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「病気を知らせたら息子は落語家を諦めてしまうかもしれない」 意識が朦朧とする父の耳元で、最初で最期の“落語会” 『3分間で泣ける話』

  • 2024.12.21
【写真・画像】 1枚目
ABEMA TIMES

テレビ朝日「バラバラマンスリー」の水曜枠『3分間で泣ける話』が18日深夜に放送され、「落語」をめぐる父と息子のエピソードが紹介された。

【映像】女優号泣 浪川大輔の朗読

実話に基づく3分間の感動エピソードを豪華声優陣が朗読する同番組。MCは藤井隆、語り手は浪川大輔、内田真礼が務め、“涙もろいゲスト”として注目の若手女優・富田望生が登場した。

■『薮入り』(語り手:浪川大輔、内田真礼)

子どもの頃、父とよくドライブに行った。流れていたのはいつも落語だった。

お気に入りの話は『薮入り』。久しぶりに息子が帰ってくるのが楽しみで仕方ない父親が主人公だ。あれもこれも食べさせたいと、とんでもない量の食事を用意しようとしたり、1日じゃ回りきれないほどいろんな場所に行こうとしたり。

「バカだな」と父は笑った。僕は主人公がどこか父に似てるなと思って、やっぱり笑った。

落語家になりたいと伝えた時、父は猛反対した。落語好きな父がどうして反対するのか、理解できなかった。

結局、父を1人残して家を出て、落語家になった。頑固な僕は、それっきり実家に帰らなかった。

【写真・画像】 2枚目
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何年かして、ようやく自分で落語会を開けるようになった時、父の病気を知った。医師からは「もう長くない」と聞いた。もし僕が病気のことを知ったら、看病しようと落語家を諦めてしまうかもしれない。そう思って父は、僕に病気のことを知らせなかったらしい。

病院で会った父は意識が朦朧としていた。僕は父の耳元で、初めての落語会を開いた。演目はもちろん、『薮入り』。「おっかあ。せがれ帰ってきたらよ、好きなもん、うんと食わせてやれ」「早くお寝なさいよ」。

退院したら父は、実家に僕を呼ぼうとしていたと、後から聞いた。食事をたくさん用意して、旅行も計画して、『薮入り』そのままだ。

翌日、父は亡くなった。もっと素直になればよかった。今から僕にできるのは、大事に大事に『薮入り』を演じることだけだ。

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