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のんさん「監督のイライラは自分の演技のせい?」 ぐるぐる考えた過去と、楽になった今

  • 2024.12.24

俳優、音楽、映画製作、アートなど、幅広く活躍する、のんさん。多彩なステージで表現活動を行ってきたのんさんに、キャリアを重ねて感じる自身の変化や、さまざまな経験を経た今だからこそできることについて伺いました。

自分についてうまく語れなくてもいいと思っていた

――2016年にセルフプロデュースを始めて、近年は表現活動の幅をより広げています。自ら仕事を選び、次々と新しいことにも挑戦していますが、キャリアを重ねて仕事の取り組み方は変わりましたか?

のん: 少しずつ変わってきたのかなと思います。たとえば、以前は出演した作品のインタビューを受けたときに「私は俳優なので、出演した作品についてしっかり語ることができれば良い。私個人の考えや生活を聞かれて、うまく喋れなかったとしても問題がない」と思っていたんです。でもいろいろな表現活動を通じて、出来上がった作品だけではなく、その背景を語ることにも意味があると気づきました。作品ができるまでの経緯、演じる私がどういう人間か、表現に込めた思い……。お客さんは、結果だけではなく過程も含めて「作品」として楽しんでいるんだと。だったら自分について語ることも、俳優としての表現のひとつなのだからしっかりやろうと、心構えが変わりましたね。

朝日新聞telling,(テリング)

それから2021年に劇場用の長編映画を初めて監督したことで、「現場で監督のご機嫌をうかがう必要はないんだな」とわかりました。

――それはどういうことでしょう?

のん: 私はけっこう気にする性格で、監督が現場でイライラしていたり、焦っていたりすると「私の演技が良くなかったのかな」「オッケーと言われたけど、本当にオッケーなのかな」と、ぐるぐる考え込んでしまうようなところがあったんです。でも自分が監督をやってみたら、あれもこれもと忙しくて、アドレナリンが放出されっぱなし。こんなに大変なのだから、そりゃイライラもするよなと。気にしすぎる必要はないと思えたので、俳優としての自分が楽になりました。

経験を重ねて、自分の「できない」が見えるように

――telling,の読者は、仕事でもプライベートでも転換期を迎える人の多い年代です。一方で周囲から「変わらなければいけない」とプレッシャーを感じるという声もあります。たとえば頑張りたいのに「そんなに仕事ばかりしていていいの?」と声をかけられてモヤモヤすることが……。

のん: ああ、わかります。私も今年のお正月、家族に会ったときに「結婚とか考えてないの?」と聞かれて。ちょっと半分無視したんですけど(笑)。

もし、声をかけられてモヤモヤするのなら、あまり耳を傾けなくてもいいんじゃないかな。年齢を重ねても人はそんなには変わらないし、頑張りたいのはその人の自由。私は、経験を重ねてきた今だからこそ、これからの自分がどんどん良くなっていく予感がする。以前は「絶対にお芝居で生きていくんだ」と力んでいたから、自分の演技に対してやたらと自信を持っていました。でも今なら自分のできないことも冷静にわかるし、課題をしらみつぶしにこなしていけば自分はどんどん良くなる、とも思えます。

朝日新聞telling,(テリング)

――「これからの自分がどんどん良くなっていく予感がする」というのが素敵ですね。「耳を傾けなくてもいい」と思うと少し気が楽になります。

のん: もちろん、自分のことを心配してくれている人の声を100パーセント否定すべきではなくて。「そうか、人はこういう感覚なんだ。自分とは違うんだな」と、違いを見つけてハッとする。違いを知ったうえで、自分らしい生き方、人との付き合い方を見つけられたらいいですよね。

――これからのんさんが、やってみたいことはありますか?

のん: 今は散歩をしたいなと思っています。以前はしていたのですが、最近は疲労もあって、あまりそういう時間がもてなかったんです。街をぶらぶらして「こんな人がいるんだな」と、日常のいろいろなことに気づけるような時間をつくりたいです。

朝日新聞telling,(テリング)

スタイリスト:町野泉美
ヘアメイク:菅野史絵

■塚田智恵美のプロフィール
ライター・編集者。1988年、神奈川県横須賀市生まれ。早稲田大学社会科学部卒業後ベネッセコーポレーションに入社し、編集者として勤務。2016年フリーランスに。雑誌やWEB、書籍で取材・執筆を手がける他に、子ども向けの教育コンテンツ企画・編集も行う。文京区在住。お酒と料理が好き。

■植田真紗美のプロフィール
出版社写真部、東京都広報課写真担当を経て独立。日本写真芸術専門学校講師。 第1回キヤノンフォトグラファーズセッション最優秀賞受賞 。第19回写真「1_WALL」ファイナリスト。 2013年より写真作品の発表場として写真誌『WOMB』を制作・発行。 2021年東京恵比寿にKoma galleryを共同設立。主な写真集に『海へ』(Trace)。

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