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これからの企業成長にはこれが欠かせない…サンリオのキティちゃんが仕事を選ばない深い理由

  • 2024.12.23

ソニーの売上は2年連続で過去最高を更新し、好業績を続けている。その理由は何か。作家で経済評論家の渡邉哲也氏は「好調の要因はソフトやコンテンツの輸出による高収益で、今後の見通しも明るい。コンテンツ力は今後も企業の成長を支えていくだろう」という――。

※本稿は、渡邉哲也『世界と日本経済大予測2025-26』(PHP研究所)の一部を再編集したものです。

桃園国際空港にあるサンリオショップ
※写真はイメージです
製造業、商社、金融のレジェンドが日本経済を牽引し続ける

日本経済の今、未来について大きな視点で分析を試みる。株式時価総額が10兆円を超える日本企業が、2024年10月7日現在で19社となり、過去最多を記録した。1位はトヨタ自動車の52兆4000億円で、続いて三菱UFJFG、以下ソニーグループ、日立製作所、キーエンス、ファーストリテイリング、リクルートHD、NTT、三菱商事、ソフトバンクグループまでがトップ10を形成している。

顔ぶれを見れば、伝統ある企業がかなり頑張っていることに気付く。製造業を中心とした旧財閥系企業が多く、NTTのような旧国策企業、東京エレクトロンなど半導体関連も入っている。

アメリカのトップと比較すると、その違いがはっきりわかる。アメリカは1位から順にアップル、エヌビディア、マイクロソフト、アルファベット、アマゾン、メタと続くようにIT関連が上位を占めている。

アメリカは日本との競争に負けてモノづくりを放棄

この違いは“お国柄”によるものだろう。日本の上位は基本的にモノづくり、実体経済と表裏一体の企業が占め、対照的にアメリカの上位はほとんどファブレス(工場を所有せずに製造業を行なう企業)で、実質、販売会社、設計会社だ。アップルやエヌビディアなどが高い技術を有しているのは間違いないが、ほぼ知的財産のみで実態の見えにくい会社と言っていい。

アメリカは1980年代に日本との競争に勝てず、実際のモノづくりをほとんど放棄してしまった。自動車のビッグスリー(GM、フォード、クライスラー)も例外ではなく、結果的に海外移転せざるをえなくなった。アメリカで車を作っているのはトヨタなどの日本企業というのが現状だ。

日本人に染み付いた「ハード優先の思考」

令和の日本において優勢を誇っているのは、製造業と商社、金融である。日本では、かつての経済発展を支えた大企業が今も大きな影響力を有しており、基本的な社会構造がバブル前から変化していないことがうかがえる。「実体のあるもの」を作ることが尊重されると言ってもいい。

Windows95が爆発的な人気を博した頃、初めてパソコンを手にした人びとはWindows95を使うためにはNECやシャープ、富士通のパソコンを買わなければいけないことを知った。

その時、「日本のトップメーカーがアメリカのソフトを入れてパソコンを売るサービスを始めたんだな」という認識を持った人は少なくないだろう。これは、「(目に見える)ハード優先の思考」と言える。

しかし、パソコンが普及するにしたがい、ハードはソフトを活用するためのものに過ぎず、ソフトがなければただの箱であることに気付く。

アメリカはいち早くソフト優先の思考に切り替え、ファブレスの大企業が次々と台頭したが、日本は基本的にはハード優先の社会が続いていると言えるのかもしれない。それが良い悪いの話ではなく、あえて言えば得手不得手の話だ。

工場
※写真はイメージです
いまだに残る財閥の存在感が日本の強みになっている

そのうえで、日本の経済界では、いまだに財閥の存在感が色濃く残る。三井グループであれば二木会といって、毎月第2木曜日にグループ企業の社長が集まっている。その直下に、シンクタンク三井業際研究所を有する。グループ間での情報のやり取りや、グループ間でのモノづくりの協力が行なわれやすい体制が整っているわけだ。

三菱グループにも三菱金曜会がある。こちらは毎月第2金曜日に三菱グループの中核となる27社の会長・社長が集まっての懇談昼食会が開かれる。

御三家と言われる三菱重工業、三菱商事、三菱UFJ銀行がトップに君臨し、さらに主要10社(三菱地所、三菱電機ほか)を加えた世話人会があり、そこに主要14社(三菱自動車、ニコン、ENEOSほか)を加えた合計27社で組織されている。銀行も含めた旧財閥構造がまだそれなりに生きていて、それがモノづくりに活かされている。

