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タダで成績が上がり、うつ症状が改善し、幸福度が爆上がりする…世界の研究が証明した「感謝」の驚きの効用

  • 2024.12.27

「感謝をすると全てうまくいく」と謳う自己啓発本やスピリチュアル本は多いが、それは科学的に正しいのか。精神科医の樺沢紫苑さんは「信頼できる実験の数々から『感謝の気持ちを持つこと』のさまざまな効果が報告されている。ネガティブな感情を減らし、心の健康を促進することで幸福度も上がるとの報告もある」という――。

※本稿は、樺沢紫苑・田代政貴『感謝脳』(飛鳥新社)の一部を再編集したものです。

感謝が睡眠の質を良くする

感謝には健康、仕事、人間関係にさまざまなプラスの効果を与えることが世界中の調査で証明されています。そのうち「心の健康」、すなわち「メンタルへの効果」について見ていきましょう。

①睡眠の改善

私が著書やYouTubeで繰り返し述べている通り、健康のために最も重要なのは睡眠です。

「感謝の気持ち」は、睡眠の質、時間、寝付きなど睡眠を全般的に改善します。英国マンチェスター大学の401人に対する研究によると、感謝の気持ちを抱きやすい人ほど、主観的な睡眠の質(ぐっすり眠れたという感覚)が良く、寝付きが良く、睡眠時間が長く、日中の眠気やパフォーマンスの低下が少ないことがわかりました。感謝によって、睡眠前のポジティブな認知(前向きな考え)が増え、ネガティブな認知(否定的な考え)が減ることも観察されました。

寝る前に「不安」や「心配」などのネガティブな感情が強いと、寝付きが悪くなります。寝る前の不安で脳が過剰に興奮し、交感神経(昼の神経)が優位になるからです。

感謝の気持ちを持つことは、睡眠を妨げるネガティブ感情を減らし、リラックスをもたらすため、睡眠の改善に役立ちます。

また、ロンドン大学の研究によると、2週間の感謝日記を書く(その日あった感謝すべきことを日記に書く)ことで、ポジティブ感情の増加と、睡眠の質の改善が相関して見られました。

たった2週間、感謝を実践して記録するだけで、睡眠が改善するのです。

質の良い十分な時間の睡眠は、当然ながらメンタル疾患、身体疾患の予防や、回復に大いに役立ちます。睡眠の改善を「心の健康」に分類しましたが、睡眠を改善することで、同時に「身体の健康」も得られることは間違いありません。

青い壁とベッド
※写真はイメージです
感謝日記の効果
②ストレス、うつ、不安の軽減

香港教育大学による、医療従事者(102人)を対象とした研究では、感謝日記を週に2回、4週間書いたグループでは、ストレスとうつ症状の改善が認められました。アイルランド国立大学コーク校、65名の女性を対象とした研究では、感謝の介入(感謝の日記と感謝の振り返り)を3週間行ったところ、ストレスとうつ症状の改善が認められ、幸福度も高まりました。いずれも、RCT(二重盲検ランダム化比較試験)という強いエビデンスを示す、信頼度の高い実験方法で行われています。

感謝日記を3~4週間書くだけで、ストレス、うつ、不安が軽減するのです。

人から感謝されることで自己肯定感が高まる
③自己肯定感、自己効力感が高まる

感謝と自己肯定感は、深く関わっています。感謝の度合いが高い人ほど、自己肯定感が高い傾向にあります。

感謝日記を書くには、自分自身と向き合うことが不可欠です。結果として、自己洞察力が高まり、自分の行動や性格に、ポジティブなものを発見することで、自己肯定感が高まります。

また、自分が感謝するだけではなく、人から感謝される体験によって「自分は価値がある存在である」と認識しやすくなります。

さらに、感謝の表現が「自己効力感」を高めることが示されています。自己効力感とは、「自分ならできる」「自分なら乗り越えられる」と、「自分の能力や可能性を信頼できる力」のことです。自己効力感が低いと、「失敗したらどうしよう」という怖れが強まり、新しいことに挑戦できません。

「ありがとう」と言われる。人から感謝の表現を受けることで、自己効力感が向上し、それがさらに「行動しよう」という気持ちを高めるのです。「自分にはできる!」「今の自分で大丈夫だ!」という感覚が、あなたに前向きな行動を促し、人生を幸せに導くのです。

