重要文化財・旧朝香宮邸のアール・デコの装飾空間を照らし出す新たな光
東京都庭園美術館で開催中の「そこに光が降りてくる 青木野枝/三嶋りつ惠」[2024年11月30日(土)~2025年2月16日(日)]を見て来ました。
重要文化財・旧朝香宮邸(本館)と新館展示室に、現代美術作家として活躍する青木野枝(あおきのえ)と三嶋りつ惠(みしまりつえ)の作品が展示され、アール・デコの装飾空間を新たな視点で照らし出します。
※本展会期中は、写真撮影が可能です(一部の資料・映像・展示を除く)。撮影の際はホームページに掲載されている諸注意を必ずご確認いただき、館内スタッフの指示に従ってください。
青木野枝と三嶋りつ惠の作品が作り出す現代アートの新たな表現空間
アール・デコ様式の旧朝香宮邸を、新たな表現空間として見せてくれた青木野枝と三嶋りつ惠の2人の現代美術作家。
青木野枝は、東京都生まれで埼玉県在住。 当初から鉄を素材にした抽象彫刻を制作してきた彫刻家です。切り出された円や線のパーツを展示空間に合わせて繋ぎあわせた作品を発表しています。 本館の大広間や大食堂、新館の展示室に展示された青木の大型の作品は圧巻です。
三嶋りつ惠は、京都府生まれで、現在は1989年に移住したイタリア・ヴェネツィアと京都の2拠点生活。 千年の歴史を持つヴェネツィア・ムラーノ島のガラス工房職人とのコラボレーションにより作品を制作しています。 その場のエネルギーを汲み取り、ガラスの形や輝きに変えて展示される三嶋の作品は、その周囲の空気をも変化させると言われています。
2人の現代美術作家が作品に込めた旧朝香宮邸へのリスペクトと創造への情熱が、建物内の観覧者の感性を刺激し共感する空間を作り上げていました。
「そこに光が降りてくる 青木野枝/三嶋りつ惠」展 本館・旧朝香宮邸玄関風景 東京都庭園美術館
旧朝香宮邸が現代アートの新たな表現空間に
大広間《光の海》 三嶋りつ惠「私のガラスは無色透明」
本館の入口を入ると三嶋りつ惠の《光の海》により、眩く輝く空間が広がっていました。
大広間の天井の照明と展示台の下からの照明に照らされ、透明な光をたたえたガラス作品が大広間一杯に光の海を作り出していました。
三嶋りつ惠の言葉「私のガラスは無色透明です。そして周りの光や色をとらえて解き放つのです」。 透明な柔らかさで自由自在な造形表現を見せる三嶋のガラス作品は、1つ1つフォルムや光の屈折が異なっています。
まるで十人十色。1人1人が異なる個性と輝きを放つ人間の心の姿そのものを見ているよう。 千変万化する人間の心が、もし透明なガラス張りの心で、お互いに透過して見ることが出来る世界があったなら、もっと光あふれる風通しの良い世界になったかもしれないと感じさせる作品でした。
三嶋りつ惠 《光の海》 2024年 ガラス
大食堂《ふりそそぐもの/朝香宮邸―Ⅱ》 青木野枝「鉄は透明な金属」
大きな球体を成した青木野枝《ふりそそぐもの/朝香宮邸―Ⅱ》は大食堂の照明の下に展示されていました。
球体は、無数に繋がる鉄の輪の所々に色ガラスがはめ込まれています。 窓から陽光が差し込む大食堂の壁に、球体の鉄の輪と赤い色ガラスの影がステンドグラスのように映っていました。
まるで、光を通して旧朝香宮邸の建物と青木の作品が静かに会話をしているような印象的な光景に出会えました。 「鉄は透明な金属。そしていつも内部に透明な光をもっている。」は青木の言葉です。
青木野枝 《ふりそそぐもの/朝香宮邸―Ⅱ》 2024年 鉄、ガラス
妃殿下居間 三嶋りつ惠「作品のコンセプトは光」
允子妃が描いた水彩画《グラジオラス》(右)が飾られた居間に、三嶋りつ惠の《RULLO》、《MILLELUCI》(左)が展示されていました。 允子妃の居間を柔らかく照らす丸い照明の光とも呼応し合っているようでした。
「私の作品の本当のコンセプトはガラスではなく、光なのです。」「祈りのかたちは球体だと思う。そこから風景が見えてくる。」三嶋りつ惠の言葉です。
妃殿下居間展示風景 東京都庭園美術館
新館 青木野枝《ふりそそぐもの―赤》
新館の展示スペース全体を使い、表現された青木野枝の《ふりそそぐもの―赤》。
所々に赤いガラスがはめ込まれた鉄の輪が巨大なシャンパングラスのような形状で、天上に張られた鉄の輪の鎖に幾つも繋がっています。
「すべては流れていて、変わり続けている。一瞬一瞬の流れのなかで、つくり続けること、それが私の光だと思います。」と青木野枝は語ります。
