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買収騒動の【セブン&アイ】、【ロピア】の快進撃! スーパー業界の勢力図2024

  • 2024.12.27
買収騒動の【セブン&アイ】、【ロピア】の快進撃! スーパー業界の勢力図2024の画像1
セブン&アイから切り離されたイトーヨーカドー(写真:サイゾーウーマン)

食品スーパーに関する疑問や消費者が知らない裏側を、創業105年にあたる2017年に倒産した老舗スーパー「やまと」の元3代目社長で『こうして店は潰れた~地域土着スーパー「やまと」の教訓~』(商業界)の著者・小林久氏に解説してもらいます。今回は「スーパー業界2024年の3大ニュース」を振り返ります。

目次

・スーパー業界2024年の3大ニュース
・①セブン&アイホールディングスの買収騒動
・②ロピアの快進撃
・③セルフレジ&キャッシュレス決済の進化

2024年の食品スーパー業界の注目ニュースベスト3

食料品の値上げが止まらず、家計を直撃したこの一年も残りわずかとなりました。おせち材料などお正月の買い出しで賑わう年末年始は、スーパーにとって年間で一番の稼ぎ時でもあります。

今年もスーパーやコンビニ業界ではさまざまなニュースがありました。今回は私が感じた「スーパー業界今年の3大ニュース」をわかりやすく解説します。

食品スーパー業界の注目ニュース①セブン&アイホールディングスの買収騒動

このところ業績が振るわず、経営再建のために不採算店の閉店を加速させてきた「イトーヨーカドー」。この会社は「セブン&アイ・ホールディングス」(以下、セブン&アイHD)という会社の傘下にあります。

ほかにも「ぴあ」や「赤ちゃん本舗」「セブン銀行」「ロフト」など関連企業がありますが、中でも一番業績がいいのが「セブン-イレブン」です。

このコンビニシェア世界第1位のコンビニ「セブン-イレブン」が欲しくて、カナダの同第2位のコンビニチェーン「クシュタール社」が、親会社であるセブン&アイHDごと買収を提案してきました。成立すれば世界最大のコンビニチェーンが誕生することになります。

「イトーヨーカドー」を切り離した

コンビニは今や日本中に広がり、「物を買う」だけでなく「税金や公共料金の支払い」「住民票や印鑑証明書の取得」「非常時の防災拠点」など、地域になくてはならない「インフラ産業」ともいえます。

そのためヨーカドーの創業家や支援先の銀行、利害関係のある商社が束になって、この外国資本の買収を阻止するために「自分たちが会社を買い取ります!」と目下攻防を繰り広げています。その双方の思惑から買収価格は吊り上がり、当初の4兆円から、今では9兆円とも……。

経営母体が変わることに不安を覚えるフランチャイズオーナーもいることでしょう。そんな折、セブン&アイHDは、「イトーヨーカドー」など食品スーパー事業およびロフトをグループから切り離し、新たに「ヨーク・ホールディングス」として独立させました。これにより、セブン&アイHDはコンビニエンスストア事業に集中するとのことです。

今回の買収騒動では国からも「日本の重要な産業に対する外資の買収について慎重に対応する」旨の意見も出ました。利益を優先する外資の方針で、不採算店の閉鎖が続けば、コンビニしかない田舎のお客さんは困ってしまいます。全国に約5万5,000店舗、その内およそ2万1,000店舗のセブン-イレブンの未来はどうなることでしょう。

食品スーパー業界の注目ニュース②ロピアの快進撃

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ロピア外観(写真:サイゾーウーマン)

セブン&アイHDは、かつてのスーパーの雄「イトーヨーカドー」を本体から切り離す決断をしました。このままグループ会社の中に置くより、他企業やファンドに経営を任せて再建したほうがいいとの判断でしょう。人手に渡すためは、全国にある不採算店の閉鎖を進めなければなりません。

その空き店舗に積極的に出店していったのが、川崎市に本社がある「OICグループ(オイシーグループ)」が運営するスーパーマーケットチェーン「食生活♡♡ロピア」(読み:しょくせいかつラブラブロピア)です。

