「これって健康にいいはず」と思い込んでいることも、実は効果がなかったり、やり方によっては逆効果になってしまったりすることも。皆さんがいいと思っていた健康常識のウソを、南雲吉則先生がズバッと解説してくれます!
今回は、「野菜だけ食べていれば健康でいられる」についてのウソを教えていただきました。
- A子さん
肉の脂って体に悪いイメージ! 野菜だけ食べていればヘルシーで、間違いないですよね? - 南雲吉則先生
いいえ、それ実は間違っています!
ベジタリアンは病気リスクが下がるという結果も!?
―ベジタリアンとは肉や魚を食べない、いわゆる菜食主義者のことですよね? はい、肉や魚を食べない人たちのことです。細かく分けると、考え方や主義などより、野菜のほかに卵製品も食べる人、乳製品をとる人などいくつかの種類に分かれます。ベジタリアンの歴史は古く、紀元前7世紀のインダス文明からいたと言われています。宗教的に殺生が禁じられていたため、ベジタリアンとして暮らしていた人たちも多かったのではないでしょうか。 ―ベジタリアンのメリットはなんでしょうか? アメリカのセブンスデー・アドベンチスト教会(聖書主義に立つキリスト教・プロテスタント教会)の信者には、ベジタリアンとして生活をしている人が大勢います。信者たちは一般的な健康診断の結果よりも、病気のリスクが低かったということがわかっています。
- 男女ともにBMIが低く、肥満傾向の人が少ない
- 糖尿病の人は平均の半分以下
- 平均よりも前立腺がんは35%、大腸がんは47%も少ない
- 認知症の人も平均の半分
- 虚血性心疾患の男性が平均よりも37%少ない
このようにベジタリアンであることで、体にいい影響を及ぼしているという結果も出ています。
野菜だけ食べる生活をしていると、体にトラブルが起きることもあります
―いいことづくめのように感じますが、デメリットはないのでしょうか? 肉や魚などに多く含まれる栄養素が不足し、さまざまな症状を引き起こす可能性があります。中でも下記の栄養素は不足しがちで、そうなると日常生活に支障をきたすような症状が起こることも。
- 必須アミノ酸リジン…疲れやすくなる
- メチオニン…肌荒れ、肝機能の低下
- ビタミンB12…巨赤芽球貧血、神経障害
- ビタミンD…骨粗しょう症、免疫力低下
- ヘム鉄…鉄欠乏症貧血
- オメガ3必須脂肪酸のEPA…アレルギー、うつ病
- オメガ3必須脂肪酸のDHA…ED
そのため野菜だけに偏った食生活をするのは、危険だと言えます。 ―ではベジタリアンを続けるためには、どのような食生活を送るのがよいのでしょうか? 野菜だけだと不足してしまう栄養素を、肉や魚以外できちんと摂取するのがいいでしょう。 例えば米は必須アミノ酸リジンが少ないですが、メチオニンが多く含まれます。そして大豆はメチオニンが少ないですが、リジンが豊富に含まれます。そのため、お米を食べるときに納豆をいっしょに食べると、不足する栄養素が補い合えるのでおすすめ。 鉄分は葉物野菜に含まれていますが、生のまま食べるとアクが鉄分の吸収を阻害します。ただ、熱し過ぎてしまうとビタミンCが壊れてしまい鉄分の吸収が悪くなるので、サッと湯通しをしておひたしなどで食べるといいですよ。 ビタミンB12は海苔に含まれているので、おにぎりにのりを巻くほか、サラダやおひたしのトッピングにするなどでとりましょう。 ビタミンDは干し椎茸やキクラゲで補いましょう。また、日光を浴びると体内で合成されます。シミなど美容面が気になるなら、顔を避けて日光浴をしましょう。 オメガ3必須脂肪酸であるEPAやDHAは、エゴマ油やクルミに含まれています。日本特有の文化である出汁にも多くの栄養素が含まれているので、魚介類がNGでカツオ出汁が難しい人は、昆布やしいたけで出汁をとるのもおすすめです。
無理なくゆるく続けるのがおすすめ!
―野菜中心の生活を送りたいけれど、無理なく続けられるのがいちばんいいですね。 日本でも仏教が伝来した6世紀ごろから、殺生禁止で肉を食べていない時代がありました。そのときに体の栄養を補ってきたのが小魚です。小魚は頭から丸ごと食べることができる完全栄養食。それに海苔や納豆、シジミの味噌汁などを食べて、栄養を補ってきたんですよ。 ―最近は肉だけ食べずにほかの動物性食品はOKという人も多いようですね。 ペスカタリアンといって肉類を食べずに植物性食品、卵、乳製品、魚介類を摂取する人たちですね。そういう無理のない続け方もいいかもしれません。なので、ゆるく続けたいのであればおやつに小魚を食べるなどで、栄養を補ってください。
結論!野菜で足りない栄養素は他の食材でしっかりとりましょう!
- A子さん
野菜だけでは足りない栄養素を意識して補給しながら、ゆるベジタリアンをしてみたいと思います。 その際におすすめの食材などはありますか? - 南雲吉則先生
緑藻類の一種であるクロレラがおすすめです。たんぱく質が豊富で、ほかにもビタミン、ミネラル、カロテノイド、不飽和脂肪酸など多くの栄養素が含まれています。 粉末などのパウダーであればサラダなどに振りかければ、料理のアクセントに。カレーなどもありますよ。
足りない栄養を補うのにぴったり! 使い勝手のいいクロレラパウダー
良質な水源に恵まれ環境豊かな福岡筑後で育てられた、栄養素が豊富なクロレラを飲みやすいパウダーに。料理に振りかけたり、ドリンクに混ぜるなど使い勝手も抜群。KAKERU MIDORI(カケルミドリ)1.44g×20包 ¥3,456(命の食事)
撮影/山辺恵美子(人物) 文/酒井明子
教えてくれたのは 南雲吉則先生
医学博士、乳腺専門医でナグモクリニック総院長。4つの院で乳がん手術、乳房の美容、再建手術を行う。自ら立ち上げた「命の食事プロジェクト」ではがんから命を救う食事と生活指導を行い、講演にも力を注ぐ。