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アンバー・ヴァレッタの環境に優しいエコハウス

  • 2024.12.23
LA の自宅にしつらえ たテラスにたたずむアンバー・ヴァレッタとフィアンセのテディ・チャールズ。
Culture_AmberVALLETTA_1_jp_vogue_2025-january.jpgLA の自宅にしつらえ たテラスにたたずむアンバー・ヴァレッタとフィアンセのテディ・チャールズ。

1990年代に一躍名声を得て以来、大きな影響力を保ち続けるスーパーモデル、アンバー・ヴァレッタ。ロエベ、サンローラン、 ステラ・マッカートニーなどのラグジュア リーブランドでキャンペーンの顔を務め、 今も引っ張りだこのモデルだ。一方で、彼 女は気候変動の問題を訴え、世界をリード するアクティヴィストでもある。英版ヴォーグでは、サステナビリティ担当のコントリビューティング・エディターを務め、カール・ラガーフェルドのオリジナルブランドのサステナビリティ・アンバサダーにも就任している。

また、ジェーン・フォンダの呼びかけでワシントンDCで開催された地球温暖化防止を訴えるデモ「ファイヤードリル・フライデイズ」に参加し、ほかのアクティヴィストとともに逮捕されたこともある(筆者がホスト役を務めるポッドキャスト「ザ・グリーン・ドリーム」でのインタビューでも、「釈放されたときに、ジェーンがスナックを手に出迎えてくれた」というエピソードを明かしていた)。

サステナビリティの精神をふんだんに盛り込んだ自邸づくり

キッチン兼朝食用スペース。アイラン ドカウンターの下に格納されているスツールはヴィンテージの品。右手に見える、 かつてフランスの農家で使われていたテーブルと組み合わされているオーク製 チェアはエミル・ラゴーニ・ヴァルバクのもの。
Culture_AmberVALLETTA_2_jp_vogue_2025-january.jpgキッチン兼朝食用スペース。アイラン ドカウンターの下に格納されているスツールはヴィンテージの品。右手に見える、 かつてフランスの農家で使われていたテーブルと組み合わされているオーク製 チェアはエミル・ラゴーニ・ヴァルバクのもの。

アンバーは、環境を重視する精神を、自身の生活の隅々まで行き渡らせようとしている。自宅もその例外ではない。そこでLAの丘の上にある家を新たに手に入れると、 ディアス+アレクサンダー・スタジオが建ヘアドレッサーとしてファッション界で活躍するフィアンセのテディ・チャールズ、そしてロサンゼルスを拠点とするインテリアデザイナーで、彼女の友人でもあるロス・キャシディとともに、サステナビリティに配慮したエコホームに改装することにした。アンバーがロスに出会ったのは17年前、彼女がサンタモニカに住んでいたころだ。その人となりを知る前に、ワークアウトの途中で、彼のオフィス兼自宅のそばをよく通っていたアンバーは、「建物の中で働いている素敵な人たち」をこっそり眺めては、働いているのはどんな人なのか、どんな仕事をしているのかと想像をめぐらせていたという。

そしてある日、彼女はついに自転車で移動中のロスの行く手をさえぎり、声をかけた。こうして知り合った二人はすぐ に意気投合したという。サンタモニカに手 に入れた自宅のリノベーションの際に、アンバーはロスの力を借りた。さらに数年後、 ロサンゼルス近郊のパシフィック・パリセ ーズに移り住んだときも、ここの家のアップデートを任せている。 さらに、新たな自宅候補となる、静かな 峡谷の崖の上に建つ、まだ建築中の6ベッドルームの家を見つけると、アンバーは再びロスにアドバイスを求めた。しかし今回は、新しいテーマが加わった──「とてつもなく癒される、サンクチュアリのように感じさせる場所。何かと忙しない世間からここに足を踏み入れると、ふっと息をつけるような場所です」と、アンバーは説明る。そして、できる限り環境にやさしく、という条件も加わった。

