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横澤夏子「自分の“甘える力”も育てていきたい」三姉妹の育児で気づいた、一人で抱え込まないことの大切さ【インタビュー】

  • 2024.12.28

4歳、3歳、1歳の三姉妹の母として奮闘する4年間の日々を綴った子育てエッセイ『ドタバタ子育て大作戦 三姉妹のれんらくちょう』(オレンジページ)を上梓した、お笑い芸人の横澤夏子さん。本書では、保育士と保護者が毎日の子どもの様子を伝え合う「保育園の連絡帳」を中心に、子育ての考え方や、ごきげんなママでいるための秘訣などを率直な言葉で紹介しています。

仕事・子育て・家事を抱えながら崖っぷちの毎日を過ごす横澤さんに、連絡帳の思い出や、子育ての中で学んだことなどを伺いました。

●短時間で書いたことが案外真髄をついている

――毎日多忙な日々を過ごしていると思いますが、朝はどんなタイミングで連絡帳を書いていますか?

横澤夏子さん(以下、横澤):朝起きた瞬間から朝ご飯の準備をして、子どもたちが食べている間にアプリに打ち込みます。朝食は私が作っていて、メニューは主食、フルーツ、ヨーグルトという感じ。朝早く出る時は、子どもたちと一緒に「いってきます」をして、移動中に打ち込んだりとか。3人分書くのは大変ですけど、ガーッと短時間で書いたことが、案外、その時の娘たちの真髄をついていたりするんですよね。書き出してみて気づくことが多いんだと思います。

――連絡帳って、保育園から書いてくださいと言われて、なんとなく書いているだけでしたが、「秒で過ぎていく毎日の中で唯一の思い出のメモ帳になっている」という言葉に深く共感しました。

横澤:私も最初の頃、「何を書いたらいいのかわからない」とSNSに載せたら、いろいろな反響があって、みんな連絡帳のことで悩んでいるんだなと。この本のお話をいただいた時、まだ4年間しか子育てを経験していない私に語れることはあまりないんじゃないかとお伝えしたんですが、「もがいている最中だからこそ全部素直に話してください」と言われて。今は私にとっても思い出の一冊になっています。

――本の制作にあたって、過去の連絡帳を読み返すこともあったのでしょうか。

横澤:読み返しました。驚くのは、3ヶ月前にめちゃくちゃ悩んでいたことが、今ではもう懐かしいんですよね。すでに違う悩みに切り替わっていて。私の母が書いた連絡帳も載せているんですが、「保育園に行きたくないという時がある」「友達とうまく遊べない時がある」って、子どもの頃の私に対する悩みが書いてあったんです。でも私は今こうして大人になれているし、子育ての悩みっていつの時代も変わらないんだなと。

――子育て中のちょっとした出来事だと思うのですが、それが本当に“あるある”で共感できますし、三姉妹の行動が可愛らしくて、とにかく笑いました。

横澤:イヤイヤしている長女と次女を抱えたら、活きのいいシャケと大マグロみたいで「大漁」だった時のこととか。園の先生からも「さぞ大漁だったことでしょう。お疲れ様でございました」とお返事があって、それだけでもう「頑張ったな」という気持ちになりました。SNSでコメントしてくださった方もいますが、その場では必死だけど「大漁」と思えば気が楽ですよね。連絡帳って、自分だけではなく、自分と先生の双方向から見た日記。夫にしか伝わらないと思っていた我が子の“あるある”が先生にも伝わっていて、それだけでもあったかい気持ちになれます。

●繰り返す子育ての中で身につけた「甘える力」

――日々のイライラも共感できるところで、本書にも包み隠すことなく綴られています。いつもどんな時にイライラしてしまいますか?

