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サッカー元日本代表・中村憲剛さん、パートナーやママ友関係に悩んだ時の「こころ」のあり方とは

  • 2024.12.26

J1リーグ3回優勝、最優秀選手賞、十余年にもわたる日本代表MF…輝かしい数々のタイトルに彩られた中村憲剛さんのサッカー人生ですが、中学時代は無名、川崎フロンターレにはテスト生として参加するなど、必ずしも順風満帆ではなかったいわゆる「非エリート」。トップ選手となり40歳で引退するまで、どのように心を磨き、鍛え、整えて、自分の人生を都度高めてきたのか―――。憲剛さんの思考とチームドクターである木村先生の解説とのコンビネーションで40代のさまざまな悩み、心の揺らぎや不安などに生きるエールやヒントをいただきます。(第2回/第3回)

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PROFILE

中村憲剛さん
1980年生まれ。中央大学卒業後、2003年加入より川崎フロンターレ一筋でプレーし、J1通算546試合出場83得点を記録。3度のJ1リーグ優勝、個人としては15度のJリーグ優秀選手賞、8度のJリーグベストイレブン、2016年にはJリーグ最優秀選手賞も受賞、日本代表としても、南アフリカ開催のFIFAワールドカップ等で活躍。2020年限りで現役引退後、古巣の川崎FでFROに就任、2024年7月に「S級コーチライセンス」を取得。

木村謙介先生
医学博士。医療法人きむら内科クリニック理事長。Jリーグ川崎フロンターレチームドクター(内科)。慶應義塾大学医学部循環器内科非常勤講師。心と身体を同時に癒す診療が信条。引退セレモニーにおける長男龍剛君の手紙で中村憲剛に強い関心を抱く。彼の心の在り方や考え方を知り、それが悩みを持つ多くの人達の処方箋になると共著出版を提案。

©KAWASAKI FRONTALE

Part2 夫やパートナー、ママ友との関係づくりのための「こころ」のあり方

Q.サッカー選手間を潤滑にするケンゴ流コミュニケーション術、パートナーやママ友など、良い関係構築のために取り入れるとしたら…?

©KAWASAKI FRONTALE

中村憲剛さん:現役の時はずっとフロンターレにいたので移籍経験はなく、常に受け入れる側でした。なので、新卒の若い選手や移籍で入ってくる国内・外国籍の選手たちには、このチームで成功してほしい一心で、「何か困ったことがあったら言ってほしい」、「家族も含めて調子はどう?」と積極的に話しかけるようにしていました。人間、期待をかけられたらやっぱり頑張れると思うんです。相手もどうやって馴染もうかと考えているし、僕もどうやって馴染んでもらえるのかと根気強く考えていました。サッカーの内容云々もそうですが、私生活やピッチ外の不安がないほうが結果的にプレーの安定にもつながるので、そういう面を大事にして目も気も配っていました。

とはいっても、リーグ戦が始まればチーム内でもいろんな層に分かれます。試合に出る人、途中出場の人、なかなか絡めない人、怪我をしてしまった人…。チーム内が複雑化します。うまく行っているときは、ほっといてもうまく行きます。なので、何かうまくいってないな…という時に自分のセンサーを働かせて、率先的にロッカールームだったり、練習場だったりでチームメイトに声をかけるタイミングを狙っていました。うまく行ってない時や困っている時のほうが、アドバイスもしっかり刺さると思うので、そこは意識していました。逆にそれを放置してしまうと、チーム内に悪い影響が浸食してしまうんです。その選手含めみんなで勝ちたいから、どれだけ前向きな気持ちにさせてあげられるか。

身近なコミュニケーションの中でも、近くに話を聞いてくれる理解者がいるだけで状況が良くなることがあるので、悩みがあったり困っているチームメイトのことは、まず理解しようという気持ちで接していました。

