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【アリvs人間】集団迷路対決でアリ軍が勝利!

  • 2024.12.28

アリは集団行動のプロフェッショナルです。

彼らは驚くほどの統率性をもって、大きな獲物を巣に運び入れることができます。

一方で、仲間と協力する社会性の高さであれば、人間も負けてはいません。

そこでイスラエル・ワイツマン科学研究所(WIS)はこのほど、「アリvs人間」と称し、どちらが迷路の中で巨大な荷物をより効率的に運べるのかを検証しました。

その結果、集団が大きくなるほど、アリは人間よりも遥かに優れた協調性に達することが判明したのです。

迷路対決の詳しい内容を見てみましょう。

研究の詳細は2024年11月11日付で科学雑誌『PNAS』に掲載されています。

目次

  • アリvs人間!荷物をうまく運べるのはどっち?
  • 集団が大きくなるほど、アリの効率性が高くなる

アリvs人間!荷物をうまく運べるのはどっち?

アリはその高度な社会性と協調性により、地球上で最も繁栄している種の一つとなっています。

香港大学の研究では、地球上に生息するアリの総数は2京匹(1京は1兆の1万倍)に達するとの分析結果が示されました(PNAS, 2022)。

また炭素に換算した場合、アリの総重量は1200万トンになり、これは野生の哺乳類と鳥類の合計を超え、人類の約20%に相当する重さなのです。

それくらいアリは地球上で成功している種ですが、研究チームは今回、アリと人間ではどちらが集団行動の効率性に長けているのかを検証しようと考えました。

アリも人間も、自分たちより遥かに大きな荷物を仲間と協力して運搬できる数少ない生き物です。

特に少数で協力できる生物は他にいるものの、アリや人間のように大人数で協力できる生物は他にいません。

そこでチームは次のような迷路課題を用意しました。

ここでは1つの空間を仕切りによって3つのスペースに分割し、真ん中に細い通路を開けておきます。

そして一番左のスペースからT字型の大きな荷物を一番右のスペースまで運搬するという課題です。

細い通路の間を抜けるには、T字型の荷物の角度を微妙に調節したり、回転させなければなりません。

皆さんもおそらく、ソファや大きな机を移動させる際に同じ課題をやった経験があると思います。

実験ではアリチームと人間チームにまったく同じ課題に挑戦してもらい、のちにその動きを分析して、どちらが効率的に荷物を運搬できたかを調べました。

すると面白い結果が出たのです。

集団が大きくなるほど、アリの効率性が高くなる

この実験では、アリと人間を3つずつのグループに分けました。

(ちなみに対象としたアリは世界中に分布する「ヒゲナガアメイロアリ(学名:Paratrechina longicornis)」です)

まず、アリは「1匹の単独アリ」「7匹の小グループ」「80匹の大グループ」の3つ。

人間は「1人の単独」「6〜9人の小グループ」「26人の大グループ」の3つです。

また可能な限りのタスクの公平を期すために、人間チームは会話やジェスチャーによるコミュニケーション有りの条件と無しの条件の両方で行われました。

タスク終了後、チームはコンピューターシミュレーションや様々な物理モデルを使って、両者の荷物を運び切るまでの効率の良さを比較しています。

運搬の効率の良さを比較/ Credit: Ofer Feinerman et al., PNAS(2024)

その結果、事前に予測されていた通り、単独で荷物を運ぶ条件では、人間の方が戦略的にも効率的にも単独のアリより優れていました。

ところが集団の数が増えるにつれて状況は一転していきます。

人間チームは数が増えるにつれて荷物を運ぶ効率が下がっていき、特に話し言葉やジェスチャーでのコミュニケーションを禁じられて場合はその傾向が顕著になりました。

単独の場合、約80%の人が15回以内のトライ(T字ブロックを動かした回数)で運搬に成功しましたが、コミュニケーションが遮断された大グループでは、15回以内での成功率が40%以下にまでガタ落ちしたのです。

これについて研究者らは、人数が増えるにつれて自分が動きたい方向が各人でバラバラになり、進みたい方向の対立がチーム内で強くなって、統率性が低下していたからだと説明しています。

しかし対照的に、アリは数が増えれば増えるほど、運搬の効率性が高まっていきました。

アリ集団の動きを分析してみると、複数回のトライの中で見出された最適な運搬ルートが集団内の全員で共有される現象が起きていることがわかったのです。

その結果、人間の集団とは違って、全員が一定の方向に荷物を進めることができ、運搬の効率性が向上しているのだと考えられます。

研究主任のオフェール・ファイナーマン(Ofer Feinerman)氏は「アリのコロニーは実のところ、みな家族なのです」と指摘します。

「荷物を運搬する働きアリはすべて、同じ女王アリから生まれた姉妹であり、生まれながらに共通の目的意識をもっています。

そのため、アリのコロニーは共通の目的に向かって動く一種の超生命体であると考えられるのです」

アリの社会は「個」の自由を捨てて、「全体」のために動くように進化したことで、小さな体ながらもここまでの繁栄に成功できたのでしょう。

参考文献

Cooperation worked better for ants than for humans in a Weizmann Institute experiment
https://wis-wander.weizmann.ac.il/space-physics/ants-vs-humans-putting-group-smarts-test

Ants outperform humans in collective puzzles while humans struggle with groups
https://biz.chosun.com/en/en-science/2024/12/24/O3GHWTDFUZCCBOIML4MQNI64EA/

元論文

Comparing cooperative geometric puzzle solving in ants versus humans
https://doi.org/10.1073/pnas.2414274121

ライター

大石航樹: 愛媛県生まれ。大学で福岡に移り、大学院ではフランス哲学を学びました。 他に、生物学や歴史学が好きで、本サイトでは主に、動植物や歴史・考古学系の記事を担当しています。 趣味は映画鑑賞で、月に30〜40本観ることも。

編集者

ナゾロジー 編集部

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