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【六本木】サントリー美術館「儒教のかたち こころの鑑─日本美術に見る儒教─」

  • 2024.12.22

「温故知新(故きを温ねて新しきを知る)」儒教美術として見る新鮮さを味わう

サントリー美術館で開催中の「儒教のかたち こころの鑑─日本美術に見る儒教─」[2024年11月27日(水)~2025年1月26日(日)]を見て来ました。

紀元前6世紀の中国で孔子が唱えた儒教は、五常(仁・義・礼・智・信)の思想を修め聖人になることを理想とした教えです。 孔子の思想は、徳をもって世を治める人間像を理想としていました。プラトンの哲人王の思想をイメージさせます。

孔子の言動や弟子との対話を収録したのが『論語』です。 日本に『論語』とともに儒教が伝わったのは4世紀頃で、仏教よりも早く為政者の学問として受け入れられました。

本展では日本美術に表現された儒教美術をあらためて見てみることで新鮮な気づきに出会える展覧会です。

※特別の許可を得て撮影しています。展示室内は撮影禁止です。

出典:リビング東京Web

「儒教のかたち こころの鑑─日本美術に見る儒教─」展示風景 サントリー美術館

君主の理想「帝鑑図(ていかんず)」「賢聖障子(けんじょうのそうじ)」

4世紀初めに日本に伝わった儒教は、君主の学問として宮廷で学ばれていました。 『論語』などの教典は、天皇や公家、武家など「理想の世をつくる為政者の心構え」を学ぶための座右の書として身近に置かれていたようです。

また、書籍だけでなく「勧戒画(かんかいが)」と称さる儒教思想をもとにした画題の絵画が宮殿や城郭の室内に飾られました。

《帝鑑図・咸陽宮図屛風》、重要文化財《賢聖障子絵》

《帝鑑図・咸陽宮図屛風》(左)。

「善を勧め悪を戒める」意味をもって制作される「勧戒画」の《帝鑑図・咸陽宮図屛風》。 右隻の1つの画面に善行と悪行の説話が混在された独特の形式で、中国宮廷の華やかな風景を描いた風俗画とも言えるそうです。

右は、仁和寺(にんなじ)に伝わる重要文化財《賢聖障子絵》。後水尾天皇の御所に飾られた現存最古の「賢聖障子」でこちらも「勧戒画」になります。「賢聖障子」は、内裏で最も格式の高い紫宸殿にて、天皇の玉座である高御座の背後に飾られた障子で、中国古代の忠臣や聖人たちの肖像が描かれてきました。 本作は、慶長19年(1614)に狩野孝信(かのうたかのぶ)により描かれました。

 

出典:リビング東京Web

左から、帝鑑図・咸陽宮図屛風 狩野宗眼重信 六曲一双 桃山時代 17世紀 静岡県立美術館蔵 展示期間:11/27 ~12/23、重要文化財 賢聖障子絵 狩野孝信 二十面のうち八面 慶長19年(1614) 京都・仁和寺蔵 展示:四面展示替え

重要文化財《名古屋城本丸御殿上洛殿一之間北側襖絵 帝鑑図 明弁詐書(なごやじょうほんまるごてんじょうらくでんいちのまきたがわふすまえ ていかんず めいべんさしょ)》

名古屋城は、徳川家康の九男・徳川義直(とくがわよしなお)の居城として家康の命により築城されました。 本作は、三代将軍・徳川家光(とくがわいえみつ)上洛のおり宿泊施設として本丸御殿に増築された上洛殿の将軍と家臣の対面の間を区切る襖の裏表に描かれた図だそうです。

画面に余白が大きくとられ、主要なモチーフが対角線上に効果的に配された構図は、狩野探幽(かのうたんゆう)独自の瀟洒淡白な表現でありながらかえって「勧戒画」の意図を明確に意識させるものです。

 

出典:リビング東京Web

右側、重要文化財 名古屋城本丸御殿上洛殿一之間北側襖絵 帝鑑図 明弁詐書 狩野探幽 四枚八面のうち 寛永11年(1634) 名古屋城総合事務所蔵 展示期間:11/27 ~12/23

仏教と儒教、禅僧と儒教

お釈迦様も孔子様も老子様も一緒《三教図扇面(さんきょうずせんめん)》

仏教の釈迦牟尼仏陀(しゃかむにぶっだ)、儒教の孔子(こうし)、道教の老子(ろうし)の3人が和やかな雰囲気で仲良く一幅の絵画に収まっています。

中国で生まれた「三教一致思想」は、仏教・儒教・道教は、教義や方便は異なっていても根源は同じであるとする思想です。 空海(くうかい)の『三教指帰(さんきょうしいき)』には三教の比較がされているそうですが、本格的に日本に請来されたのは鎌倉時代以降で、円爾弁円ら禅僧によるそうです。

