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省エネ先輩×あざと可愛い後輩がゆっくりと“好き”を深める姿が尊い! 『みなと商事コインランドリー』原作者がおくる青春BL小説

  • 2024.12.20
ダ・ヴィンチWeb
『フミヤ先輩と、好きバレ済みの僕。』(椿ゆず/スターツ出版)

BLに興味はあるけどまだ読んだことがない。爽やかなテイストのBLが好き。そんな人にぴったりのレーベルがこの冬、新たに立ち上げられた。スターツ出版・キャラクター文庫初のBLレーベルBeLuck文庫は、“この恋、ずっと見守りたい!”をコンセプトに、学園ものや青春ものを隔月で展開。創刊ラインナップを飾る『フミヤ先輩と、好きバレ済みの僕。』(椿ゆず/スターツ出版)は、ドラマ化された超人気作『みなと商事コインランドリー』原作の椿ゆず氏がおくる、美意識が正反対な先輩×後輩を描く青春BL小説である。

“さっちゃん”こと竹内幸朗は、メイクとファッションが大好きな高校1年生。友人と一緒に出かけたカフェで、幸朗は髪をハーフアップにしたイケメン店員を一目みて心を奪われた。勢い余って「僕ってあなたの恋愛対象に入りますか?」と食い気味に尋ねると、相手はしばらく考えた末に「入り…ますね」と答えてくれた。

店員の名前は貞文哉、幸朗の2つ年上の高校3年生だった。“フミヤ先輩”と幸朗は、これから少しずつ親交を深めながらゆっくりとお互いを知っていくことを約束する。出会いに浮かれる幸朗だったが、彼の信念を揺るがす事実に直面することになる。ある日、学校で突然声をかけてきたのは、もじゃもじゃ頭をした超モサい外見の男。なんと、彼こそがフミヤ先輩その人だったのだ。高いポテンシャルを持ちながら、面倒くさいと学校では容姿にまったく気をつかわない省エネ系男子の文哉に、美意識にこだわりがある幸朗は困惑するが……。

幸朗のナンパから始まった関係だが、ふたりにとって互いの存在はまだ“気になる相手”に留まっており、恋愛感情まではたどり着いていない。幸朗には過去に大切な人から投げつけられた言葉で深く傷ついた経験があり、それが原因で他人を簡単には好きになれなくなっていた。そんな彼が久しぶりに心を動かされ、思わず声をかけてしまった相手が文哉なのである。文哉もまた、突然に声をかけてきた幸朗に戸惑いながらも、その気持ちに対してどこまでも誠実に向き合おうとする。

同じ学校に通うことが判明したふたりは、高校生活の中で互いの新しい一面を知り、少しずつ相手への思いを深めていく。“好きかもしれない”が“好き”へと移りゆく様など、ステップを一段一段踏みながら進展していくふたりの関係を、丁寧かつ甘やかに描いているのが本作の大きな魅力だ。放課後の屋上での膝枕、自宅でのデート、文哉の手作り弁当を一緒に食べる昼休み、ふたりが大活躍する文化祭……。日常の何気ない、けれども特別で大切な時間と、揺れ動く思いを鮮やかに切り取る筆致が、瑞々しくも美しい。

自分が魅力的に見える瞬間を熟知した上でアプローチをかける幸朗と、そんな彼のあざとさすらも楽しみながら受け止める文哉。じゃれあうようなふたりのやりとりは、なんとも甘酸っぱい。物語はふたりを中心に、彼らを取り巻く友人やクラスメイトたちの姿にも光を当てていく。青春小説としても読みどころの多い本作は、BLの世界に初めてふれる人にとっても素晴らしい入口となるだろう。

文=嵯峨景子

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