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家族から虐げられ、追放された少年が山奥で自由気ままなスローライフ! 現代知識と万能スキルで森を切り拓く

  • 2024.12.27
ダ・ヴィンチWeb
『追放令息のゆるり辺境山暮らし 〜未開の山奥に飛ばされましたが、万能スキル【アイテム錬成】で開拓したら、理想の領地になりました〜』(ぼっち猫:著、Ruien:イラスト/スターツ出版)

日常に疲れたとき、ふと社会の喧騒を離れて自然に抱かれたくなる。木々の間にテントを張り、湧き水で喉を潤し、焚き火でご飯を作り、星空を眺めながら眠りにつき、小鳥のさえずりで目を覚ます。日々の忙しさや余計なしがらみを捨てて無心になれるのがアウトドアの魅力だろう。

『追放令息のゆるり辺境山暮らし 〜未開の山奥に飛ばされましたが、万能スキル【アイテム錬成】で開拓したら、理想の領地になりました〜』(ぼっち猫:著、Ruien:イラスト/スターツ出版)は、追放された貴族の少年がそんな山暮らしを始める異世界ファンタジー。豊かな自然の中でたくましく成長していく主人公の姿に引き込まれる。

主人公のリースハルトは伯爵家に生まれた穏やかで優しい5歳の少年。しかし妾の子として家族から虐げられ、メイドのスイと共に人里離れた山奥へと追放されてしまう。幼い少年と少女だけではすぐに行き倒れてしまうかと思いきや、リースは誰にも秘密にしていたが異世界転生者であり、この世界でも希少なスキル持ちだった。前世で培った現代知識とスキルを駆使して森を切り拓き、自由気ままな山暮らしを始めていくのだ。

何も持たされずに身一つで山奥に放り出されたリースだが、素材からさまざまなアイテムを作り出すスキル【アイテム錬成】を活用して生活基盤を整えていく過程が楽しい。その場にある石や木で家やカマドを作り、食器を作り、服を作る。自らの手でゼロから生活を築き上げていく展開が、いわゆる「箱庭ゲーム」のような没入感を与えて、「自分ならどうするだろう?」「これがあればアレが作れるんじゃないか?」と想像力をかき立てられる。

また、山の幸を工夫して料理を作る場面も見どころだ。山の中で食材を探すだけでなく、畑を耕して収穫した野菜たちも使ってレシピを考える。枝豆と卵の塩スープ。キャベツにトマト、じゃがいものポテトサラダ。摘みたてのプラムのジュースなどなど。決して贅沢な料理ではないが、苦労しただけに味は格別だ。食事シーンからは自然と生きる喜びや、努力が実を結ぶ達成感が伝わってくる。

山暮らしといっても孤独ではない。メイドのスイだけでなく、お喋り好きな妖精たちや、可愛いオコジョ、人懐っこいスライムなど、山の生き物が遊びにやってくるし、作ったものを街の商人へ売りに出かけたり、移住希望者を受け入れたりと、周囲との繋がりも少しずつ広がっていく。ふたりだけの山奥の暮らしが、村として発展していく様子をほのぼのと眺めていられる。

山での暮らしは仕事や時間に追われないその日暮らしの生活だ。何をするにもどこへ行くのも自分の自由である一方、苦労や責任も伴う。食べ物を探したり、ときに魔物と戦ったりと困難も多いが、それすらも楽しんでしまうリースの姿がたくましい。そして一日の終わりに「今日も楽しかったな」と笑顔で眠りにつく。そんなリースの生き方こそ、本来、人間らしい生活なのではないだろうか。

インターネットで世界中から買い物ができるし、電子レンジで数分でご飯ができる便利な世の中だ。しかし、本作を読むと現代人が便利さと忙しさの中で失ってしまった「心の豊かさ」や「自らの手で作る喜び」に気づかされる。そんな自然と共に生きるという古くて新しい生き方の素晴らしさを、リースの物語が教えてくれた。

文=愛咲優詩

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