人々に心の理想を説き、徳高き人格者となる教えは、時代や地域、開祖の個性に違いはありますが、普遍の真理は黄金に輝く一筋の糸で繋がっているのかもしれません。

左は《虎渓三笑図(こけいさんしょうず)》。慧遠(えおん)・陶淵明(とうえんめい)・陸修静(りくしゅうせい)の3人が顔を寄せ合って笑う様子が描かれています。 作者の啓孫は、関東で活躍した16世紀の画僧。人物の表情や岩の描写に啓孫独自の表現が見られるそうです。

 

出典:リビング東京Web

右から、三教図扇面 「方外」印 一幅 室町時代 15~16世紀 神奈川県立歴史博物館蔵 展示:11/27 ~12/23、虎渓三笑図 啓孫 一幅 室町時代 16世紀 神奈川県立歴史博物館蔵 展示:11/27 ~12/23

栃木県指定文化財《孔子坐像(こうしざぞう)》

栃木県指定文化財指定の《孔子坐像》で、今も史跡足利学校(あしかががっこう)に祀られています。 六十六部(ろくじゅうろくぶ)と呼ばれる巡礼者をはじめ多くの人の結縁(けちえん)により造立され天文4年(1535)に完成したそうです。

中世に成立した足利学校は、日本最古の学校として歴代校長(庠主(しょうしゅ))を禅僧が務めていました。 戦国大名からも広く尊敬を集め、儒学学習の拠点として栄えました。 本展では、足利学校の貴重な儒教教典が紹介されています。

 

出典:リビング東京Web

栃木県指定文化財 孔子坐像 一軀 天文4年(1535) 史跡足利学校事務所蔵 通期展示

鳳凰(ほうおう)は優れた君主が出現するしるし、江戸幕府の思想

江戸時代、幕府は林羅山などの儒学者を重用し、武士から民衆まですべての階層に朱子学を学ぶことを奨励しました。 幕府の御用絵師だった狩野探幽をはじめ狩野派の絵師たちも、幕府の意向を反映し、儒教思想を反映した名品を描いています。

例えば、優れた君主が現れる印である鳳凰は狩野派絵師たちにより繰り返し描かれたモチーフでした。

《聖像(せいぞう)(帝堯像・文宣王(孔子)像・禹王像・周公旦像・帝舜像)・牡丹蒔絵祠堂形厨子(ぼたんまきえしどうがたずし)》、《桐松鳳凰図屛風(きりまつほうおうずびょうぶ)》

古の賢帝や聖人の像を祀った厨子《聖像(帝堯像・文宣王(孔子)像・禹王像・周公旦像・帝舜像)・牡丹蒔絵祠堂形厨子》。 名古屋城二之丸庭園内に建てられた聖堂に祀られていた聖像と安置するための厨子だそうです。裏扉には、金の金貝により鳳凰と麒麟(きりん)の意匠がほどこされています。

堯(ぎょう)、舜(しゅん)、禹(う)は、中国の伝説に登場する理想の君主とされ儒家により聖人とされて祀られています。 周公旦(しゅうこうたん)は、周建国の功臣の1人で、孔子が毎日夢に見るほど理想の聖人として敬っていた中国・周王朝の政治家です。

右は狩野伊川院栄信(かのういせんいんながのぶ)筆《桐松鳳凰図屛風》。

狩野探幽筆の《桐鳳凰図屛風》(後期展示:12/25 ~1/26)を転写したことがわかる作品とのこと。 栄信は原図を直接見た上で探幽の桃山花鳥画の特徴に沿いながら改変を加えているそうです。

桃山時代の狩野派の総金地花鳥画屏風を思わせる豪華さで、婚礼調度用とされてきました。 探幽筆の「桐鳳凰図屛風」の「鳳凰」が儒教的な意味があるのではとの指摘から、本作も同様の可能性があるとのことでした。

 

出典:リビング東京Web

左側、聖像(帝堯像・文宣王(孔子)像・禹王像・周公旦像・帝舜像)・牡丹蒔絵祠堂形厨子 徳川義直所用 五体・一基 江戸時代 17世紀 徳川美術館蔵 通期展示、桐松鳳凰図屛風 狩野伊川院栄信 六曲一双 江戸時代 19世紀 静岡県立美術館蔵 展示:11/27 ~12/23

江戸時代、庶民に広がる心の理想を写す鑑《忠臣蔵 夜討二 乱入》《雪中筍採模様筒描幕(丸に橘紋入)》

江戸時代後期、儒学を学ぶ機会は子供から大人まで広がり、人々の心の理想として、鑑となるお手本として浸透していたようです。 浮世絵にも儒教の思想をもとにした作品が多数描かれています。

