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「マルハラ」には「!」で対抗できる?/ツッコミのお作法⑦

  • 2024.12.23

ツッコミを入れるのは口頭だけとは限りません。案の定、僕はLINEでもよくツッコみます。

食事会の当日、サーヤから「仕事が押したのですこし遅れそうです」とグループLINEに連絡がありました。普通ならここで「了解!」と返して終わりそうなもんですが、そうはいかないのが『熱海オールスターロケ』。以下LINEの続きです。

ハマ「了解です!森本さんと腕クロスして乾杯するやつやりながら待ってます、白湯で」森本「内臓を労りながらやるやつじゃないのよ!」ハマ「じゃあ無水エタノールでやろう」サーヤ「過酸化水素水」森本「間ないのかよ、あんたら」ハマ「間? アミノ式のこと?」森本「いや燃焼系アミノ式はなんの間でもないわ!」サーヤ「喋ってるだけで怒られてみた」森本「ニコニコ動画みたいに言うな!」課長「会話レベルすごい…」

課長の過大評価をきっかけにみんなが少しずつ恥ずかしくなってなんとか会話が落ち着きました。その節は助かりました、課長。

文字でツッコむのは対面でのツッコミとは全然違います。軽いツッコミのつもりで書いた言葉が、冷たく突き放しているように見えてしまうことも。文字だけだとどうしても感情が伝わりにくいですよね。これは〈ツッコミのお作法〉以前の単なるコミュニーケーション術ですが、ベタに「!」をつけたり「(笑)」を足したり、文章としてのキレを犠牲にしてでも「これはツッコミですよ」と伝える姿勢が必要だというのが今のところの僕の結論です。ただ、先ほどのLINEのように劇物を飲まされそうになっている時は例外なので毅然とした態度でツッコみましょう。

7年間、毎日LINEしている同期にも「!」を欠かさない

一時期、「マルハラ」という言葉が話題になりましたよね。LINEで句読点を使われると「怒っているみたいで怖い」と感じる現象を指した言葉で、ネット上でその是非が議論になっていました。様々な意見がありますが、僕は「怖い」と思ってしまう感覚は理解できます。

2017年からほぼ毎日、鳥山大介という同期の芸人とひたすらしゃべる『おこたしゃべり』という生配信をやっています。始めた当初は週に1,2回やれたらいいなと思っていたのですが、お互いの家が近かったこととスケジュールが真っ白という魔のシナジーの結果、ほぼ毎日というペースに落ち着きました。

とはいえアルバイトなどの都合でスタート時間もバラバラですし、できない日もあります。なので毎日「今日どうする?」「何時からやる?」とLINEをして決めています。そういうときも「20時からで!」「ごめん、今日はなしでお願い!」と「!」をつけて送っています。それに対して鳥山も「おけ!」と返してきます。

「ごめん、今日はなしでお願い。」と送ろうが「わかった。」と返ってこようが、そこに含みはないことはお互いにわかっています。付き合いはもう11年、7年間ほぼ毎日生配信をしている仲です。「!」がなくても「え?怒ってる?」なんて思うことはない間柄です。でも万が一にも「今日はできない」という情報以外の何かがあると思われたくない、それに対して思うところがあると思われたくない……。そういった両者の自意識が「!」のラリーを発生させているんでしょう。それに、7年間これでやってきてしまったので今さら「!」をなしにすると逆に「何かあった!?」となりそうです。「!」ひとつで不安が解消されるなら安いもんです。いや、安いもんです!