ビーチや島の背景に夕日の空に手を上げる女性
※写真はイメージです
人と人を結び付ける
④人間関係が深まる

感謝の表現は、新しい人間関係の形成を促進します。

感謝を表現することで、受け手が相手に対して「温かさ」や「思いやり」を感じることを助け、初対面の相手との関係形成を促進し、社会的結びつきを強化します。

「ありがとうと言われた人」や、「感謝されていると感じた人」は、自分に感謝している人との関係を深める行動もとりやすくなります。もっと親しくなりたい、と思うのです。

感謝の気持ちは親子関係や家族の幸福を向上させます。親が子供に感謝の気持ちを示すだけで、家族関係が改善し、親の幸福度が上昇した研究があります。

また、恋愛関係における感謝の気持ちは、「関係の維持」と「互いに支え合う関係性」を促進し、より交流が増え、献身的なパートナーシップにつながります。

感謝によって、他者を助け寛容で慈悲深くなる、孤立感や孤独感の軽減、外向性の向上など、人間関係やコミュニケーションを促進する、さまざまな効果が報告されています。

ポジティブな体験を記憶に定着させる
⑤レジリエンスが高まる

レジリエンスとは「心の回復力」「心のしなやかさ」のことです。

レジリエンスが高いと、ショックな出来事を体験しても、それを引きずらないで、すぐに回復することができます。職場や友人から、辛辣なことを言われたとしても、スルーできます。ストレスを真に受けずに、やり過ごす。ストレスを受けても、すぐ回復する。

「心のしなやかさ」があれば、いちいち落ち込むことも減って、メンタルを病むこともないでしょう。

米国ジョージアサザン大学の研究では、大学生48人に対して、ポジティブな体験をした後に、感謝の介入を行うと、ポジティブな感情が長く維持され、レジリエンスと自己効力感が高まりました。

感謝することで、ポジティブな体験を思い出し、もう一度体験することができる。感謝日記などで記録することによって記憶に定着する。結果として、レジリエンスを高めることができるのです。

ビジネスの働きと学習教育の概念
※写真はイメージです
やる気を高める
⑥学業成績が良くなる

感謝日記をつけることで、学習へのやる気、モチベーションも高まります。

日本の大学生84人に、感謝日記を2週間記録してもらったところ、「学習のモチベーション」が大幅に上がり、「無気力」が改善することが確認されました。感謝日記をつけた期間は最初の2週間だけでしたが、その効果は3カ月後も、そのまま維持されていました。

感謝の気持ちを実践することで、大学生は授業に集中する能力が高まり、学習上の困難に直面しても粘り強く取り組むことができました。

あきらめない、粘り強いというのも、レジリエンスの一面で、それらが学業面でも発揮される。感謝によっても学業レジリエンス(学業に対する粘り強さ)が向上するのです。

「感謝の気持ち」と「学業成績」についての研究はたくさんあり、多くの論文で「感謝の気持ち」と「学業成績」に正の相関が示されました。

感謝の気持ちが強ければ強いほど、成績が良いのです!

「感謝によって成績が上がる!」と言われても、にわかには信じられないでしょう。

しかし、前述のように、感謝をすることで、ポジティブ感情が高まり、自己効力感(自分にはできるという感覚)が高まり、モチベーションが上がり、粘り強さが高まるのですから、学業成績が高まるのは当然でしょう。

メンタル疾患の予防や治療にも役立つ
⑦メンタル疾患に効果がある

感謝することで、ポジティブ感情が増えて、ストレスが減り、うつ症状、不安症状も減ることが示されています。とするならば、感謝はメンタル疾患の予防や治療に役立つのでしょうか?

樺沢紫苑・田代政貴『感謝脳』(飛鳥新社)
樺沢紫苑・田代政貴『感謝脳』(飛鳥新社)

感謝の傾向が強いほど、うつ病、不安症、PTSD(心的外傷後ストレス障害)などの精神疾患のリスクを低減し、心理的レジリエンスを高めることが示されています。

重度のPTSDが、感謝によって中等度まで改善したという報告もあります。

「感謝日記だけやれば、すぐに症状が改善する」という簡単なものではありません。しかしながら、ネガティブ感情の強いメンタル患者さんにとって、ネガティブ感情を減らしポジティブ感情を増やすことは非常に大きな意味を持ちます。また、レジリエンスを高めることは、再発予防につながります。

メンタルヘルス評価
※写真はイメージです
幸福度が大きくアップする
⑧幸福度が高まる

感謝日記を書いたり、感謝の手紙を書いたりする「感謝の介入」によって、幸福度がアップすることが、数多くの研究で示されています。インドネシアの学生602人を対象にした研究では、感謝は生徒の幸福度に42.9%もプラスの影響を与えていました。

「感謝の介入」によって、ポジティブ感情が増し、生活満足度が向上する。ネガティブな感情、抑うつ症状が減少する。結果として、幸福度が大きくアップするのです。

これらの数多くの研究から、感謝が心の健康に役立つこと、メンタルに良いことは、間違いありません。

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