テラスに置かれたテーブルとチェアは、パリの蚤の市で見つけた、1950 年 代のロジェ・キャプロンの作。ハンギングバスケット風の照明はサントロペで購 入。壁には天然石を貼り、脱色したヒマラヤスギのサイディングを使用。敷石に は再生された小石を利用している。
Culture_AmberVALLETTA_3_jp_vogue_2025-january.jpgテラスに置かれたテーブルとチェアは、パリの蚤の市で見つけた、1950 年 代のロジェ・キャプロンの作。ハンギングバスケット風の照明はサントロペで購 入。壁には天然石を貼り、脱色したヒマラヤスギのサイディングを使用。敷石に は再生された小石を利用している。

エコという新しい視点が加わったことで、今回はアプローチを根底から考え直す必要に迫られた。すでに建物の基礎と骨組みは、ディアス+アレクサンダー・スタジオが建設を済ませていた。このスタジオは、ロブ・ディアスとマーク・アレクサンダーが創業し、現在も運営するロサンゼルスの不動産開発と建築設計会社だ。「形はすでにそこにあったので、私たちは建築会社と協力して仕上げに取り組みました。環境というコンテキストを重視した、サステナブルな建物にしようと考えたのです」とロスは説明する。

ホームオフィスの壁にはクレイグ・マクディーン、フランチェスコ・スキャバロ、マリオ・ソレンティ、ピーター・リンドバーグ、リチャード・アヴェドンによる写真が飾られている。壁はクレイワークスの粘土でできた壁土を用い、筋状の模様を入れて仕上げている。
Culture_AmberVALLETTA_4_jp_vogue_2025-january.jpgホームオフィスの壁にはクレイグ・マクディーン、フランチェスコ・スキャバロ、マリオ・ソレンティ、ピーター・リンドバーグ、リチャード・アヴェドンによる写真が飾られている。壁はクレイワークスの粘土でできた壁土を用い、筋状の模様を入れて仕上げている。

そこでこの建物には、ソーラーパネルを接続するためのケーブルが敷設された。パネル自体は現在手配中で、到着次第、屋根の上に設置される予定だ。「カリフォルニアではパネルの注文に生産が追いつかない状態なんです。それだけ需要が多いということなので、素晴らしいですよね」とロスは語る。さらに、窓も二重窓とした。二重窓はカリフォルニア州では新築の建物に設置が義務づけられており、「家の断熱を強化するのに役立つ」と、ロスは解説してくれた。

また、責任ある手法で採取されたダブグレイ(紫がかった灰色)とサンドベージュの石材をエクステリアの大部分に採用した。これはロサンゼルスのエコ・アウトドアで調達したものだ。ロスによれば、 そこでフレームの木の部分を削ってみたと「軽い石材には光を反射し、家の中を涼しく保つ効果がある」という。「さらに石は半永久的に劣化せず、メンテナンスも不要です。ロサンゼルス周辺にあるミッドセンチ ュリーの邸宅を思い出してみてください。当時の家の壁はすべて石でできていました。また石が流行の素材になっているのはうれしいことですね」

メインベッドルームのベッドとラグは、デザインを手がけたロス・キャシディが作成。
Culture_AmberVALLETTA_5_jp_vogue_2025-january.jpgメインベッドルームのベッドとラグは、デザインを手がけたロス・キャシディが作成。

一方、部屋の内側の壁については、従来からあるタイプの塗料を避けたいというの が、アンバーの考えだった。これは、発ガンのリスクがある揮発性有機化合物(VOC)を放散するものが多いという理由からだった。代わりに、彼女はロスとともに、イギリスのコーンウォールにある企業、ク レイワークスが製造している、天然の粘土を主成分とし、天然の顔料で着色された壁土を選んだ。これには、塗り方によってフラットにも、筋状の質感を持たせた仕上げにもできるというメリットがある。「夏でも、この壁のおかげで涼しいですよ」とアンバーは実感を語る。「それに冬になると、熱を蓄えて暖かさを保ってくれます」