気にせず「。」をつけてくる相手に悩んでしまったら

ただ、相手の感覚が常に自分と近いとは限りません。普通に全文「。」を使う人もいます。そういう人とLINEをしていて、送られてきたメッセージがボケなのか本気なのかわからなくて悩むことってないでしょうか。たとえば、自分が遅刻してしまったシチュエーションだった場合。「ちょっと遅刻します!ごめん!」と送って「信じられないんだけど。」と返ってきたら「マジでキレてる? そういうボケ? どっち?」となってしまいます。ボケなら「シンジラレナーイ!!!」くらい言ってくれたらこっちも「日ハムのヒルマン監督か!」とツッコめるんですけどね。

連載の第6回で〈ツッコミ保留〉というお作法を紹介しました。冗談か本気かわからないことを言ってくる相手に対し、まずはツッコまずにいったん真面目に話を聞いてみるというスタンスのことです。LINEの場合もこれは有効な気がします。

特にこのシチュエーションの場合、こっちが遅刻している手前、一か八かでツッコんで賭けを外したら大変なことになります。いったん真剣に謝りましょう。そこで相手が「いや、本気で怒ってないよ。そういうボケだよ」というような返しをしてきたらようやく心置きなくツッコめます。相手からすれば、ボケのつもりが伝わらなくて自ら「ボケです」と説明してしまった状況です。その気まずさを緩和するためにも「だとしたらシリアスすぎるよ!」や「文末の(笑)紛失した??」などといったツッコミができそうですね。ただ、「こいつ遅刻してるくせにずいぶん意気揚々とツッコんでくるな」という新たな火種になる可能性もあるのでそこは慎重に。

■ツッコミ名称 安堵終わりツッコミ ■ツッコミ例 「だとしたらシリアスすぎるよ!」 ■解説 ボケか本気かわからないLINEに対してひとまず真剣に受け止めた後、ボケだと判明した場合のツッコミ。ダ・ヴィンチWeb

“誤爆”してしまったら、あえてボケてみる

「!」をたくさんつけたり普段の口調にできるだけ寄せようとしたり、いくら気をつけていても意図せず気まずい状況に陥ることもありますよね。

いわゆる「誤爆」なんかはその代表例じゃないでしょうか。本来送るはずだった相手じゃない人に誤って送ってしまう……想像するだけでゾッとします。今はメッセージを取り消すことができるので、既読になる前に消してしまえば(長押しで確認されていない限り)セーフです。

僕自身はやらかしたことは幸いまだないのですが、もし誤って送ったものに既読がついてしまった場合は「◯◯がメッセージの送信を取り消しました」という例の文言を自分で打ち込んで送信するかもしれません。相手が「いや、取り消せてないよ!」とツッコんでくれることを願って。

もちろん間違って送ってしまった方が100%悪いのですが、「見ちゃいけないものを見てしまった」という罪悪感を覚える人もいると思います。そこで開き直ってボケることでツッコミを誘い出せたら、お互いの気まずさを中和できるのではないでしょうか。もちろん、本当に見られたらまずい内容だった場合は既読がついていようが取り消した上でちゃんと謝りましょう。ボケもツッコミも、きちんと人間関係を築いた上でやるものですからね。

そのほかに不可抗力で気まずくなってしまう状況として思いつくのは、「グループLINEにメッセージを送ったのに無反応」などでしょうか。「人望がないのだろうか……」と悲しくなりますね。だからと言ってストレートに「誰か返事ください!」と聞くのもあまり得策とは思えません。返事する側のハードルも上がるし、変に謝らせちゃいそうな感じもしますよね。

そういうときは「ふざけてるんだろうな」と絶対に伝わる書き方にすると返信がしやすくなると思います。「ひょっとしてみんなデジタルデトックス中!?」「みんなどこ!?おれ『アイ・アム・レジェンド』のウィル・スミスみたいになってない!?」など、これぐらいのトーンなら相手も既読スルーしていた負い目が和らいで返信しやすくなる気がします。自分で言っておいてなんですが、『アイ・アム・レジェンド』の例えはちょっとやりすぎな気がするのでおすすめしません。

相手の表情も状況も見えないだけに、LINEでのツッコミは対面よりも繊細で難しいです。誤解や行き違いに気をつけつつ、いつ休日課長に見られても褒めてもらえるような会話を心がけたいですね。

(取材・文/斎藤岬)

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