木村先生はこう見る!
こんな風にチーム内で立ち回れるのですから、憲剛さんはコミュニケーションの達人ですよね。例えば、同じ会社の中に合う人も合わない人もいれば、当然ライバルもいます。けれども、そんな人に対してもハッピーになってほしい気持ちも共存している憲剛さんマインドは、ぜひマネしたいところですね。一般的に社会では、この人は合わないな…となると、ネガティブな感情ばかり大きくなりがちですが、そうならないのがケンゴ流。所属している組織への深い愛着が、個人の感情を押し流し、チームの目的のため、会社でいえば理念のため、その達成のために、メンバーひとり一人の不安にリーダーとして耳を傾け、寄り添う。その姿勢は、大小関わらず、あらゆる組織で活用できるはず。普段から、どんな相手からも学ぼうという憲剛さんの傾聴力がここでも発揮されています。

Q.生きにくい、疲れる、しんどい…心に重しや影が落ちることの少ない、朗らかな雰囲気や柔らかな空気を作るために、チーム・集団運営ではどんなことを実践していますか?

中村憲剛さん:まずは、風通しが良いチーム・組織にすることを心掛けていました。心理的安全性が確保されている組織にすることですね。例えば、複数人で話してる時に、今思っていることを発言して「何言ってんの?」と思われたら嫌だな、恥ずかしいなと感じて言いたいことを言えなくなるのは不健康だと思うんです。逆に、発言したことに対して「それいいじゃん!」と周りに受け入れてもらえれば、積極的に話がしやすくなりますよね。日本だと、「何かある人、手あげて」という時は皆何も言わないのに、後でどんどん意見が出てきますよね。そこで言えばその組織がもっと良くなる可能性があるのに、もったいないなといつも思います。

だったら今、皆が思っていることをガンガン吐き出して、それを周りがきちんと拾って、みんなで意見を出しあえる関係のほうが健康的でいいなと思います。少し前に、S級コーチライセンス取得の研修で、カナダのチームに帯同しましたが、監督をはじめチームスタッフと選手が対等に活発に議論しているんです。ちゃんと議論して話し合って、チームのことだけど自分事として捉えていました。日本でも監督と選手はミーティング中に話すことはありますが、カナダではあまりにも活発に意見を出し合い、コミュニケーションが密でビックリしました。

選手の発言に対して、監督が「ふざけんな、お前使わない」じゃなくて、「ああ、そうか、それもあるな」という対応をすることで、意見を言った選手の心理的安全性も確保されていました。さらに他の選手からも意見が続き、監督からのトップダウンじゃなく、お互い話し合った結果の「じゃあこうしよう」と着地点を決めたことで両者に責任感が生まれていました。積極的に議論され、いい方向に向かっていくのが印象深かったです。「発問」というんですが、選手に質問をすることで選手自らが考えて答えようとする力を起こさせるもので、組織の長、この場合監督がそういう空気感を作る、ミーティングの空気感、風通しのいい雰囲気を作るというのはとても大事なことだな、と改めて実感しました。

木村先生はこう見る!
ネガティブな要素の会話の中において、憲剛さんが言うように、話しをまとめるリーダーが存在するという前提で、先輩後輩、上司と部下など縦関係の構造が、議論中には崩れてフラットになってる組織は発展すると思いますね。発言する事にストレスを感じないようになると、皆が自分事として真剣に考えるようになる。すると、全員が参加して、みんなで創っている感じがするのではないかな。自分が生かされる環境であるっていうのが、最も心理的安全性の高い組織だと思います。

周囲の人々との関係性にしんどくなった時の処方箋!

ケンゴ思考×内科医のコンビで、トップアスリートの思考法やメンタルチューニング術を、日々の生活に応用できる形でまとめた新著は、スポーツに詳しくなくても読みやすく、自分や家族、周囲との関係性を生きやすくする『読む処方箋』です。

撮影/平井敬冶 取材/羽生田由香

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