こんにちは!トラベルライターの土庄です。早速ですが、皆さんはサステイナブルツーリズム(持続可能な観光)をご存知ですか?
これは、観光客や観光事業者、地域、環境が未来を見据えて環境や社会文化、経済に配慮した観光のことです。
今回は、下呂市の飛騨小坂(ひだおさか)エリアでE-Bikeのサイクリングツアーを体験してきました。
来年リリース予定のこのツアーを、ひと足先に楽しんできたので、その様子をレポートします。
御嶽山の自然が根づく飛騨小坂(ひだおさか)
photo by Yuhei Tonosho
飛騨高山と下呂温泉という人気観光地に挟まれ、御嶽山の西山麓に位置する飛騨小坂(ひだおさか)。落差5m以上の滝が216箇所ある「日本一滝の多い町」であり、町の97%が森林に覆われ、御嶽山の噴火で形成された溶岩流の地形が特徴的です。
photo by Yuhei Tonosho
地元を愛する若者で構成される飛騨小坂観光協会が地域活性事業を手がけており、自然の美しさと温かい人々の魅力で人気が高まっています。
昨年、令和5年6月には飛騨小坂の地域資源を活かした持続可能な観光地づくり等が評価され「NEXT GIFU HERITAGE~岐阜未来遺産~」に認定されました。
交通手段 & 観光のアクティビティとしてのE-Bike
photo by Takafumi Soga
そんな飛騨小坂では、E-Bike(電動アシスト付きスポーツ自転車)の普及が進んでいます。飛騨小坂には、御嶽山の溶岩流が作り出した巨岩・巌立(がんだて)を中心とした「がんだて公園」があり、三ツ滝やからたに滝などを巡る素晴らしいハイキングコースが整備されています。
photo by Yuhei Tonosho
しかし、これまでは交通手段が整っておらず、最寄駅であるJR飛騨小坂駅から飛騨小坂を代表する各観光名所へのアクセスが課題でした。
そこで、E-Bikeの導入が決まったのです。COGICOGIというサービスで、JR飛騨小坂駅駐輪所では6時間3,000円からE-Bikeをレンタルできます。
photo by Soga Takafumi
E-Bikeは単なる交通手段だけでなく、自然を満喫するアクティビティとしても魅力に富んでいます。スローペースで自転車を漕げば、御嶽山麓の自然が作る造形美に感動したり、ふとした発見が得られるかも!?今回のサイクリングツアーでは、そんなE-Bikeの楽しさにも焦点を当てています。
2つのコースの紹介
開催するE-Bikeのサイクリングツアーコースは以下の2つです。ショートコースは飛騨小坂を初めて訪れる方に、ロングコースは体力に自信があり、感動や達成感を求める山好きの方におすすめですよ。
ショートコースの概要
photo by Yuhei Tonosho
JR飛騨小坂駅を出発後、道の駅 南飛騨小坂はなももを経由し、がんだて公園とその絶景スポットを巡る、往復約25kmのコースです。グルメスポットや高濃度天然炭酸泉の飲泉を楽しみながら、御嶽山麓の自然に触れ、小坂の魅力を日帰りで満喫できます。
ロングコースの概要
photo by Yuhei Tonosho
1日目はJR飛騨小坂駅を出発し、御嶽パノラマライン(県道441号線)を経由して、御嶽山7合目の秘湯・濁河(にごりご)温泉を目指します。
2日目は、飛騨御嶽尚子ボルダーロードから日和田高原、高根乗鞍湖、鈴蘭高原を巡り、飛騨小坂の町に戻ります。1日目は約45km(上りメイン)、2日目は約75km(下りメイン)で、累積標高差は1,500mを超える上級者向けコースです。
ショートコースの魅力とは?
それでは各コースの魅力について触れていきたいと思います。まずショートコースの魅力は、サイクリングならではの発見に満ち、御嶽山の育む神秘の絶景に出会えて、この地ならではのグルメを堪能できるという3点です。
ささやかな発見がたくさん!