シャワールームの壁はクレイワークスの粘土を使った壁土のカスタム仕上げ。
Culture_AmberVALLETTA_6_jp_vogue_2025-january.jpgシャワールームの壁はクレイワークスの粘土を使った壁土のカスタム仕上げ。

室内に置かれたアイテムにも、環境への 配慮が行き届いている。新品の家具を揃える代わりに、アンバーはすでに手もとにあった家具の詰め物や布を入れ替えて使うことにした。アメリカ製の BDDWのチェアも、こうしてリフォームした家具の一つで、同じモデルの友人、キャロリン・マーフィーから手に入れたものだ。「キャロリンはこの椅子を見て、『わあびっくり、とっても綺麗になってる! 素敵な第二の人生をもらえたのね』と言っていましたよ」とアンバーは語る。また、アンバーが持っていた古いキッチンチェアも同様にリフォームされた。「シートはレザーで、フレームも黒くて、家の雰囲気と合わなかったのです。そこでフレームの木の部分を削ってみたところ、実はホワイトオークでできていたことがわかりました。これに合わせて、シートもベージュのリネンに張り替えました」

玄関ホールには、クレイグ・マクディーン撮影の写真が飾られている。引き出しのノブ やフックはロッキー・マウンテン・ハードウェア。
Culture_AmberVALLETTA_7_jp_vogue_2025-january.jpg玄関ホールには、クレイグ・マクディーン撮影の写真が飾られている。引き出しのノブ やフックはロッキー・マウンテン・ハードウェア。

追加で買い足すアイテムについても、アンバーはヴィンテージ、あるいは地元で作られたものや職人の技が光る品を選んだ。 その一つがオフィスを照らすムラーノガラスのシャンデリアで、これは彼女がパリの蚤の市で見そめたものだ。また、ライブラリーに置かれたキャビネットの引き手は、 LAを拠点にフォトグラファー、パブリッシャー、ジュエリーデザイナーとして活躍するリサ・アイズナーの作だ。「小さなジュエリーのようでしょう?」とアンバーは言う。

床に敷かれたカーペットは天然繊維製で、ベッドリネンやカーテン、ソファの表張りや詰め物もオーガニック、あるいは サステナブルな素材でできている。ホーム オフィスに置かれたピエール・オーギュスタン・ローズのチェアもその一例で、カバーリングにはピエール・フレイのウール混紡のボア生地が使われている。「天然繊維の生地の製造工程は、合成繊維やポリエステルよりもクリーンです。それに、見た目もずっと美しいですからね」とロスは採用の理由を説明する。

自然とともに暮らす家の完成

リビングルームでくつろぐテディとアンバー、そして愛犬のヨーロピアン・ドーベルマン・ピンシャーのベラ。配置されているのは、クロフト・ハウスのユニット家具。ウォールナットのローテーブルはルイス・リリエンクランツ。チェアは 1950 年代に作られたジャンフランコ・フラッティーニ、フロアランプは 1960年代のフランス製。
Culture_AmberVALLETTA_8_jp_vogue_2025-january.jpgリビングルームでくつろぐテディとアンバー、そして愛犬のヨーロピアン・ドーベルマン・ピンシャーのベラ。配置されているのは、クロフト・ハウスのユニット家具。ウォールナットのローテーブルはルイス・リリエンクランツ。チェアは 1950 年代に作られたジャンフランコ・フラッティーニ、フロアランプは 1960年代のフランス製。

愛犬とともに多くの時間を過ごす屋外の空間に、アンバーとテディのカップルはほとんど水やりを必要としないデザートガーデンを設け、家の背後の丘には、野草の種を蒔いた。「プールサイドにはフクロウがやってきましたし、上空をタカがぐるぐると回っています。ほかにもボブキャットや

コヨーテ、チョウ、カマキリを見かけました」とアンバーは語る。「ここはいいヴァイブに満ちているんです」

Photograph: Rich Stapleton Text: Dana Thomas Translation: Tomoko Nagasawa Adaptation Editor: Sakura Karugane

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