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【賛否】黒島結菜「事実婚で出産」が話題に…「未婚の母」「選択的シングルマザー」に法的なメリットはあるのか

  • 2024.12.27
黒島結菜さん(2019年12月、時事)
黒島結菜さん(2019年12月、時事)

2024年1月、俳優の黒島結菜さんが、パートナー関係にある俳優の宮沢氷魚さんとの間に第1子を妊娠したことを発表。同年7月に出産を報告しました。2人は妊娠発表時、「お互いに入籍という形にはこだわっておらず、現時点では籍を入れる予定はありません」と事実婚を選んだことも公表しており、黒島さんがいわゆる「未婚の母」を選択したことに、SNSでは驚きの声が多数上がっていました。

昨今は芸能界だけでなく、自らの意思で「未婚の母」「選択的シングルマザー」として、あえて未婚のまま子どもを産み育てる女性が増えています。一方で、「未婚の母」を選択することに対しては、SNSなどを中心に依然として賛否が分かれており、「なんで籍入れないんだろう」「デメリットしかなくない?」「子どものことを考えたら、そう簡単に未婚を選べるものじゃない」「親の自分勝手な判断に振り回されるのはいつも子どもだよ」「未婚だからこそのメリットもあると思うよ」「これからの時代は、家族の形もいろいろあっていいのでは」など、さまざまな意見が聞かれます。

常に賛否ある「未婚の母」の選択について、佐藤みのり法律事務所の佐藤みのり弁護士は「結婚しないまま出産すると、父子関係が不安定になる」と指摘します。法的に見た「未婚の母」のメリットとデメリットについて、詳しくご解説いただきました。

父親による「認知」がない限り…

結婚していようがいまいが、出産することにより、母子関係は明らかです。しかし、「父親が誰であるか」は必ずしも明らかではありません。

そこで、法は「婚姻中に妊娠した子は夫の子と推定する」、また、「婚姻前に懐胎した子であって、婚姻が成立した後に生まれたものも、同様とする」(民法772条1項)というルールを定めています。これにより、結婚後に妊娠・出産した場合、「夫が父親」と推定され、戸籍の父親欄には夫の氏名が記載されます。また、妊娠してから結婚する、いわゆる「授かり婚」の場合も同様に、「夫が父親」と推定されます。これらの場合に、父子関係を争うには「嫡出否認の訴え」を起こさなければならず(同775条)、この訴えは、原則、出生から3年以内に提起しなければなりません(同777条)。従って、結婚してから出産すると法的な父子関係は早期に安定します。

これに対し、結婚しないまま出産した場合、戸籍の父親欄は空欄になり、父親による「認知」がない限り、法的な父親は不在となります。認知がなければ、父親には法的な扶養義務がないため、養育費の支払いを法律上の権利に基づいて請求することができず、子どもは父親の法定相続人にもなれません。父親が認知しない場合、裁判所の手続きにより、強制的に認知を求めなければなりませんが、父が死亡して3年経過すると認知の訴えを提起できなくなります(民法787条ただし書き)。このように、結婚しないまま出産すると父子関係が不安定になります。

父子関係の安定は「子の福祉にかなう」

結婚をする選択、しない選択は人それぞれの理由があると考えられるので、出産・育児をする上での法的なメリット/デメリットの捉え方は人によって異なるでしょう。例えば、夫婦別姓を貫きたい場合、母親・父親には結婚しないメリットがあると思います。

先述した「父子関係の安定性」に関する考え方もさまざまです。早期に父子関係を安定させることを重視する母親・父親にとっては、結婚してから出産するメリットが大きいですし、一般的には、父子関係の安定は子の福祉にかなうと考えられるため、子どもにとってもメリットになると思います。

一方、法的な父子関係を生じさせることによって、逆に、子も父親に対して扶養義務を負うことになりますし、法定相続人になることで、父親の借金を相続してしまうことも考えられます。こうした父子関係をデメリットと受け止める人にとっては、「結婚も認知もしない」という選択がメリットに感じられるでしょう。

また、「認知さえすれば、法律上の父子関係は認められるのだから、結婚はしなくてよい」と考える母親、父親もいるでしょう。2013年12月より、相続分について、結婚している親から生まれた子と結婚していない親から生まれた子との間にあった不平等が解消され、子にとっても、親が結婚しないことによる法律上の明らかなデメリットはなくなっています。

一方で、「未婚の母」として子どもを育てていく場合、養育義務や金銭面(養育費や生活費など)に関してどのような取り決めがなされるのか、疑問に思う人もいると思います。

このような場合は「認知して、法的父親を確定する」ケースが多いのではないかと思います。認知があれば、父親は扶養義務(子が父親自身の生活と同程度の生活を送れるようにする義務、民法877条1項)を負うことになります。

その上で、父母で養育費の金額について協議します。双方が合意すれば、金額はいくらでも構いませんが、協議が調わない場合、家庭裁判所で決めてもらうことになります。家庭裁判所は父母の収入に応じた養育費の相場表を作っており、この表から大きく外れない金額に決まることが多いです。父母の収入にもよりますが、月額4万~6万円程度に決まるケースが多いのではないかと思います。

なお、認知しないままでも、父母で話し合い、「血縁上の父親が任意に養育費を支払う」という合意もできます。

昨今、芸能界を中心に「未婚の母」を選択するケースが多く聞かれるようになりました。それに伴い、ネット上でも「経済的に何とかなるなら私もそうしたい」という声がある一方で、「子どものことを考えると、カジュアルに『未婚』を選択すべきではないと思う」との声も少なくなく、依然として賛否が分かれている現状があります。

結婚や妊娠、出産、家族の在り方については、さまざまな価値観が存在します。また、それぞれが置かれている状況もさまざまで、母親・父親にとっても、子どもにとっても、どのような選択がよいのかはそれぞれ異なるものだろうと思います。

私自身は「父子関係の安定は、子どもにとって大切なものだろう」と考えており、結婚してから妊娠・出産しました。母親、父親となる人は、自身の価値観や生まれてくる子どもの幸せと真剣に向き合い、それぞれが自由に選択することが大切だと思います。

オトナンサー編集部

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