ヨーカドー跡地のほか、各地のヨドバシカメラの店舗内や、大型ホームセンター「ビバホーム」を運営するアークランズと業務提携して共同出店するなど、「今がチャンス!」とばかり積極的に出店を加速しています。社長が元フジテレビアナウンサーの「カトパン」こと加藤綾子と結婚したことでも話題になりました。

拡大路線に備えて、外食や貿易・卸売りまで自社でまかなうほか、日本でいちばんテレビに出ている社長の「スーパーアキダイ」や、有名洋菓子店「トシ・ヨロイヅカ」を買収し、人材を含めた新しいパワーをどんどん取り入れていく姿勢にも伸び盛りの勢いを感じます。

支払いは現金のみの低価格販売

ロピアは「肉の宝屋」が発祥であることから、精肉部門やSNS映えする惣菜の支持が高く、「日本版コストコ」とも言われるような、日本の家庭にちょうどいい大容量パックが人気。そして「支払いは現金のみ」のメリットを生かして低価格販売を実現し、その売り上げは年間5,000億円にも迫る勢いです。

さしずめスーパーの店内に「商店街」を丸ごと配置したようなアミューズメント感、ロピアの店舗がない地域から「是非出店してほしい!」との声がとどいています。この勢いはしばらく止まりそうになく、業界の勢力地図が変わりそうです。私には、あのジャスコがイオンに代わってヨーカドーに迫っていった時の光景が目に浮かびます。

食品スーパー業界の注目ニュース③セルフレジ&キャッシュレス決済の進化

「レジ担当者はお店の顔、丁寧な接客でおもてなしを!」このようにスーパーは競って接客に力を入れてきた歴史があります。お客様もなじみの従業員とのちょっとした会話は楽しいものでしょう。

コロナ禍以降、「非接触」の推進と人手不足の影響から、スーパーではお客さん自身がバーコードをスキャンする「セルフレジ+キャッシュレス決済」が一気に普及しました。

お客さんも慣れてしまえばセルフレジのほうが便利ですが、機械に慣れない高齢者やたまにしかスーパーに行かない人にとっては面倒くさい作業ともいえます。セルフレジには必ず優しく教えてくれるスタッフもいますが、手を煩わせるのも気が引けます。

スーパー側も高価なレジシステムを導入したのに、「介添え」する従業員を付けるのは人手不足解消とは逆行します。

では、いったいセルフレジは今後どうなっていくのか? 理想は「ユニクロ」のように、商品が入ったカゴごとレジに置けば、瞬時に会計が済むシステムでしょう。しかし現実的なラインでは、レジ担当者が商品をスキャンして、お客さんがキャッシュレスまたは現金で支払って帰る、という「セミセルフレジ」が主流になっていくのではないでしょうか。

外食店ではセルフレジの使い方がわからず、店員に暴力を振るった事件も発生しています。また海外のスーパーではセルフレジのトラブルが多発したため、対面レジに戻す流れさえあるようです。

ただ、技術の進歩で今後は間違いなくセルフレジが主流になるでしょう。今はまさにその過渡期。AIレジがあなたに話しかけてくる日も近いと思います。便利さを享受するには、使う側の努力や慣れも必要です。これから出てくる新しいシステムを毛嫌いせず、自らその流れに乗っていきましょう!

24年は、これ以外にも「令和の米騒動」や「ディスカウントドラッグストアの台頭」など、スーパー業界を取り巻く状況が大きく変化した1年でした。25年も生活に直結する業界の変化に注目していきましょう。

小林久(元スーパーやまと社長)
1962年山梨県韮崎市生まれ、山梨県立韮崎高校、明治大学商学部卒。山梨県に最盛期16店舗、年商64億円を稼いでいた創業105年の老舗スーパー「やまと」の元3代目社長。先代からの赤字経営を引き継ぎ「破綻スーパー再生」を軸に短期間で業績を回復した。2014年頃から大手資本の進出により次第に経営が悪化、17年12月に倒産。自身も自己破産へ。自身の失敗から得た教訓を企業にアドバイスしている。著書『こうして店は潰れた~地域土着スーパー「やまと」の教訓~』(商業界)『続・こうして店は潰れた』(同文舘出版)。

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