を観に来てくださって、今年の1月末くらいに『キャンプが終わったら、練習に参加してほしい』と話をいただきました。

ジェフがキャンプから帰ってきて、初めて行われる練習に2日間だけ参加させてもらって、そこで『オファーを出したい』といきなり言っていただきました。練習参加だけだと思っていたので、びっくりしました」

来季千葉内定のルーキーが決意を燃やす。「絶対に成長した姿を見せたい」と古巣対戦に向けて独白
来季千葉内定のルーキーが決意を燃やす。「絶対に成長した姿を見せたい」と古巣対戦に向けて独白

――オファーは他にもありましたか。

「気にしてくれているクラブの話は少しだけ耳にしていましたが、直接コンタクトをいただいたチームはジェフだけです」

――川崎に行きたいという想いもあったのでは。

「正直なところありました。ジェフに練習参加した2週間後に、具体的なオファーのお話があったんですけど、自分自身はちょうどそのときに開催されたデンソーカップ(デンソーカップチャレンジサッカー)が終わるまで考えさせてくださいとお願いしました。

フロンターレはもちろん、他のJ1クラブから声がかかるかもしれない。それなら挑戦してみたい、やりきりたいと思っていたからです。

でもデンソーカップでは毎試合のように出場できなかった。それでもカズさん(斉藤和夫)はずっと僕のことを気にしてくれたので、デンソーカップが終わったタイミングで自分の誕生日だった3月3日に『ジェフに行きます』とお伝えしました」

来季千葉内定のルーキーが決意を燃やす。「絶対に成長した姿を見せたい」と古巣対戦に向けて独白
来季千葉内定のルーキーが決意を燃やす。「絶対に成長した姿を見せたい」と古巣対戦に向けて独白

――葛藤があったんですね。

「焦ってフロンターレへ行って、試合に出られないことは避けたかった。まずは試合に出たかったですし、しっかりとジェフで力をつけたいと思いました。

ただそれ以上に、何回かスタジアムで試合を観に行ったときの、ジェフのファン、サポーターのみなさんの応援がとてもすごかった。フクアリ(フクダ電子アリーナ)の雰囲気、選手とサポーターが一体感を持って戦う姿勢は、どこのチームよりもすごいと感じました。

練習参加でも自分のプレースタイルを大いに生かせると感じましたし、環境がすばらしかった。『プロ1年目はここでプレーしたい』と思ってジェフに決めたあとは、もう迷いがなかったです」

――千葉の小林慶行(よしゆき)監督からはどのような言葉をかけてもらいましたか。

「小林監督からは『大卒は即戦力。練習に来たときは試合に出る準備をしてほしい。お客さんではないし、試合に出るための強い心を持つんだ』と言っていただきました」

――内定が出るまではどのような心境でしたか。それこそ大学3年の2月は就職活動も始まるころですよね。

「(就職は)まったく頭になかったですね。大学4年の最初が勝負だと思っていた中で、『あ、俺プロになれるんだ』と、早いタイミングで内定をいただけたことに驚きでした」

来季千葉内定のルーキーが決意を燃やす。「絶対に成長した姿を見せたい」と古巣対戦に向けて独白
来季千葉内定のルーキーが決意を燃やす。「絶対に成長した姿を見せたい」と古巣対戦に向けて独白

――ただ3月末にはケガを経験しました。

「ジェフに行くことが決まった2週後くらいに左ひざの内側靭帯をけがしてしまいました。それから6月ごろにようやくコンディションが戻ってきたタイミングで、同じ左足の足首をねんざしてしまいました。

半年間くらいはサッカーをできていませんし、リハビリのときは心が折れそうになったんですけど、チームメイトやスタッフからは『お前はプロが決まっているんだから、とにかく焦るな』と言ってもらえました。

そこからはジェフや産能大に恩返ししたいという気持ちが強くなって、プロでもっと強くなるための身体づくりをするなど、プラスに捉えていきました」

猪狩の千葉加入内定のリリースが出てから、約1カ月後に順天堂大MF岩井琢朗の来季加入内定が発表された。負傷で苦しむ猪狩とは対照的に、岩井は特別指定選手でJ2第23節清水エスパルス戦(0●2)でJリーグデビューを果たした。

