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亀山の負傷が生んだ緊張感の正体とは? ドラマ『相棒 season23』第8話、サブタイトルの“あなた”が表すものを解説レビュー

  • 2024.12.21

毎週水曜夜9時より放送中のドラマ『相棒 season23』(テレビ朝日系)。国民的人気を誇るご長寿刑事ドラマの“黄金コンビ”が帰ってきた! 杉下右京(水谷豊)×亀山薫(寺脇康文)が、共に事件を追う。さっそく、第8話の内容を振り返っていこう。(文・Naoki)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価 レビュー】
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【著者プロフィール:Naoki】
1995年生まれのエンタメ企業勤務。ドラマ、漫画、ゲームなどサブカルをこよなく愛するオタクライター。自身でも作品ファンを集めたオフ会を開いたり積極的にファンコミュニティを拡大させている。記事は知らない人には分かりやすく、知ってる人にはより楽しめるを信条に活動中。

『相棒 season23』第8話 ©テレビ朝日
『相棒 season23』第8話 ©テレビ朝日

【写真】 亀山の負傷で緊迫感に包まれる…貴重な未公開写真。ドラマ『相棒 season23』劇中カット一覧

右京「見返りを求めず、藍里さんを純粋に支えたい…という事でしょうかねぇ」

相棒season23 第8話は切なさと悲しみが合わさったドラマチックな物語だった。

脚本家は前作に続いて川崎龍太氏で、前回は鮮烈な“復讐”を描いたのに対して今回は悲愛入り混じる“贖罪”を描いてくれた。

そんな今回の物語は視覚障害者のランニング伴走ボランティアをしていた亀山が障害者の藍里(森マリア)共々襲われる。しかし犯人の木浪(藤井アキト)が本当に狙っていたのは藍里の同僚で普段彼女の伴走をしている花屋の野瀬(レイニ)であった。

捜査を進めるも木浪は何者かに殺され、更に2年前発生した未解決であった強盗殺人事件の犯人であった事が判明する。また藍里が失明したのもこの強盗殺人事件が原因であった事も発覚する。

特命係は野瀬をマークして事件解決の糸口を探っていく。

『相棒 season23』第8話 ©テレビ朝日
『相棒 season23』第8話 ©テレビ朝日

今回の見所は2つだ。1つ目は刺された亀山薫である。

『相棒』ファンの中では刃物>拳銃という認識がある。拳銃に関してはレギュラー陣の中ではカイトや芹沢や出雲や角田や内村部長や社…右京に至っては3度も被弾しているが、誰1人として殉職せず、後ろ遺症も無いためドラマを盛り上げる小道具でしかない。

一方の刃物については小野田官房長が死亡し、三浦刑事が杖無しで生活できないようになり警察を辞職するというトラウマがある。刃物で刺されても例外的に生き延びたのは冠城亘くらいだ。今回、そんな例外に亀山も追加された。しかも傷が浅いとはいえ即行で退院して捜査できるほどにまで回復している。

ナイフで腹を刺されているとなると流石の右京も心配して急いで病院へ駆けつけ、伊丹も口は悪いが亀山を気遣い安静にするように話をしている。

無理をしてでも事件に参加しようとするのは第4話「2つの顔」で毒の胞子を吸い込むなど命懸けで捜査をした右京と重なる部分もある。

肉体派の亀山薫と頭脳派の杉下右京は対照的ではあるが、根本は似ているというのが“相棒”たる所以であろう。

『相棒 season23』第8話 ©テレビ朝日
『相棒 season23』第8話 ©テレビ朝日

2つ目は野瀬と藍里の関係である。

野瀬の正体は2年前の強盗殺人事件の共犯者で、藍里を失明させた張本人でもあった。彼は当時妹が心臓病で入院しており、その治療費を稼ぐ為に事件に参加していたのである。

しかし、手術前に妹は亡くなり、自首する前に怪我をさせた藍里がどうなっているかを確かめたくなり会いに行ってしまう。そこで見た藍里は、失明と将来の夢を絶たれ絶望し、自殺をしようとしていた。

以降野瀬は藍里の目が治るまでは自首せずに彼女に尽くすと決めて偽名で仕事を斡旋し毎月支援金を彼女に送り届け、普段は優しい同僚として彼女のサポートをしながらランニングの伴走も行っていた。

野瀬が贖罪の為に優しくしてくれているとは知らない藍里は徐々に彼に対して心惹かれていく。しかし遂に、藍里の視力回復手術が決まり、彼女は手術室へ行く前に野瀬と店長に明るく微笑む。野瀬も笑顔で彼女を見送る…視力が回復したらもうその笑顔は見れないと分かった上で。

手術は上手くいき特命係と共に野瀬は彼女へ会いに行く。

そこで言われた言葉は「この人が犯人です! 捕まえて下さい!」

野瀬は彼女の目が治っていたと安堵し涙を流し、また藍里も声で野瀬である事に気付き悲痛な声をあげる。

『相棒 season23』第8話 ©テレビ朝日
『相棒 season23』第8話 ©テレビ朝日

改めて今回のサブタイトルは「瞳の中のあなた」。

憎むべき相手に対しては“あなた”という表現は使わず“あいつ”という表現が適当であるが、自分が知る優しい野瀬を信じたいが、それでも瞳の中に残っている野瀬は間違いなく悪人であり恨んでいた相手でもある。

そんな藍里の複雑な心境を“あなた”という表現に凝縮されている。

『相棒』で視覚障害者が登場するのは実は今回で3度目だ。

1度目はS15「パスワード」、2度目はS18「右京の目」である。

こちらも今回に負けず劣らずの傑作であるが、『相棒』は彼等に限らずハンディキャップのあるマイノリティを描くのが上手い。それはマイノリティを弱い存在やマジョリティを憎む存在にするのではなく、等身大の人間と定義した上で強さや弱さを描いているからである。

脚本家の川崎氏曰く、藍里の名前は“eye”と“愛”から名付けているという事でそれを踏まえて視聴するとより一層感慨深くなる。

(文・Naoki)

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