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ブランド物のハンカチを半額で買いほくほくする自分に満足する

  • 2024.12.25

百貨店にお店があるブランドを多数持っている大手アパレル会社の大きいセールのチラシを手に入れた。いろんなブランドが一堂に会するそのセールは会員証やら招待状などがないと入ることすらできないのだが、チラシでも入れるそうだ。

そのセールの存在は以前から知っている。職場にチラシが送られてきたことがあったからだ。しかし、職場の人の目もあってか、セールだのなんだのに食いつくのははばかられ、ふーん、そういうイベントがあるんですねぇくらいの塩反応をしていた。

そういった人の目もなく、時間的な余裕がたっぷりある今、チラシを手にし、お、いつもやってるあれ、一度は行ってみるかという気持ちになった。

◎ ◎

何を隠そう私は服飾系のブランドに疎い。そもそも価値基準でブランドだからという点が判断材料にならない。かわいいとかデザインがいいとかが重要である。

そして私のお洋服への経済感覚は大学生の頃からあまり変わっていない。プチプラと呼ばれるお店でセールで買うくらいだ。その経済感覚でブランドへの興味が薄いとなるとブランドとの接点は皆無になる。

ブランドだと基本的な単価が高いのでセールだアウトレットだとなっても私からすると高いからだ。

じゃあなぜセールに行くのかと言われたら、普段はウィンドウショッピングすらできないようなお店のお洋服をたくさん見られるからである。私はこういう時に熱に浮かされて、なんか不必要なものを買うことも滅多にないので安心して行ける。

そう、完璧までの冷やかしである。

◎ ◎

そんなこんなでセールの日を迎えた。何日かあるうちの平日である初日に突撃したのだが、平日だというのにすごい人出だ。平台のワゴンに積まれた商品に人が群がっている。私はなかなか人波には突撃できず、フラフラしていた。

すると一際賑わっているコーナーがあった。ハンカチコーナーである。百貨店のハンカチコーナーで売っているようなハンカチがたくさん。なんとか人波に突撃し、ワゴンまで到達した。

ハンカチの山を崩しては積み上げてハンカチを漁っていく。可愛いハンカチがいっぱいだ。デザインが可愛らしいことで私でも知っているようなブランドがほとんどだった。

可愛いと思うのと、欲しいと思うかどうかはまた別な問題である。ハンカチ漁りも飽きた頃、とびきり可愛いハンカチを見つけた。キラキラな糸で刺繍が施されたハンカチだ。

わぁかわいいと思った一方で、絶対使わないだろうなと思った。私は普段タオルハンカチしか使わず、薄手のぺらぺらのハンカチは使わないからだ。

そもそも自分でハンカチを買うという行為が縁遠い。大抵ハンカチって貰い物がほとんどじゃないだろうか。プレゼントでならよく買うのだが。強いて自分に買うなら旅先でご当地もののハンカチを記念に程度だろう。

しかしとびきり可愛いハンカチは葛藤するまでもなく買い物袋に収まっていた。

◎ ◎

お洋服コーナーもがっつり見たが、そのハンカチ以外に惹かれるものはなく、ハンカチ一枚でレジに到達した。商品をスキャンした店員とレジを操作する店員の間で「それだけ?」という言葉が交わされた。

店員にとってはそれだけでも私は、普段自分用には買わないハンカチという物、また普段使いしないであろう形状の物、普段即決できないのにその場で購入できたという三重の特別感もプラスされて、とても満足だった。

若い女性向けのブランドのハンカチを半額で買って、このブランド可愛いくて好きだからハンカチ買えて嬉しいとほくほくしているのは、高校生くらいなら微笑ましく可愛らしいのだろう。アラサーでこれは側から見たら痛々しいのかもしれない。

だが意外なことに、ほくほくしている自分が可愛く思えた。自分に対して自然と可愛いと思うなんて滅多にないことなので驚きつつも、そう思える自分に対しても嬉しくなった。

家に着いてとりあえずとびきり可愛いハンカチは目につくところに飾った。視界に入る度、ほくほくしたり、うれしくなったりしている。

■馬須川馬子のプロフィール
毒親育ち。今は親から離れ、自分を育て直しています。ノンフィクションの作文が好きで、社会復帰のための活動の一環として投稿活動しています。

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