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「すれ違う人全員、家族か知り合い」「道路に寝そべって星空鑑賞」限界集落のリアルを描いた、笑って驚くコミックエッセイ

  • 2024.12.20

実家での「当たり前」が、友人には驚きの連続だった――そんな経験はないだろうか。「これって我が家だけだったのか!」と気づかされる、生活のギャップ。そのギャップがとんでもないレベルに到達していると驚かされるのが『日々限界集落』(うどん粉/主婦の友社)だ。著者・うどん粉氏は、限界集落と呼ばれる地域で生まれ育ち、その日常をユーモアたっぷりの4コマ漫画で描く。エンタメニュースサイト「ロケットニュース24」で連載中だ。

外ですれ違う人は全員親戚か知り合い、バスは1日1本程度しかない。遊びに来た友人が思わず引き返すような山道の先にある自宅…。限界集落は一言でいうなら「秘境」のような場所。そこでの暮らしは、私たちの想像を超える野性味に溢れている。愛犬との散歩では熊と遭遇しないように音楽を流したり、大声で歌を歌ったり。

道路のど真ん中で寝転んで星空を楽しむ贅沢なひととき。

これらの描写からは、自然に溶け込む生活の厳しさと同時に、その豊かさも伝わってくる。

自然豊かな田舎暮らしに羨ましさを覚えるかもしれないが、虫や爬虫類との闘いが日常茶飯事であり、安易に憧れてはいけない世界でもある。

驚きに満ちた限界集落での日々だが、都会で暮らした際に著者が覚えた違和感も独特で面白い。特に都会を“無臭”と感じたというエピソードは新鮮だった。

自動車の排ガスや、家庭やお店の換気扇から漂う香りなど、都会にも匂いは溢れている。しかし、それらはどれも人工的なものが多い。土や植物など自然の香りに触れると「空気がおいしい」「空気がきれい」と感じるのは、我々が日々無臭の中で生活しているからなのかもしれない。

また、ポストにたくさんのチラシが入っていることや、隣の家の物音が聞こえることといった、都会ではストレスの一因となりがちなことを、著者は目新しさとして楽しんでいる。

限界集落とまではいかなくとも、地方から上京した読者にとっては「わかる!」と共感し、懐かしい気持ちになるだろう。また、変わらない日々に疲れている人にとっては、都会暮らしの面白さを再発見できる一幕だ。

本作では、読者が驚くような限界集落の日常をユーモアを交えて描いている。大変そうだと感じる部分もあるが、四季折々の自然に触れる生活は贅沢さが漂う。過酷に見える生活も決してネガティブに捉えず、むしろ楽しむ著者の姿勢が印象的だ。久々に帰省すると鳥の声や風の音に安堵するなど、本作全編を通して著者の地元愛が感じられる。

地元なんて、実家なんて…と普段は思いがちだが、本作を読むと自分の故郷が恋しくなる。次に帰省した際には、思わず「我が家ならでは」の一面を探してみたくなるだろう。この冬、心温まる1冊としてぜひ手に取ってみてほしい。

文=ネゴト / Micha

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