同期の活躍を羨望の眼差しで見ていたが、その経験もいまはポジティブな原動力に変えている。自身の武器、長所を理解しているチャンスメイカーは、千葉に新しい風を吹かせる決意を口にした。

卓越した技術で千葉に新たな風を

――順天堂大のMF岩井選手はアウェー清水戦に途中出場しました。あの時期は負傷中だったんですね。

「琢朗とは夏にリハビリで(千葉に)行ったときに寮で会ってサッカーの話をしました。正直、悔しかったです。自分の方が早く内定していたので、どんどん試合に絡んでいく姿を思い描いていましたから。焦りはありましたが、いまの自分にできることは何か、琢朗を刺激にしながら、プラスに捉えてやっていました」

――千葉ではどのようなプレーを披露したいですか。

「トップ下がやりたい中で、チームによってはトップ下を置かないチームもあると思います。自分は167センチと小柄なので、足元の技術などを武器にして戦ってきましたし、そこのポジションで取ってくれたことがとても大きかったんです。

足が速いわけでも、身体が強いわけでもない。考えてプレーすることが自分の生命線だと思っていますし、そこをやめたら終わりだと思っています。自分の武器ですし、相手を食いつかせて得点を奪っていきたい。プロの舞台は高いレベルですが、自分で(チャンスを)つかみ取りたいですし、J1に行くために戦っていきたいです」

――川崎との対戦もあるかもしれないですよね。

「(川崎U-18に上がれなかったことは)悔しかった。だからこそ絶対に成長した姿を見せたいですし、ジェフでJ1に行って対戦したいと思います」

――対戦が楽しみな選手はいますか。

「植村選手です。プレーの引き出しやボールの持ち方など、プレーを一番盗んでいた選手です。高校のときはポジションが同じだった植村くんがうますぎて、自分は試合に出られなかった。対戦できれば楽しみですね」

来季千葉内定のルーキーが決意を燃やす。「絶対に成長した姿を見せたい」と古巣対戦に向けて独白
来季千葉内定のルーキーが決意を燃やす。「絶対に成長した姿を見せたい」と古巣対戦に向けて独白

――ちなみに、千葉のクラブ公式サイトに「まっちょ」というニックネームが書かれていましたが。

「それ、書いていましたっけ(笑)。母がつけたのか分からないんですけど、物心がついたときからこのあだ名です。

みんなからも『なんでまっちょなの?体がマッチョなの?』と聞かれるんですけど、別にそういうわけではないんです。ただ、兄も自分のことを『まっちょ』と呼んでいたので、それが地元では浸透しているんです」

――サポーターからも「まっちょ」と呼ばれたいですか。

「祐真と呼ばれるのも新鮮でいいですけどね(笑)。でもそれは考えさせてください(笑)」

――分かりました(笑)。最後にキャリアの展望を教えてください。

「バルセロナ(ラ・リーガ)が好きなので、いつかはスペインでプレーしたいと思っています。ただ、カズさんからは『第一線で10年プレーしろ』と強く言われていて、そのためにもこの1年目はとても重要だと思っています。ジェフでポジションを確立して試合に出続けたいと思っていますし、ジェフでJ1に行きたいです」

来季千葉内定のルーキーが決意を燃やす。「絶対に成長した姿を見せたい」と古巣対戦に向けて独白
来季千葉内定のルーキーが決意を燃やす。「絶対に成長した姿を見せたい」と古巣対戦に向けて独白

スタートダッシュには遅れたが、ここから巻き返せるという自信がある。同大サッカー部の小湊隆延監督は「技術力が高い選手ですし、必ずJリーグの舞台でもやってくれる』と太鼓判を押した。産能大のエースが千葉になかった新たなアクセントとなり、悲願のJ1復帰へと導いていく。

元記事で読む
の記事をもっとみる