photo by Yuhei Tonosho
自転車に乗ると、風景をより身近に感じられます。普段は車から見逃しがちな小さな発見があるかもしれません。
例えば、飛騨小坂駅前の建物のシャッターには、1971年まで運航していた森林鉄道の絵が描かれています。また、町の中心部の橋の欄干には丸太が表現され、カモシカの像が設置されています。
小坂の町を離れ、田園風景のなかを走ると、その道は森林鉄道の線路の名残であることに気付くでしょう。かつて林業で賑わった飛騨小坂の原風景に触れるサイクリングを楽しめます。
御嶽山麓の神秘に触れる
photo by Yuhei Tonosho
標高3,000mを超える霊峰・御嶽山。太古の噴火で流れ出た溶岩が、この地一体に根付いています。そのどこかミステリアスで力強い自然を肌で感じられるのも、自転車ならではです。
がんだて公園に向かう道のラスト1km区間では、柱状節理を見せる溶岩の断面や、木や苔が生える噴石が点在し、まるでジブリの"もののけ姫"の世界へ足を踏み入れたような風景に出会えます。
またオフロードを走り、「あかがねとよ」や「どんびき平」といった、秘境スポットを訪れることができるのも魅力です。
人情味も嬉しい名物グルメ
photo by Yuhei Tonosho
飛騨小坂にはサイクリングの道中に立ち寄りたいグルメスポットが点在しています。道の駅 南飛騨小坂はなももでは、飛騨産エゴマのオリジナルタレを使用した「五平餅」を味わえます。素朴な甘さと香ばしさを堪能できる焼きたては格別です。
お食事処・としちゃん食堂で提供している、下呂の名物料理「豚ちゃん(トンチャン)」には生卵がついているのがポイント。しっかりとした味付けに、絶妙なまろやかさが加わります。お店の方との心温まる会話のひとときも楽しいですよ。
ロングコースの魅力とは?
ロングコースの魅力は、自分の足で御嶽山まで行くアドベンチャー体験を味わえて、秘湯・濁河温泉に宿泊でき、大スケールのサイクリングを楽しめるという3点です。
自分の足で御嶽山へ
photo by Takafumi Soga
飛騨小坂と切っても切り離せない御嶽山(おんたけさん、標高3,067m)。エメラルドグリーンに輝く川、日本一滝の多い町、苔むした悠久の森、御嶽山周辺に湧く温泉、そのすべてが御嶽山の恵みです。
ロングコースでは、そんな母なる存在である御嶽山を自分の足で目指すという楽しさがあります。
1日目はひたすら上りが続きますが、E-Bikeの走行性能であれば、疲れるよりもむしろ楽しめるはず。樹林帯を走るワインディングロードを抜けて、御嶽山を望めるポイントに到着したとき、達成感で満たされるはず。
秘湯・濁河(にごりご)温泉に泊まる
photo by Yuhei Tonosho
ゴールにあたる濁河温泉は、通年営業している温泉地では、日本最高所(標高約1,800m)にあります。原生林に囲まれた隔絶したロケーションで、御嶽山のパワーを感じるお湯に浸かり、山川の幸が詰まった料理を堪能します。
心も身体も癒される時間は、頑張ったからこその最高の贅沢です。季節の狭間に訪れれば、夏と秋、秋と冬というように2つの季節を感じられることも。さらにストイックな方は、翌日御嶽山へ登山をするのもありですよ。
圧倒的スケールの自転車旅
photo by Yuhei Tonosho
1日目の上りの後には、2日目に最高の下りが待っています。しかも来た道をそのまま戻るのではなく、日和田高原を経由し、高山市の山間部を巡る一周ルートになっています。
信号もほとんどなく、御嶽山麓の自然に包まれながらひたすら駆け抜ける時間は、日常では忘れがちな冒険心を呼び覚ましてくれるでしょう。飛騨小坂の町に戻ってきたときには、まるで夢のなかから現実に戻ってきたような、不思議な感覚に包まれるかもしれません。
飛騨小坂サイクリングを通じた一期一会
photo by Yuhei Tonosho
現地で深く関わる旅をすると、思いがけない出会いが増えます。飛騨小坂を訪れた際、偶然にもがんだて公園で冬に向けて薪割りをしているNPO法人 飛騨小坂200滝の方々と出会いました。なんと、「鶏ちゃん(ケイチャン)を一緒に食べて行かない?」と誘ってくれたのです。
photo by Yuhei Tonosho
地元の温かい輪に加わることができ、とても感激しました。鶏ちゃんはもちろん絶品でしたが、それ以上に心が満たされました。
利害関係などなく、おいしいご飯をみんなで一緒に囲む。都会の生活で忘れがちな、何だか大切なことを思い出させてもらった気がします。
山の恵みへ回帰する新しい旅
photo by Takafumi Soga
今回ご紹介したE-Bikeのサイクリングツアーは、まさに飛騨小坂を象徴する存在・御嶽山が作り出す世界をよりダイレクトに楽しむ旅と言っても過言ではありません。自分の足で、そこにある風景や流れる時間を感じ、自然のパワーをチャージできます。
ツアーは、御嶽山の雪解けが進む4月から雪に閉ざされる11月までの限定体験。この冒険心をくすぐるアクティビティに、ぜひ挑戦してみてください。
All photos by Yuhei Tonosho