「すでにハマっている」2025年“深夜ドラマ”が豊作！ミステリーにラブコメ…観るべき作品【２選】

2025.1.23

19時〜23時にあたるGP帯のドラマはもちろんのこと、23時以降のいわゆる深夜ドラマも良質な作品が豊熟だ。バラエティに富んだ2025年冬クール、物語の方向性やジャンルは真逆なものの、どちらにも癖になる良さがある『私の知らない私』＆『御曹司に恋はムズすぎる』の2作を紹介したい。

考察しがいのある骨太な脚本『私の知らない私』

小野花梨演じる羽田芽衣は、ある朝目覚めると病院にいた。彼女の前にいたのは、婚約者を名乗る男性・西島奏多（小池徹平）。“1年分の記憶”をすっぽりとなくしてしまった芽衣は、求めるものをすべて手に入れていた。やりがいのある仕事、性格も収入も申し分ない結婚相手、暮らしていくのに十分な自宅、そして命を落としたはずの学生時代の親友・篠原翠（馬場ふみか）。

このドラマは、翠から芽衣に向けた復讐譚を土台にした、考察しがいのある骨太なミステリーだ。

1年分の記憶がない芽衣は、求めていたものすべてを手にしてはいるものの、それで順風満帆とはいえない。再会した翠から、とある場所に向かえば何か思い出すかもしれない、と提示された場所には、事故現場であることを示唆する白い花束が置かれていた。そして、すでに引き払ったはずの芽衣の部屋からは、べったりと血液の付いたシャツが出てくる。

記憶のない1年の間に、芽衣は人を殺してしまったのかもしれない。そんな疑惑が生まれたのが1話で、早くも翠が本性を表したのが2話だ。

自分が殺人犯かもしれない、と焦燥と不安を抱えた芽衣は、この1年間に何が起こり、自分はどんな振る舞いをしていたのかを探ろうとする。すると、とても自分自身がやったとは思えない言動の“証拠”がわいてきた。パワハラ同然の物言いを繰り返して外部スタッフを退職に追いやっていたり、どこか隙のない目をしていた、と言われたり。

自分で自分が信じられなくなるなか、翠の自宅に呼び出された芽衣は、耳を覆いたくなるような告白を聞く。直前に発生していた職場でのトラブルも、芽衣の婚約者である西島が浮気をしていると“嘘”を流したのも、すべて翠が原因だったのだ。

これから私があんたにやることは、全部あんたが私にやってきたこと。そう高らかに復讐宣言をした翠の目は本気の色に塗り込められていて、芽衣には逃げ場がない。これから物語がどう展開していくか、考察しがいのある脚本にSNS上でも「考察しがいがある」「芽衣以外、全員グル？」「1話を観てすでにハマっている」など期待が高まっている。

ベタな王道展開をたっぷり楽しむ『御曹司に恋はムズすぎる』

『私の知らない私』とは真逆を行く王道ラブコメが『御曹司に恋はムズすぎる』だ。

子ども服の制作からその伝統が始まった大企業・服天の御曹司である昴（永瀬廉）と、8年ぶりに再開された子ども服部門に所属する庶民代表・花倉まどか（山下美月）との不器用すぎる恋愛模様を描いたラブコメ。

金銭感覚の狂った甘やかされワガママ御曹司が、節約がモットーの堅実な庶民と恋をする展開は王道そのもの。現に目新しい展開はなく、いかにベタな王道展開とあるあるノリを楽しむかが、このドラマの肝である。

通称・恋ムズに妙な説得力を持たせているのは、主人公の昴を演じる永瀬廉のルックスだろう。昴はことあるごとに自画自賛し、ナルシストと思われても仕方のない言動を繰り返すが、「俺が俺だから（成功するのだ）」と断言する力強さは、彼のルックスに裏打ちされていると思わずにいられない。SNS上でも「永瀬廉くん、適任」と絶賛の声が多い。

服天の代表であり、自身の祖父にあたる天堂亘（鹿賀丈史）にこれでもかと甘やかされ、超絶ワガママ御曹司に育った昴。彼の態度を矯正すべく、亘は昴を社員として雇用し、社員寮で暮らすよう言いつけ、生活費は月々の給料でやりくりすることを明示した。

湯水のように使っていたであろうクレジットカードも止められた昴は、「トイレじゃん」と言い放ったワンルームの狭さに辟易とし、初任給が出るまでの間に食いつなげ、と亘からもらった5万円にも「これだけ？」と言ってのける。彼が恋する相手である庶民代表・まどかとは、根本的に暮らしに対する向き合い方や金銭感覚に格差がありすぎる。

永遠に価値観が合致することのなさそうな二人だが、ぶつかり合い、物申しながら仲を深めていくのだろう。

ライター：北村有（Kitamura Yuu）
主にドラマや映画のレビュー、役者や監督インタビュー、書評コラムなどを担当するライター。可処分時間はドラマや映画鑑賞、読書に割いている。X（旧Twitter）：@yuu_uu_