横澤:私の場合は、子どもが風邪薬を飲まない時にイライラするんですよ。限りある粉薬だというのに、鼻息で飛ばされたり、パジャマに着替えてあとは寝るだけって時に全部吐き出されちゃったりして。で、ベタベタの水がフローリングの目に入り込むという…。自分でも「なんでこんなに?」って思うくらい大爆発します。通報されたら困るから口を何かで塞ぎながら「ウワーッ!」って。

――その様子が思い浮かぶようです(笑)。

横澤:私が「ウワーッ!」ってなると、三人が「ごめんなさい」と謝ってくるという、まさに地獄絵図。でも小児科の先生に相談したら、「水で割って飲まなければジュースでもゼリーでもいいし、好きなものと一緒に飲ませてくださいね」と言われて解決しました。子どもの看病でこちらも疲れていたし、日々のことができなかったりして、その積み重ねで爆発したんでしょうね。

――日々のイライラが、お医者さんや保育士さんの一言で救われているのですね。

横澤:そうなんですよ。そんな簡単なことなんだって思った瞬間にすごく安心しました。本当に、手を差し伸べてくれる人がいっぱいいる温かい世界で。だからこそ、差し伸べられた手に気づけるように、自分の甘える力も育てていかないと。これからも周りの人たちにしがみついていこうと思っています。

――もともとは甘えられないタイプだった、と本書でも語られていましたが。

横澤:長女気質でずっと甘え方を知らなかったんですが、子育てをしてから自分の生態に初めてぶち当たりまして。

――それが、助けてくれる人たちにしがみつこうと思えるようになったのは大きな変化だと思います。限界を感じるような経験をいくつも乗り越えてこられたのではないでしょうか。

横澤:子育ての限界点は、“毎日の繰り返し”の延長線上にあるのかもしれませんね。娘が生まれたばかりで眠れない日々が続いた時も、「いつまで寝不足が続くんだろう」と終わらない日々に対して限界を感じていたし。普段も、どうしてバタバタしているのか、何に悩んでいるのかわからないのに、突然爆発してしまう時があるので。二人目、三人目になれば、上の子を見ているから「こんなもんか」って思えるんですけど。

――三姉妹と聞くと、三人分の子育てがずっしりのしかかるイメージですが、お子さんが生まれるたびに楽になったこともあるのですね。

横澤:はい。赤ちゃんを初めて可愛いと思えたのは三人目でしたし。その子によって悩みは違いますけど、子育てって本当に大変で、壁にぶち当たるたびに、壁をどうやって崩そうかと躍起になって。でも、どうすることもできなくなって、ママ友や先輩ママに相談すると、もしかしたら私自身が壁を作っていたのかもしれない…と気づいて。少し落ち着いてみたら、「ここは引き算でいけるかもしれない」みたいな抜け道がたくさんあったんです。

――子育てを通じて、抜け道の存在に気づかれたということでしょうか。

横澤:そうですね。自分一人でやろうとしなくてもいいんだ、と思えるようになりました。友だちの集まりでも「私が、私が」と幹事を引き受けまくるタイプでしたけど、「なんだ、みんなで協力すればいいんだ」って、この歳になって初めて人に甘えることを知りましたね。

●寝かしつけの後は夫婦で「ネタ見せ2割、話し合い8割」

――帯にメッセージを寄せている藤本美貴さんとは、『夫が寝たあとに』(テレビ朝日)で一緒にMCを務めていらっしゃいます。わずか半年で、17分枠が1時間枠に拡大するほどの人気番組ですね。

横澤:お話をいただいた時は三女の産休中。二人きりで家にいる時間が続いていたので、誰かと話せる機会をいただけるのが嬉しくて。ミキティさんって寮母さんみたいな人なんですよ。どんな時もドーンと構えていて、私が「こうじゃなきゃダメ」って考えていると「こんなもんでいいのよ!」って光を差してくれるんです。

――お話するようになったのは、この番組が始まってからですか?

横澤:何度かバラエティ番組で一緒になって「今日のゲストは妊婦のお二人です!」みたいな時もあったんですよ。その時、私は初産で、ミキティさんは三人目。私が出産に対する不安をお話ししたら、「出産なんてスポーツよ!」と言ってくださったのが印象的で。三人目を産む時はミキティさんのようになれるかなと思っていたけど、私にはなれなかった(笑)。やっぱりすごい人なんだと思います。

