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【世界最強!?】闘犬として作出されたピットブルが恐れられる理由とは?

  • 2024.12.27
ピットブルが恐れられている理由とは!? Credit:Canva

SNSでは、よく海外の飼い主が、筋肉質でゴツいイヌ「ピットブル」の画像や動画を投稿しています。

しかし、このピットブルは、一部の国で所有自体が禁止されているほど、「危険で凶暴なイヌ」と見なされています。

では、このピットブルはどういった経緯で生み出されたのでしょうか。

またなぜピットブルはこれほどまでに人気なのでしょうか。

目次

  • 闘犬として生まれた「ピットブル」
  • ピットブルが引き起こした咬傷事故

闘犬として生まれた「ピットブル」

このSNSの投稿は、多くの人々に衝撃を与え、瞬く間に拡散されました。なぜそんなに話題になったのでしょう。

動画では小さな子供が、手に持っているペットボトルで灰色(グレー)のイヌを殴っているのが分かります。

これはイヌを怒らせ、子供が噛みつかれるかもしれない危険な行動ですが、投稿を見た人々は、イヌの犬種にも注目しています。

この叩かれたイヌは、「アメリカン・ピット・ブル・テリア」という犬種であり、単に「ピットブル」とも呼ばれます。

そしてこのピットブルは、強い闘争心と攻撃性、一度噛みつくと相手が死ぬまで離さない傾向をもつ「危険な犬種」として有名です。

だからこそ人々は、「ピットブルの頭を殴るなんて、なんて命知らずな子供なんだ!」と驚きを隠せないのです。

では、度々話題に上るピットブルとはどんな犬なのでしょうか。

アメリカン・ピット・ブル・テリア。またはピットブル / Credit:Wikipedia Commons

ピットブルは、体高45~53cm、体重15~27kgの中型犬であり、筋肉質でたくましい体つきをしています。

また短く滑らかな被毛が特徴的であり、色はブラック、グレー、ブラウン、ホワイトなどと様々です。

もともとは闘犬のために作出された犬種であり、闘犬用として輸入されたスタッフォードシャー・ブル・テリアをベースに、他の闘犬と掛け合わせて作られました。

(アメリカン・ピット・ブル・テリアに加えて、アメリカン・スタッフォードシャー・テリア、アメリカン・ブリーなど同様の方法で作出された犬種は、「ピットブルタイプ」と呼ばれています)

こうした経緯から分かる通り、ピットブルは戦うことに特化しています。

個体による違いはもちろんあるものの、戦闘態勢になるまでが非常に早く、人間や他の動物を殺傷できる攻撃性を持っています。

特にアゴから首にかけてが太く発達しており、他の犬種よりも噛みつく力が圧倒的に強いと言われています。

そして実際に、ピットブルに関連した事故がこれまでに多数生じてきました。

ピットブルが引き起こした咬傷事故

ピットブルは咬傷事故を起こしやすいと考えられている / Credit:Canva

アメリカ疾病予防管理センター(CDC)の2000年の研究では、1979~1998年にアメリカで致命傷を与えたイヌの犬種が分析されました。

調査では、この20年間に、少なくとも25種類のイヌが人間を襲い、238件の「咬傷による死亡事故」を引き起こしていると分かりました。

そしてこれら死亡事故の67%はピッドブルタイプとロットワイラーによるものであり、研究チームは、「死亡事故には犬種特有の問題があると思われる」と結論付けています。

また、アメリカのアーカンソー医科大学(UAMS)の2016年の研究では、アトランタの施設で扱われた4年間にわたる1616件の「犬の咬傷事故」が分析されました。

その結果、ピットブルタイプのイヌは、他のイヌに比べて、複数の部位を噛む可能性が2.5倍高いと報告されています。

さらに、ピットブルタイプのイヌに噛まれた子供が手術を必要とする可能性は、他のイヌに噛まれた子供の3倍でした。

近年においてもピットブルに関連した事故報告が後を絶ちません。

例えば2021年には、オクラホマ州にて、「4歳男児の腕がピットブルに噛み千切られる」という恐ろしい事件が起こりました。

また2022年には、ニューヨーク州にて、「70歳女性の顔と腕・足が、ピットブルに嚙み切られ、食べられていた」という報告も上がっています。

こうした危険性から、アメリカのいくつかの市・群、フランス、ドイツ、スペインなどでは、ピッドブルの所有が禁止されています。(日本での飼育は禁止されていません)

こうした数々の報告を知っていると、「子供がペットボトルでピットブルを殴る」という行為がどれほど恐ろしいことか、よく理解できますね。

では、これほどピッドブルの危険な情報が広まっているにも関わらず、なぜピットブルは多くの人に飼育されているのでしょうか。

それは、ピットブルの可愛らしい外見と豊かな表情に惹かれる人が多いからでしょう。

また持ち前の強さと忠誠心により、優れた番犬になる可能性を秘めているため、番犬としてピットブルを求める飼い主も少なくありません。

あるいは、「世界最強のイヌ」と言われることもあるピットブルを所有することに、満足感や優越感を感じるケースもあるのかもしれません。

さらに、「世間に広まっているほど、ピットブルは危険ではない」と考える人もいます。

実際、イヌの気質(安定性、内気さ、攻撃性、友好性など)テストでは、ピットブルタイプのイヌが全犬種の上位20%にランクインし、「介助犬、警察犬、ペットとして好ましい気質を有する」と報告されることもあります。

ピットブルは確かに危険な部分がありますが、それでも人々から好まれる性質を有しているため、飼育したいという人が後を絶ちません。

もし、ピットブルを飼育したいのであれば、良い点と危険な点の両方を把握し、しっかりと対策しておくべきです。

参考文献

Pitbulls Achieve Excellent Temperament Scores
https://www.pitbullinfo.org/pit-bulls-temperament-scores

元論文

Breeds of dogs involved in fatal human attacks in the United States between 1979 and 1998
https://doi.org/10.2460/javma.2000.217.836

Characteristics of 1616 Consecutive Dog Bite Injuries at a Single Institution
https://doi.org/10.1177/0009922816657153

ライター

大倉康弘: 得意なジャンルはテクノロジー系。機械構造・生物構造・社会構造など構造を把握するのが好き。科学的で不思議なおもちゃにも目がない。趣味は読書で、読み始めたら朝になってるタイプ。

編集者

ナゾロジー 編集部

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