青木野枝 《ふりそそぐもの―赤》 2024年 鉄、ガラス
旧朝香宮邸に降り注ぐ光とともに共有する時間と空間
東京都庭園美術館の本館・旧朝香宮邸は、晴れた日には窓から各部屋に陽光がやわらかく差し込み室内を照らし出します。
本展では、青木野枝、三嶋りつ惠の光を形にした造形表現が、旧朝香宮邸の時間と空間を共有し、刻一刻と変化する光の中で表情を変えて行くのを見ることが出来ました。 ウインターガーデンでは、窓の向こうに茜色の雲が浮かび、室内に展示された鉄とガラスの作品が夕闇に包まれていました。
東京都庭園美術館「そこに光が降りてくる 青木野枝/三嶋りつ惠」は2025年2月16日(日)までです。 是非お出かけください。
※文中の青木野枝、三嶋りつ惠の言葉は会場の「展覧会マップ」(企画・発行:(公財)東京都歴史文化財団、東京都庭園美術館 2024年)を参考にしています。
「そこに光が降りてくる 青木野枝/三嶋りつ惠」展示風景 ウインターガーデン 東京都庭園美術館
ミュージアムショップ
ミュージアムショップではgood morning calendar 2025 Green(2‚640円)、抹茶のお菓子、皇居外苑 皇薫十重二十重抹茶(小)(900円)を購入。 組み立て式のカレンダーはお部屋に置いて観葉植物のデザインが楽しめます。※価格は全て税込です。
ミュージアムショップで買いました! 東京都庭園美術館
café TEIEN(カフェ庭園)
café TEIEN(カフェ庭園)では企画展特別デザート、LUCE<三嶋りつ惠の光>~オレンジとチョコレートのムース~三嶋りつ惠の無色透明なガラス作品を再現した琥珀糖を添えて(900円)をいただきました。
三嶋りつ惠の作品を再現した透明な琥珀糖の飾りが観覧の余韻を感じさせます。
café TEIEN(カフェ庭園)の企画展特別デザート
〇東京都庭園美術館
URL:https://www.teien-art-museum.ne.jp
東京都港区白金台5-21-9
ハローダイヤル 050-5541-8600
開館時間:10:00–18:00(入館は閉館の30分前まで)
※2025年1月22日(水)・29日(水)は、フラットデー開催のため無料・割引対象者以外は要事前予約
休館日:月曜日および年末年始(12月28日-1月4日)
※ただし1月13日(月・祝)は開館、1月14日(火)は休館
・交通:JR山手線「目黒駅」東口/東急目黒線「目黒駅」正面口より徒歩7分 都営三田線・東京メトロ南北線「白金台駅」1番出口より徒歩6分 ※白金台駅のエレベーターは2番出口
〇「そこに光が降りてくる 青木野枝/三嶋りつ惠」
会期:2024年11月30日(土)~2025年2月16日(日)
観覧料:一般 ¥1,400(¥1,120)、大学生(専修・各種専門学校含む) ¥1,120(¥890)、中・高校生 ¥700(¥560)、65歳以上 ¥700(¥560)
※展覧会チケットはオンラインおよび美術館正門チケット売り場にて販売。 ただし、2025年1月22日(水)・29日(水)はフラットデー開催日のため、美術館正門チケット売り場での販売はありません。 無料・割引対象者以外はオンラインにてご購入ください。チケット販売に関する最新情報は当館ウェブサイトをご確認ください。
※( )内は20名以上の団体料金/小学生以下および都内在住在学の中学生は無料/身体障害者手帳・愛の手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳・被爆者健康手帳をお持ちの方とその介護者2名は無料、教育活動として教師が引率する都内の小・中・高校生および教師は無料(事前申請が必要)
※第3水曜日(シルバーデー)は65歳以上の方は無料 ※展覧会のチケットをお持ちの方は、庭園にも入場可
〇café TEIEN(カフェ庭園)
営業時間:10:00~18:00(入館は17:30まで)
定休日:月曜日、及び美術館休館日に準ずる ※美術館営業時間に準ずる
お問い合わせ先:03-6721-9668
〇Museum Shop Lumière(ミュージアムショップ リュミエール)
営業時間:10:00-18:00(入館は17:30まで)
定休日:月曜日、及び美術館休館日 ※美術館営業時間に準ずる
お問い合わせ先:Museum Shop Lumière(ミュージアムショップ リュミエール)
TEL 070-1534-4878