1. トップ
  2. おでかけ
  3. 【今どきのアート】画家のパレットにフォーカスした楽しい展覧会が酒田市美術館で開催中

【今どきのアート】画家のパレットにフォーカスした楽しい展覧会が酒田市美術館で開催中

  • 2024.12.21

こんにちは。フリーキュレーターのSEIJIです。価値観や表現方法が多様化しているアートの世界を、ニュースや展覧会、作家や作品に注目したコラムにしてお届けする「今どきのアート」。近頃、気になったのがコチラ!

出典:シティリビングWeb

アンリ・マティス≪パレット≫1943年頃 油彩・紙

画家のパレットにフォーカスした楽しい展覧会「画家たちのパレットと絵画展 =マティス、ピカソから日本近現代の巨匠まで=」が酒田市美術館で開催中!

­油彩や水彩で絵を描いたことがある人は知っていると思いますが、絵の具を使う際に「パレット」の存在はかかせません。

「パレット」は絵具を溶き混ぜ合わせるための画材。何色もの絵の具をパレットにのせることで、いちいち色を変える度に絵の具を取り替える手間が省けます。手元に絵の具があることで画家が描くことに集中できることもその便利さではないでしょうか。

「パレット」は大切なパートナー

そして、画家にとって自分が使い慣れたパレットは、切っても切れない絵を描くためのパートナーなのです。

パレットにのせられた絵の具の量や色の並べ方は、画家ひとりひとりの個性や色彩感覚が表れ、画家たちの創作の秘密を私たちに伝えてくれるようです。

そんなパレットを眺めていると、画家が描いているときの光景が目に浮かんでくるような気がします。

出典:シティリビングWeb

渡邊榮一≪パレット≫2005年 油彩・コラージュ・板

日本では茨城県にある笠間日動美術館に、世界的にもめずらしい国内外の著名な画家たちが愛用した約350点のパレットが所蔵されているそうです。画家とパレットとの向き合い方を知ることができる貴重なコレクションですね!

パレットを作品として観賞するというのはなかなか珍しく、作品をつくる過程で作家がどんな風にパレットを活用したのか、どんなパレットを使っていたのかなどなど、興味がわく展示には目が離せません。

出典:シティリビングWeb

遠藤彰子≪パレット≫2010年 油彩・板

巨匠が使ったパレット、そして絵画

今回の展覧会ではパプロ・ピカソ、アンリ・マティス、サルバドール・ダリといった海外の巨匠たち、そして安井曾太郎、梅原龍三郎、宮本三郎といった日本近現代の巨匠たち、さらに森田茂、國領經郎、斎藤長三、渡辺おさむといった酒田市美術館ゆかりの作家まで幅広い作家のパレットと絵画を紹介しています。

展示されているパレットの中には絵が描かれたユニークなものも多数含まれているので、画家の遊び心にも触れながら、その筆遣い、息遣いを作品とともにお楽しみください。

出典:シティリビングWeb

渡辺おさむ≪クリームパレット≫2022年 モデリングペースト・アクリル絵の具・板

酒田市美術館の見どころは特別展だけではありません

酒田市美術館の中庭には白い大理石の彫刻があります。彫刻家の安田侃がつくった作品「翔生(しょうせい)」です。

この作品は酒田市美術館と庄内平野を繋ぐシンボル。美術館のガラス張りのエントランスから「翔生」に目を注ぐと、視野の範囲から彫刻作品の背景に広がる出羽三山や鳥海山、そしてどこまでも続く広い空に心が奪われてしまうのです。

観る人の立場でつくられた空間は「翔生」という作品を媒介にして、美術館館内に庄内平野の風景を引き込ませ、その風景までもが美術館の一部であるかのように建築家・池原義郎が設計した特別な空間なんだとか。

出典:シティリビングWeb

モダンでアートな椅子も観られるかも!

酒田市美術館では、おしゃれな椅子が観られるのも特徴。

例えば、1955年に発表されたS664 。アメリカや北欧で興ったミッドセンチュリーの影響を受けた丸みを帯びたポップで大胆なフォルム。

シェル状にデザインされた一体成型の背座は、幾何学的に構成されたシンプルなフレームに支えられることよって、まるで空間に浮かぶオブジェのようです。

出典:シティリビングWeb

S664 THONET社 サイズ:W580×D610×H865(SH450)mm デザイナー:エディ・ハリス(Eddie Harlis)

そしてカッシーナ。こちらは脚から始まり、肘掛、背へと、しなやかな木のリボンが優美な曲線を描く椅子。織物がつくりだす上着の襟などの美しい造形をモチーフとして考えられています。繊細なスティールと木の組み合わせは柔和でかわいらしい印象です。

出典:シティリビングWeb

カッシーナ(Cassina) REVERS952リヴァースチェア イタリア カッシーナ社(1760年形成) サイズ:W630×D515×H760(SH450)mm 素材:フレーム=アルミダイキャスト アーム・座=ビーチ材(ナチュラル/ブラック染色)

ただ今、椅子のメンテナンス中とのことなので、館内に設置していない場合があります。椅子を観たい人は受付に聞いてみてください。

和紙でつくられたエントランス パーティション

「建築空間に生きる和紙造形の創造」をテーマに制作された堀木エリ子のオリジナル和紙。硝子、アクリル貼り、コーティングなどの技術との融合でつくられた作品は、「燃える、汚れる、破れる、退色する、精度がないなど」といった従来の和紙の難点を克服しています。

出典:シティリビングWeb

学芸員からのひとこと

「パレットには画家が笠間日動美術館へ寄贈する際に親愛の意を込めて絵を描いているものも多くあります。その中には、画家が好んで描いていたモチーフや寄贈当時に画家が挑んでいた画題が描かれていることも多く、パレットを画材として見るだけでなく作品として見ても十分楽しめます。ぜひ個性豊かなパレットをご高覧ください」(学芸主任 武内さん)

圧倒的で荘厳な山形県の自然は、日常の心身の疲れを心ゆくまで癒してくれることでしょう。雪景色が美しい冬の山形県にぜひどうぞ。

出典:シティリビングWeb

会期は2025年1月19日(日)まで。展覧会の詳細は下記のURLからご確認ください。

酒田市美術館

https://www.sakata-art-museum.jp/

プロフィール/SEIJI(小太刀正史)

フリーキュレーター。MeDEL個人事務所主催。学芸員の目線から美術館の情報を発信する活動を始める。自身もオブジェ作家として活動歴あり。

OBJECT東京展入選 From A The art日本オブジェ部門佳作 日本文化デザイン会議

ETDA展参加など。

元記事で読む
の記事をもっとみる