――いい意味で、次元が違うみたいですね(笑)。番組のゲストも豪華で、こんな方たちも実生活ではママなんだなと感動します。

横澤:そうなんです。澤 穂希さんが手足口病に負けちゃったっていうお話をされた時は、「国民栄養賞を受賞するような人が手足口病に負けるんだったら、私も負けるわ…」と思ったりとか。錚々たるゲストのみなさんも同じように悩みながら子育てしてるんだ~って、いつも共感することばかりですね。

――お仕事をしながら三姉妹を育てるには、保育園はもちろん、パパの協力が不可欠ではないかと思います。本書には夫婦で家事や子育てを分担するアイデアもあって、とてもスムーズに連携されている印象でした。

横澤:いくつもの爆発を経てからの今なんですよ。喧嘩もしますけど、よく話すようにはしています。子育て環境をより良くしたいっていう共通の目標はあるので、それならできることがあるよね、と。寝かしつけの後は、ネタ見せ2割、話し合い8割。子どもの真似をするネタを見せ合って「それ、よくやるわ!」って笑い合ったり、次の1週間のミーティングをしたり。どうやって1週間を回すのかを話しておくことで「これ言ったよね?」って喧嘩になることが減りました。今は、すべての予定を記録したTimeTree(タイムツリー)というアプリが命綱です。

――ご夫婦でお子さんのネタを(笑)。三姉妹にもお笑いの片鱗は見えているのでしょうか。

横澤:長女はすごくお調子乗りで、私を見ながらダンスをしたり面白いことをしたりするのが好きなんですよ。次女はアレンジが上手なので、長女がしたことをアレンジして、いかに笑わせるか、盛り上げてくれる子。三女はそんな二人の姉を見ながら手を叩いたりしてゲラゲラ笑ってくれるから、長女も次女も三女を笑わせることに必死で。すごくいいバランス。一人目はいつも「お母さん! お母さん!」と寄ってくる感じでしたけど、今は子ども同士で遊んでくれるから助けられていますね。

――ごきげんなママでいるための息抜き方法や考え方も、今すぐ真似したいと思えることばかりでした。

横澤:毎週末、1時間入浴することを「箱根」と名付けたり、2時間入浴を「熱海」と呼んだり。でも、この本を作ってみて感じたのですが、今は大変でも、後になればいい思い出になるはずなんですよね。3分前は地獄だったけど、過ぎてしまえば「なんだよ!」って笑える時もありますから。

●単独ライブや託児所は永遠の目標

――吉本の劇場に託児所を作るという目標も叶えられていて、ご苦労もあったのではないかと思います。

横澤:ネタの途中に赤ちゃんが泣いちゃって「すみません、すみません」って会場を出て行くお父さんやお母さんをいっぱい見てきて。私もベビーシッターの資格を持っているので、その時は大宮ラクーンよしもと劇場で、保育士さん三人と一緒にお客さんのお子さんを預かりました。ジャルジャルさんとCOWCOWさんも「へ~、やってるの?」と見に来てくれて、お母さんに「ジャルジャルさんとお子さんがタッチしてましたよ~」と伝えると、喜んでくださったりして。

本当は全劇場に作りたいですけど、やっぱり命を預かる場所だから、ルールが厳しいんですよね。でも、ネタ以外でも喜んでもらえるのは私たちも嬉しいし、子育て中にお腹の底から笑えることってあんまりないから、吉本と託児所のマッチングはすごくいいと思うんです。また機会があれば復活させたいですね。

――単独ライブの宣言もされていましたね。

横澤:はい。「2035年に単独ライブをする!」と。でも、今は生活することだけで手一杯だから、2040年になってしまうかも…。長い目で見て、野望は来年や再来年ではなく10年後、20年後に置いておきたい。託児所や単独ライブは永遠の目標として掲げるつもりです。

――お仕事しながらのドタバタ子育てはこれからも続きますね。どんなことを原動力にして毎日を過ごしていきたいですか?

横澤:最近は記憶も曖昧で、昨日の夕飯も覚えていないし、眠くて夕方までしか体が持たないような時もありますけど、それも含めて、もがいている今のことをちゃんと覚えておきたいです。いつか笑える時のために。懐かしい気持ちって尊いじゃないですか。だから、何年か後に思い出話がたくさんできるように。その時のために頑張るぞって、毎日自分に言い聞かせています。

取材・文=吉田あき

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