歌舞伎の人気演目である「忠臣蔵」を描いた歌川広重(うたがわひろしげ)の横大判錦絵《忠臣蔵 夜討二 乱入》(左)。 右は、《雪中筍採模様筒描幕(丸に橘紋入)》。雪の中に病床の母のため筍を探す孟宗(もうそう)の姿です。

庶民の娯楽だった読本や歌舞伎にもストーリーや登場人物に儒教の影響を受けたものが生まれ、今も上演されるエンタメとなっています。 儒教美術と共に伝えられて来た孔子の五常の徳目は、現代の日本にも様々な形で伝わっているように感じました。

サントリー美術館「儒教のかたち こころの鑑─日本美術に見る儒教─」は2025年1月26日(日)まで。 是非お出かけください。

 

出典:リビング東京Web

左、忠臣蔵 夜討二 乱入 歌川広重 横大判錦絵 天保年間(1830 ~ 1844)中期 平木浮世絵財団蔵 展示:11/27 ~12/23、中央、假名讀八犬傳 第二冊 二代目為永春水・曲亭琴童・仮名垣魯文 著 歌川国芳・落合芳幾 画、七冊のうち 弘化5 ~慶応4年(1848 〜1868)刊 東京都立中央図書館特別文庫 展示:11/27 ~12/9※展示終了、右、雪中筍採模様筒描幕(丸に橘紋入) 一枚 明治~昭和時代 19 ~ 20世紀 サントリー美術館蔵 展示:11/27 ~12/23

小中学生向け「わくわくわーくしーと」 親子で美術館体験

作品をよく見ることを楽しんでいただくための小中学生向け鑑賞支援ツール「わくわくわーくしーと」。 例えば「この襖絵を見つけよう」のシートをひらくと作品解説と鑑賞の手引きとなる言葉がわかりやすく記されています。 親子で楽しみながら作品について学べる鑑賞支援ツールです。※数に限りがあります。

 

出典:リビング東京Web

小中学生向け鑑賞支援ツール「わくわくわーくしーと」

ミュージアムグッズ

ミュージアムグッズは、若冲画譜カレンダー2025年版(1‚980円)、和詩倶楽部 懐柄紙(550円)を購入。 若冲画譜カレンダー2025年版は、伊藤若冲が描いた京都・信行寺に秘蔵されている花卉天井画(非公開)を明治時代に画集『若冲画譜』としたものから表紙を含めて13枚を掲載したものです。 ※在庫がなくなり次第終了。

 

出典:リビング東京Web

ミュージアムグッズ サントリー美術館

カフェ 加賀麩不室屋

カフェ 加賀麩不室屋では展覧会にちなんだメニュー麩餅のごまあんぜんざい(2,000円)をいただきました。 黒ごまの豊かな風味のごまあんにふわりとした麩餅が上品な一品です。 ※価格は全て税込です。

 

出典:リビング東京Web

麩餅のごまあんぜんざい(2,000円) カフェ 加賀麩不室屋

〇サントリー美術館
URL:https://www.suntory.co.jp/sma/
住所:〒107-8643 東京都港区赤坂9-7-4 東京ミッドタウン ガレリア3階
TEL:03-3479-8600
※10:00〜11:00は「GALLERIA (ガレリア)」の1F入口から入館できます。

〇儒教のかたち こころの鑑─日本美術に見る儒教─
会期:2024年11月27日(水)~2025年1月26日(日) ※作品保護のため会期中展示替えがおこなわれます
開館時間:10:00~18:00(金曜日は10:00~20:00)、1月25日(土)は20時まで開館(いずれも入館は閉館の30分前まで)
※開館時間は変更の場合があります
休館日:火曜日、12月30日(月)~1月1日(水・祝)※1月21日(火)は18時まで開館
入館料:(当日):当日一般 ¥1,700、大学・高校生 ¥1,000
※中学生以下無料
※障害者手帳をお持ちの方は、ご本人と介護の方1名様のみ無料
※最新情報はウェブサイトでご確認ください

*ミュージアムショップ
営業時間:10:30~18:00
※火曜日・展示替期間は11:00~18:00、展覧会会期中の金曜日は20:00まで営業
定休日:展示替期間中の火曜日、年末年始

○カフェ 加賀麩不室屋
営業時間:11:00~18:00
※展覧会会期中の金曜日は20:00まで営業、ラストオーダーは閉店30分前
定休日:展覧会会期中の休館日、展示替期間中の月曜日・火曜日、年末年始

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