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ネズミを狩って食べる「肉食リス」がカリフォルニア州で初発見される!

  • 2024.12.20

チップとデールのように、リスは愛らしい生き物の代表として語られることが多いです。

彼らは主に木の実や果実を食べる草食性で、どんぐりを口いっぱいに頬張るキュートな姿が有名でしょう。

ところがリスには、私たちの知らない血生臭い一面があったようなのです。

このほど、米カリフォルニア大学デービス校(UC Davis)の最新研究で、ネズミを狩って食べる「肉食性のリス」が同国で初めて確認されました。

確かにリスは時々、昆虫やトカゲを食べることで知られますが、同じげっ歯類のネズミを捕食した記録は極めて稀であると考えられています。

研究の詳細は2024年12月18日付で科学雑誌『Journal of Ethology』に掲載されました。

目次

  • ネズミを捕食する「肉食リス」をカリフォルニアで初発見
  • なぜ急にネズミを食べ始めたのか?

ネズミを捕食する「肉食リス」をカリフォルニアで初発見

肉食が確認されたカリフォルニアジリス/ Credit: ja.wikipedia

今回、肉食行動が確認されたのは、米カリフォルニア州に生息する「カリフォルニアジリス(学名:Otospermophilus beecheyi)」です。

カリフォルニアジリスは他のリスと同様に、木の実や種子、果実などを主食とする草食性であることが知られていました。

そんな中、研究主任の一人であるソニア・ワイルド(Sonja Wild)氏は、フィールドワークから戻ってきた学生たちが「リスがネズミを食べているのを見た」との報告を受けます。

ワイルド氏は学生の話を聞いて「いや、何を言っているのかわからない」と言ったそうです。

というのも、ワイルド氏はそれ以前に何百匹という野生のリスを観察してきましたが、一度たりともリスがネズミを捕食する光景は見たことがなかったからです。

しかしそこは学生の方も抜かりありません。

彼らはちゃんと証拠となる映像をカメラに記録していたのです。

その映像を見たワイルド氏は「自分の目を疑いました」と話しています。

実際の映像の一部がこちら。

ネズミを狩るリス/ Credit: Sonja Wild(youtube, 2024)

カリフォルニアジリスがネズミを狩って食べる記録はこれが初めてだといいます。

そこでワイルド氏らは本格的に生態調査を行ったところ、驚くことに、リスがネズミを捕食する行動が数多く見つかったのです。

これはリスの食性に対する従来の理解を根本から変えるものでした。

なぜリスたちはネズミを狩り始めたのでしょうか?

なぜ急にネズミを食べ始めたのか?

今回の調査は同州コントラコスタ郡にあるブリオネス地域公園にて、2024年6月10日〜7月30日にかけて行われました。

捕獲した野生のカリフォルニアジリスたちにタグ付をし、それぞれの食事行動を映像や写真などで追跡観察しています。

その結果、リスとネズミの接触は調査期間中に74回確認され、そのうち42%の割合でリスがネズミを捕食していたことがわかったのです。

ネズミを捕食したリスは性別もバラバラで、大人だけでなく子供も狩りに参加しており、性別や年齢に固有の行動ではないようでした。

a:ノネズミ、b:ノネズミを捕食するカリフォルニアジリス/ Credit: Sonja Wild et al., Journal of Ethology(2024)

では、なぜリスたちは急にネズミを捕食するようになったのでしょうか?

実はカリフォルニア州では10年ほど前からネズミが繁殖し始めており、調査対象地域でも個体数がどんどん急増していたのです。

それまで木の実や種子をメインに食べてきた地元のリスたちも、急に増えてきたネズミを餌資源として利用し始めたのだと考えられています。

調査では、リスの肉食行動は7月の最初の2週間にピークを迎えていましたが、それはネズミの数が繁殖により急増している時期と一致していました。

ノネズミの肉をがっつくリス/Credit: Sonja Wild(youtube, 2024)

この結果を受けて、同チームのジェニファー・スミス(Jennifer Smith)氏は「リスがネズミを捕食する行動は過去に見たことがなかったため、これは非常に衝撃的な事実でした」と話しています。

それに加えて、スミス氏は「リスは環境に合わせて餌資源を柔軟に変えられる日和見主義者なのだと考えられます」と指摘しました。

つまり、リスはどんな状況でも木の実や種子をメインとする草食を貫くのではなく、ネズミが増えてきたら肉食に切り替えることも可能だったのです。

「最も驚くべきはネズミの急増に対応してリスが食性を変化させたスピードの速さでした」とスミス氏は指摘します。

この環境適応力はリスが人為的な活動による生息地の変化にすばやく対応できる可能性を示唆するものです。

「今回の研究は従来のリスに対する見方を一変させ、人間が引き起こした気候変動や干ばつの中でも、リスたちは変わりゆく世界に順応して生きていける潜在能力があることを示している」とスミス氏は述べています。

チームは今後、リスの肉食行動はどの程度広がっているのか、親から子へどのように受け継がれているのかなど、不明な点を解決していく予定とのこと。

リスはアニメや映画の中で愛らしいキャラとして描かれがちですが、どうやらただ可愛いだけでは済まないようです。

こちらはリスがネズミを捕食する映像をまとめたものになります。音声はありません。

参考文献

Carnivorous Squirrels Documented in California
https://www.ucdavis.edu/climate/news/carnivorous-feeding-squirrels-documented-california

Ground Squirrels Filmed Hunting And Eating Voles, A “Shocking” First For The Species
https://www.iflscience.com/ground-squirrels-filmed-hunting-and-eating-voles-a-shocking-first-for-the-species-77270

元論文

Vole hunting: novel predatory and carnivorous behavior by California ground squirrels
https://doi.org/10.1007/s10164-024-00832-6

ライター

大石航樹: 愛媛県生まれ。大学で福岡に移り、大学院ではフランス哲学を学びました。 他に、生物学や歴史学が好きで、本サイトでは主に、動植物や歴史・考古学系の記事を担当しています。 趣味は映画鑑賞で、月に30〜40本観ることも。

編集者

ナゾロジー 編集部

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