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VOGUE BEAUTY NEXT共催の青山学院大学が育む「美しい人」とは? 華やかさの背景にある社会課題への探究とアクション

  • 2024.12.26
左から、青山学院大学2年の村吉姫氏、地球社会共生学部学部長の松永エリック・匡史教授と、『VOGUE JAPAN』のヘッド・オブ・エディトリアル・コンテンツのティファニー・ゴドイ。
左から、青山学院大学2年の村吉姫氏、地球社会共生学部学部長の松永エリック・匡史教授と、『VOGUE JAPAN』のヘッド・オブ・エディトリアル・コンテンツのティファニー・ゴドイ。

VOGUE(以下、V) イベントを開催するにあたり、青山学院大学の学生たちとは事前に度々意見を交換し、ワークショップやトークセッションを通して交流する機会を多くいただきました。普段から社会をより良くしていこうと考え行動しているからこそ、学生の皆さんから発せられる言葉は核心をつくものがあると感じました。「美しい人」とは、どのようにして育まれていくと思いますか?

稲積宏誠学長(以下、稲積学長) 難しい質問ですね。私の印象ですが、政治思想とはまたちょっと違った意味で、本学はリベラル、つまり個の理性にしたがって自由に振舞うことや多様性を許容するカルチャーが根付いています。そこがある種の豊かさに繋がっていると思います。世間では本学の表面的な華やかさに注目されがちですが、学生たちの内面的な美しさ、懐の深さ、多様性を受け入れる姿勢などが、今回のイベントを通じて感じていただけのではないでしょうか。

松永エリック・匡史教授(以下、エリック教授) キリスト教信仰にもとづく青山学院のスクールモットーである「地の塩、世の光」に、その答えがあると思います。聖書にあるこの言葉は、「地の塩」として周囲に尽くし、「世の光」として他者を導き、地道な努力を重ねることによって社会に良い影響を与え光り輝く、という意味を持っています。学生たちは表面的に「光ろう」とするのではなく、社会のためになる努力が自然と結果として現れているのです。それが青山学院ならではの美しさだと思います。

女性の健康課題と働き方に関する三菱電機とのトークセッションに登壇した、青山学院大学4年の野本葵氏、3年の逢坂華怜氏。
女性の健康課題と働き方に関する三菱電機とのトークセッションに登壇した、青山学院大学4年の野本葵氏、3年の逢坂華怜氏。

V 「Inner self(内面)」と「Outer self(外面)」を通して、美について探求することが今回のイベントの大テーマとしてありました。教育の現場でこれらのテーマにフォーカスすることの重要性をどのように感じていますか?

エリック教授 地球社会共生学部のゼミ生の中にはルッキズムを研究している学生もいて、アウターセルフに偏った美への考え方は世界的にも重大な社会問題となっています。そのため、内面の美しさや本質的な多様性を追求することが今こそ求められています。青山学院の教育では、こうした社会課題に積極的に取り組みながら、「新しい美」を定義するタイミングにきていると感じ、大学が果たせる役割は大きいと思います。

稲積学長 内面の美しさをどのように育んでいくのか、また表面的には見えないところにどのような課題があるのかということを議論することの重要性が、学内でも認知されています。たとえば、2021年には青山学院大学附置スクーンメーカー記念ジェンダー研究センターを開設しました。青山学院女子短期大学において行われていたジェンダー研究を受け継ぎ、青山学院における女子教育の伝統を新しい時代に継承するとともに、キリスト教精神に基づいた、本学におけるジェンダー研究の遂行及びジェンダー教育の発展を通じて、青山学院及び社会におけるジェンダー平等及び性の多様性の尊重に貢献する目的で設置しました。また本学では、学部・学科を問わず、ジェンダー、セクシュアリティに関連する科目が数多く開講し、学生の社会課題解決への意識を高めています。このような背景からも本学で開催した今回のイベントというのは、非常にフィット感があるものになっているのではないかなと感じています。

オープニングの司会を務めた村吉姫氏。
オープニングの司会を務めた村吉姫氏。

V 今回のイベントでは、学生や教員、企業やメディアとさまざまな立場の人が交わりながら、社会に必要なアップデートについて議論することができました。そこにどのような価値があると感じましたか。

