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第23回「今日できることは明日もできる、明日できることは明後日もできるはずだった」/酒飲み独身女劇場 ハッピーエンドはまだ来ない㉓

  • 2024.12.27

ぷかぷか浮かんで、ちょっとだけ泳いでみよう。

執筆の手を止め、インターネットにヒントになる財宝が落ちていないか海を泳いでみる。

果てしなく続く海にゴールはなくて、時間感覚がなくなっていく。 5分、30分、1時間と知らぬ間に過ぎ去ってしまう。

まるで浦島太郎になった気分だ。 未来の給料と引き換えに、魔法のカードを使いZOZOTOWNで冬服をぽちっと買ってみる。

インターネットの海にも、誘惑してくる海の魔女が潜んでいるから要注意だ。 このまま沈んで戻れなくなってしまいそうな時、差し込んだ一筋の光。

築地銀だこ食べ放題の9文字。

腕を引かれるように、インターネットの海から抜け出し、気付けばわたしはイオンモールにいた。 築地と書いてあるけど、なぜか群馬発祥の銀だこが45分間、何舟でも食べ放題。ここが、人間と海の仲間たちが一緒に仲よく楽しく過ごせるようにと、王様がつくったマーメイドラグーンなのか。

帰ってから仕事もあるし、ちょっと元が取れたらそれで十分だと思っていたけれど、ねぎだこ、てりたま、チーズ明太子、とろたま明太、もちチーズ明太まで食べることができるだと…。 「宿題なんていつでもできるよ。それより今を大切にしなきゃ」というまる子の言葉を思い出す。

「全種類ください!」

そして数分後には、机を埋め尽くすほどのたこ焼が大集合していたのだった。 王道のたこ焼に、たっぷりかかったつややかなソースが、ありもしない太陽の光を乱反射して小惑星みたいだ。

もしかしたら、たこ焼は天体の集まりで、銀河一おいしいから銀だこって名付けられのかもしれない。 そもそもたこ焼なんて惑星あるわけないと思って、調べてみると、火星と木星の間にTAKOYAKIという惑星が本当にあるらしい。

慣れた手つきでくるりひっくり返されていくたこ焼の赤ちゃんに見惚れつつ、ひょいひょい目の前のたこ焼を口に運んでいく。 たこ焼をこんなにたくさん食べるのは、人生で初めてのことだ。 これぞまさに、たこ焼パーティー。

わたしも、たこ焼がつくりたくなってきた。 実は数年前に、たこ焼機を一式揃えたが、まだ一度も使ったことがない。 たこ焼パーティーをする機会に恵まれなかったのだ。

ひとりでたこ焼するのもいいけれど、うまく焼ける自信がない。 もし、失敗してしまってもバカだなぁ…と笑い飛ばしてくれる相手がいないと、惨めで悲しい気持ちになってしまいそうで、怖かった。

しかし、まん丸のたこ焼を見ていたら、すっかり忘れていた、ちびまる子ちゃんのたこ焼の回を思い出した。

『ちびまる子ちゃん』と『もものかんづめ』

まる子がお母さんになんとかおねだりして、買ってもらったたこ焼機。 家族みんなでたこ焼をつくるものの、外は真っ黒焦げで中はべちょべちょ。みるからに美味しくなさそうな失敗作になってしまう。

そこへ帰ってきたお父さんは、もったいないからと言って食べ始める。 それがなんと、もんじゃ焼きみたいで想像以上に美味しいんだとか。

お父さんが、あまりにも美味しそうに食べるもんで、ごくりと喉を鳴らすまる子たち。 実際に食べてみると、本当に美味しくて、あっという間に食べ終えてしまい、追加のたこ焼をつくりはじめることに。

すると、さっきよりも見た目が綺麗なたこ焼をつくることができたのだ。 しかし、味は普通のたこ焼で、失敗作の方がおいしかったね…となんとも言えない空気に。

失敗作だと思っていたものが、実は成功することもあるんだ。 それなら、失敗も失敗でいいのかもしれない。 熟成に失敗したワインからシャンパンが生まれたように、わたしもたこ焼界で革命を起こしてしまうかもしれないぞ。

たくさんのたこ焼もぺろりと食べ終え、積み重なった舟、ドカ食いによって頭の中では猫とまる子が小踊りしている。

気分はすっかり休日、日曜の夜だ。

夢が終わってしまったような、明日が来てほしくない憂鬱な気持ちと、寂しさが急に襲いかかる。そんな時は、家に帰ってさくらももこさんのエッセイを読もう。

たとえ、たこ焼パーティーをする友達がこれから先できなかったとしても、心を許した昔ながらの友達と、しょうもないんだけど笑ってしまうようなおしゃべりしてる気持ちにさせてくれる1冊が、わたしを強くしてくれる。

いつか友達のように寄り添える文章を書けるようになりたい、と思わせてくれたきっかけの一つでもある。

いつもいつまでも、わたしはわたしのままで

先日は、念願のさくらももこ展に行ってきた。

次の予定まで1時間あったので、じっくり展示を味わうはずが、美味しそうな香りに惹かれて気付けばカフェにいた。

「もものかんづめ」をイメージした缶詰の黄色い桃が丸ごと入っているソーダ、まん丸でたこ焼を彷彿とさせるまる子のガーン五目ちらし寿司まで注文してしまった。 白目をむいてガーンとショックを受けているまる子の中には、卵やお花の形をしたシャキシャキ、海老や穴子がたっぷり詰まっていて、食べれば食べるほど胃袋も心も満たされていく。

どんなに絶望していても、頭の中は夢がいっぱい詰まっていてポジティブなちびまる子ちゃんになりたいなと憧れる。

しかし、コジコジが「生まれた時からずっと将来もコジコジだよ」と言っていたように、さくらももこさんは人生の本質に気付かせてくれる。

わたしは、わたしであり続けるしかない。 すぐ弱音を吐いたり、現実逃避してしまうところも受け入れて、生きていくしかないのだ。

大好きな作品やおいしい食べ物やお酒に手を差し伸べてもらって、今日も地に足ついて生きている。

食い意地を張ってしまったせいで、ゆっくりと会場を見渡している時間がなかったので、泣く泣く分厚い図録を買って、家でゆっくり鑑賞しよう。 そして、帰宅後に本を広げようとしたら中から出てきたのはしぞ〜かおでんだった。

どうやら、間違えておでんを買ってしまったようだ。 突然のおつまみ発見で嬉しいような、何やってんだよと言いたくなるような、おかしさでいっぱいになる。

「あんたバカだねぇ」というまるちゃんの声が聞こた気がした。

くつくつ鍋で煮立たせたおでんを、はふはふ、あちあちと食べていると、年終わりに向かう季節を感じることができる。

しみしみの大根にかぶりつき、優しすぎる黒はんぺんに包み込んでもらおう。 哀愁感じる出汁を飲むと、もうすぐ1年が終わってしまうのかと切ない気持ちにさせられる。 その一方で、わたしのことを睨むように積み重なっている提出物の富士山。

今年中には、今を大切にしすぎた結果、溜まりに溜まった提出物たちをなんとかしないとな…。 これを読んでいるということは、提出物の山も高尾山くらいの標高になっているに違いない。

遊んで食べて寝るだけの正月を目指して、もう一踏ん張り。 魔法だと思っていたカードの支払いに備えて、はたらくぞ。

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