三井・三菱ともに閉鎖的で権威的、保守的と感じられるグループだ。こうした体制自体が、世界的に見て特異でしばしば批判の種にはなるものの、かえって日本の強みにもなっている。

例外のソニーはアメリカ型の大会社として成功

独裁国家や新興国、強権的な中国も、利権でつながる閉鎖的な企業社会だから、財閥グループと同様ではないかと考える人もいるかもしれないが、そういった国々では大企業のトップも世襲制になってしまい、新陳代謝が図れない。

しかし日本の場合は、トヨタを例にするまでもなく、大企業の会長は創業者一族ではあるものの支配株主ではないケースが多い。会社法の規定に則ってトップが選出されるという意味で社内の権力構造は民主的であり、現存する財閥構造は社会の安定のためにも一定の役割を果たしている。

例外的存在はソニーである。モノづくりの会社としてスタートし、今でもレーザーエッチング装置を開発するなどその伝統は生きているものの、会社全体としてはアメリカ型の大会社であるファブレスの方向へと進んでいる。

こうした大企業グループが日本の株価を支えているという実体をまずは頭に入れておいてほしい。

ソニーのような「ソフトパワー」がなければ失敗する

ソニーは他の日本のトップ企業とは一味違った存在であることはすでに述べたが、もう少し深堀りしよう。ソニーの売上は2022年度、2023年度の2年連続で過去最高を更新、2023年の営業利益は1兆2088億円という好業績である。

好調の原因はソフトやコンテンツの輸出による高収益で、今後の見通しも明るい。ソニーは昔から日本の会社らしくないところが魅力で、もともと外資比率が高かった。

2024年3月時点での株式の保有割合は外国法人等が個人・個人以外を含め58.59%と6割近くを占めている。それが他の製造業の大手とは異なる企業文化、企業風土を生み出す原動力になっているのかもしれない。

現在のソニーは電機会社から総合会社に変貌しており、グループとしては、ソニー銀行などさまざまな「ソニー」の看板を掲げたコンテンツやサービス業関連が大きくなっている。

会社が保有する不動産や土地だけではなく、会社のソフトパワーを裏付けるコンテンツも重要な資産であるという概念を、他の企業は見習うべきであろう。

「知財」という言葉があるように「知的財産権」が重要だ。“96歳の世界的に有名なネズミ”が、今でも莫大な富を関係会社にもたらしていることを思えば、そのパワーの凄まじさの一端を理解できるだろう。

ソニーにあって、パナソニックに欠けていたもの

ソニーがソフトパワーで成功したのを見て、パナソニックも二匹目のドジョウを狙ったが、うまくいかなかった。1990年にハリウッドのメジャースタジオのユニバーサル(当時MCA)を61億ドル(当時のレートで約7800億円)で買収したが結局は、その5年後の1995年に80%の株式を手放し、2006年には残り20%を売却と、完全に失敗に終わった。

ソニーが成功してパナソニックが失敗したのは、前者にはゲーム事業の基盤があり、後者にはなかったことが影響している。

任天堂とソニーはゲーム関連事業があり、そのコンテンツ周りの販売が非常にたくみで、ゲームがあることによって知財部門が充実した。知的財産権の保護のための専門チームがしっかりある、そのような組織があることで、会社としても知財の、ひいてはソフトの重要性を認識し共有できたという側面もあるように思う。

渡邉哲也『世界と日本経済大予測2025-26』(PHP研究所)
渡邉哲也『世界と日本経済大予測2025-26』(PHP研究所)

ソニーの成功に学んだとは限らないが、ソフトコンテンツをうまく活用する企業が増えている。もっともこうした方法は芸能人を使った文房具や、人気キャラを利用するパチンコなど、昔から使われている手法ではあった。今はそれを遥かに大きな市場の中でビジネスライクに行なっている。

たとえば、日本生まれのキャラクターではキティちゃんが有名だが、キティちゃんは「仕事を選ばない」ことでも知られている。

以前、筆者がサンリオの社長に「キティちゃんはなぜ仕事を選ばないのですか?」と聞くと、「仕事を選ばないわけではない。全ての仕事を取っているんだ」と答えたのをよく覚えている。今から思えばキャラクタービジネス、ソフトコンテンツの時代を象徴するような話だった。

渡邉 哲也 (わたなべ・てつや)
経済評論家
1969年生まれ。日本大学法学部経営法学科卒業。貿易会社に勤務した後、独立。主な著書に、『世界と日本経済大予測』シリーズ(PHP研究所)、『「米中関係」が決める5年後の日本経済』(PHPビジネス新書)のほか、『「中国大崩壊」入門』『2030年「シン・世界」大全』(以上、徳間書店)など多数。

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