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男嫌い処女が恋愛指南を求めたのは同級生の腹黒女。迷走するアラサー女性たちのエンパワメント物語

  • 2024.12.26

「私、このままでいいの?」漠然とした不安や焦りを、年齢を重ねた女性なら一度は感じたことがあるのではないだろうか。

『地獄の三十路録』(結木万紀子/KADOKAWA)は、ふたりのアラサー女性の生きづらさと成長を描いた物語だ。

名門私大を卒業し、大手企業に勤めるバリキャリの椚木(くぬぎ)。男性に負けたくない思いで必死で仕事をしてきた。おかげでアラサーにして恋愛経験もなく処女。

かたや、自身の容姿や環境を武器にイージーモードで渡り歩くゆるふわ女子の同級生・八熊(やくま)。飲み会の席で“やらかし”てしまった椚木に、八熊は涼しい顔でこう尋ねる。

「椚木ちゃんってまだ処女なの?」

八熊から椚木へのこんな一言をきっかけに、正反対なふたりの“恋愛模索道”が始まっていく。

八熊のアドバイスのもと「1年以内の処女卒業」を目標に動く椚木。しかし焦りとプライドから空回りを繰り返す。そんな椚木を密かに笑う八熊だったが、彼女の不安や劣等感も随所に顔を出す。

本作は女性の生きづらさを多角的かつリアルに描き、キャラクターへの共感度が高い。仕事、結婚、恋愛、セックス、親との関係など、アラサー女性がぶつかる多くの壁が赤裸々に描かれている。

しかし、それは決して女性だけの問題として矮小化されていない。劣等感を抱えこじらせて生きる男性キャラクターも描かれることで、現代社会における性別を超えた生きづらさにも光が当てられている。

自分が嫌いだと思う相手には、自身のコンプレックスが隠れているもの。

お互いに嫌い合っている椚木と八熊の掛け合いは、毒舌を交えながらも時に愛おしさを感じさせる。表面的な対立の裏に潜む共通点や、互いを認め合おうとする微かな変化がリアルに描かれ、読者の心を掴んで離さない。

椚木側のストーリーが中心の1巻から、腹黒さがある八熊側のストーリーが描かれる2巻へと話は進み、それぞれが自身の問題や焦りと向き合い、自分の道を見つけていく。

彼女たちが成長していく姿に、きっと自分自身を重ね合わせてしまうはず。果たしてこの世は地獄なのか。それぞれがたどり着く答えとふたりの関係をぜひ見届けてほしい。

文=ネゴト / Ato Hiromi

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