稲積学長 正直なことをいうと、私の非常に古い昭和の感覚では、大学というのは、アカデミアという立場で学問を純粋に探究する機関だという考えが根底にあるため、以前は営利を追求する企業やメディアとのコラボレーションに戸惑いがありました。ですが、時代は変わり、企業はCSRやSDGsなどと利益追求型だけでは成り立たないという認識を持っていて、メディアも社会的な価値に重きをおいた情報発信をしています。大学もアップデートが必要で、ボーダレスに受け入れ、その中でアカデミズムの位置付けを考えることは必然だと思っています。

エリック教授 企業との関わりを通して、また別の収穫もありました。当初、学生たちは企業の表面的なイメージに引っ張られがちでしたが、本イベントの協賛企業である三菱電機が女性の健康と働き方という難しい課題に取り組んでいたり、シュウ ウエムラがデジタル依存の予防に心血を注いでいたり、企業は使命感をもって社会貢献活動に注力されていることに驚きと気づきがあったようです。ですから、このようなイベントは一回だけの打ち上げ花火に終わらせずに、ここからアクションへとつなげることがすごく大事だと思っています。学生たちはイベント終了後、早速話し合い、実は来年に向けて新しいプロジェクトがすでに走り出しています。

デジタル依存の予防に関するシュウ ウエムラのトークセッションに参加した、青山学院大学4年の大参晟也氏。
デジタル依存の予防に関するシュウ ウエムラのトークセッションに参加した、青山学院大学4年の大参晟也氏。

V イベントをともに企画していくにあたり、こだわった点はどのようなことでしたか?

エリック教授 ひとつは、私のゼミや地球社会共生学部だけに止まらず、他の学部とも柔軟に連携したことです。たとえば、シュウ ウエムラのセッションでは、デジタル依存の問題を扱う上でその専門性が欠かせないと感じ、IT分野の最前線の研究を行う社会情報学部に協力を依頼しました。ある種ハードルでもあった学部という垣根を超えた連携が、よりシームレスなものとなるきっかけになったと実感しています。

また、もうひとつ隠れたこだわりというのが、活字文化へのリスペクトです。ソーシャルメディアが乱立する現代で、『VOGUE』が活字を使った美の追求をしているところに、私は共感しています。そこで『VOGUE』による美に関する選書コーナーを設け、学生たちが本を手に取り、再び活字に触れる機会を持てたことも重要な要素だったと感じています。

V 青山学院が創立150周年を迎えるタイミングで本イベントを開催したことについて、青山学院大学の歴史や使命、そしてこれからのビジョンというところとどのように結びついていると感じますか。

エリック教授 青山学院創立150周年に本イベントが開催されたのは、偶然のようで必然ともいえると感じています。青山学院の源流である3つの学校の一つであり、150年前にアメリカの宣教師であるドーラ・E・スクーンメーカーが開校した女子小学校があります。当時、男尊女卑の時代に女子教育を始めたこと自体がダイバーシティへの挑戦であり、青山学院の本質を象徴するものです。その原点と歴史を振り返りながら、大学としての未来を考える良いきっかけとなったのではないでしょうか。青山学院創立150周年を機に策定された「AOYAMA VISION 160」では、異文化理解が重要なテーマとして掲げられています。異文化を理解するには、他者との「違い」をすべて受け入れる姿勢が求められます。これが青山学院のスクール・モットーとして掲げる聖書のことば「地の塩、世の光」によって醸成され、神と人とに仕え社会に貢献し、他者を導く人を育成し、社会全体や世界規模の課題解決、そして平和な世界につながるものだと思っています。

稲積学長 この節目の年にオープンした「マクレイ記念館」を活用してイベントを実施したことにも非常に大きな意義がありました。この記念館は20年以上前から構想されていた「大学図書館」「情報メディアセンター」「アカデミックライティングセンター」を集約した総合的な学術情報施設です。青山学院大学が単なる学問の場にとどまらず、より社会に開かれた大学を目指していることを強く表しています。そして、大学としては、より社会に貢献できる、学生が「地の塩」を体現できる人となるべく、対外的な取り組みも積極的に導入していきたいと強く感じました。

Photos: Kaori Nishida Text: Mina Oba Editor: Kyoko Muramatsu

特設サイト/https://events.vogue.co.jp/beautynext

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