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地球温暖化でも大雪災害は起こる!その理由と備えのポイントを解説

  • 2024.12.29
写真:PIXTA

地球温暖化によって地球の気温は上昇し続けており、2023年には世界年平均気温が統計開始以降でもっとも高い値を記録しました。

日本も地球温暖化の影響を強く受けており、夏の暑さが厳しくなる一方、冬の厳しい寒さは昔に比べると軽減されています。

冬の気温が上昇することは生活のしやすさという点でメリットに感じるかもしれませんが、じつは大雪災害のリスクは高まる可能性があることをご存じでしょうか。

この記事では、冬の気温が上昇していても大雪になる理由を紹介します。

冬の気温は上昇している

地球温暖化によって、冬の気温は昔より高くなっています。

それに伴い、年間の冬日日数も全国的に減少傾向にあります。
冬日とは、最低気温が0℃未満の日のことをいいます。

以下のグラフは、札幌・東京・福岡における年間冬日日数の変化を示しています。

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防災ニッポン

引用:気象庁「大都市における冬日日数の長期変化傾向

1990年以降は、東京・福岡などの都市圏において冬日日数が10日未満の年も多くなっています。
これだけ見ると「地球温暖化で冬日が減っているのであれば、大雪災害のリスクは小さくなっているのでは?」と思う人もいるかもしれません。

地球温暖化によって冬の積算降雪量は全国的に減少することが予想されている一方、極端に強い「ドカ雪」は増加する可能性が指摘されています。

冬の気温が上昇しているからといって、大雪災害のリスクが小さくなるわけではないことに注意が必要です。

地球温暖化でも大雪災害は起こる

地球温暖化で冬の気温が上昇し、雪雲が発生しやすくなることが、大雪災害が起こる理由だと考えられています。

気温の上昇に伴い、海水温が上昇して海水の蒸発が活発になり、多くの雪雲を発生させます。また、気温が高いほど大気中の水蒸気量も増えるため、より多くの雪を降らすことになります。

そのため、特に雨か雪の境目くらいの気温で雪が降る場合に、大雪災害が起こりやすくなります。

下の画像は、気温と降雪量・降雨量の関係を簡単にまとめた図です。
縦軸が降雪量・降雨量、横軸が気温となります。気温が高くなると、降雪量・降雨量も増えているのがわかります。

画像:筆者作成

仮に地点Aという場所があるとします。

地点Aでは、過去に比べて現在のほうが気温は上昇しており、降雪量も増えているのがわかります。

現在は地球温暖化が進んでいるといっても、強い寒波がやってくると毎年のように全国各地に雪を降らせています。しかし、雪が降る際の気温は上昇しているため、寒波がやってきた際に大雪になるリスクは高まるといえるでしょう。

また、地球温暖化が進んで気温がさらに高くなると、冬に雪が降らず雨が中心になる場所が出てくる可能性もあります。
その場合は大雪災害の危険性は減るものの、農作物や冬のレジャー、観光などに大きな影響を与えることになるでしょう。

大雪によって起こる災害

大雪によって起こる災害は、以下のようなものがあります。

・吹雪による視界の悪化
・雪崩
・積雪や凍結による車のスリップや交通事故
・積雪や凍結による転倒
・車の立ち往生による低体温症や一酸化炭素中毒
・雪圧による樹木の被害やビニールハウスの倒壊
・着雪による停電

このうち、地球温暖化によって特に増えると予想される大雪災害は、着雪や車の立ち往生などです。

着雪は水分が多い雪が電線や送電鉄塔、樹木などに付着し、停電や農作物への被害をもたらす災害です。雨雪の境目となる気温0℃付近で発生しやすく、地球温暖化によって気温が上がると、水分を含んだ雪が降って着雪のリスクが高まります。

また、地球温暖化によってドカ雪が増えると車の立ち往生のリスクが高まります。

ドカ雪による立ち往生は、吹雪やスタックによって発生します。

スタックとは、雪にタイヤがはまってアクセルを踏んでも前にも後ろにも進まなくなる現象です。普段雪の少ない地域でドカ雪になると、冬用タイヤを装着していないことでスタックし、後続の車が進めなくなって大規模な立ち往生が発生するケースもあります。

車が立ち往生に巻き込まれると、マフラーが雪に埋まってしまい、排気ガスが車内に逆流して一酸化炭素中毒を起こす可能性があります。ただしエンジンを切ってしまうと、次は低体温症や凍死のリスクが高まることに注意が必要です。

日本海側も太平洋側も冬は大雪への備えが必要

日本の雪の降り方には、大きく分けて「日本海側に雪を降らせる西高東低の冬型の気圧配置」と「太平洋側に雪を降らせる南岸低気圧」の2パターンがあります。

それぞれ雪が降るメカニズムは異なるものの、気温が上昇して空気中に含むことのできる水蒸気が増えると、大雪災害のリスクが高まることは共通しています。そのため、日本海側も太平洋側も冬は大雪への備えが大切です。

また、雪が降る際にはドカ雪となって短期間で積雪が急に増える可能性もあるため、雪の予想が出ているときには早めの対策を心がけましょう。

天気予報や気象情報で雪の予報が出ている場合には、車の運転が必要なら早めに冬用タイヤに交換したり、タイヤチェーンを用意したりすることも必要です。

今後3日以内にどれくらいの雪が降るかどうかをチェックするには、気象庁の「今後の雪」という気象情報が便利です。今後の雪は現在の積雪状況をはじめ、3時間~72時間先の降雪量予想がわかります。

気象情報を上手に活用しながら大雪災害に備えましょう。

〈執筆者プロフィル〉
田頭 孝志
防災アドバイザー/気象予報士
田頭気象予報士事務所。愛媛の気象予報士・防災士。不動産会社の会員向けの防災記事、釣り雑誌にコラムの連載・特集記事の執筆、BS釣り番組でお天気コーナーを担当したほか、自治体、教育機関、企業向けに講演を多数、防災マニュアルの作成に参画。

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