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「港区女子に苛立つ…」男に媚びられない女の葛藤。財と権力ある男の力、利用できる?

  • 2024.12.20

「港区女子」。それは何かと世間の好奇心を煽る存在。

彼女たちは一体どんな女性なのか? そんな議論が度々上がるけれど、港区で暗躍する素人美女、パパ活女子、あるいはラウンジ嬢など……「港区女子」の意味合いや捉え方は人それぞれ。

そして謎に包まれた彼女たちにも時間は平等、歳をとる。港区女子たちは、一体どんな着地をしているのだろうか。現在アラフォーとなっていると思しき元港区女子たちの過去と現在に迫る。

※この物語は実際の出来事を元にしたフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません

港区女子仲間のお話はこちら
▼朝美<学生時代>

<現在>

▼由利<学生時代>

<現在>

【茜の過去】タクシー代は「使わない」港区女子

「それショパール? かわいー! いいなあ、また買ってもらったの?」

「朝美こそ! そのラブブレス、純司さんにもらったんでしょ? 似合ってる」

就活生という大事な時期。学生の身分でありながら深夜の西麻布でハイジュエリーを見せ合って騒ぐ友人たちを、私は静かに眺めていた。

はどこぞやの大金持ちにダイヤが踊るショパールの時計を、は最近CMに出始めたサッカー選手から贈られたカルティエのラブブレスをこっそりお揃いで着けているという。

「このあとどうする? 聡くんに迎えにきてもらって、少しお茶して帰ろうか」

朝美が携帯をいじりながら言う。

週末の金曜日、私たちは何件もの食事会やイベントをはしごするのが常だ。特に年末になると、それぞれがあちこちの会に呼ばれ忙しい。

今日は1次会でベンチャー系の社長たちと上海蟹を食べ、2次会で外資系金融勤務の男たちとカラオケに行った。それぞれ1万円ほどのタクシー代をもらいつつも、私たちは帰宅せずに西麻布のアッピアアルタでデザートの盛り合わせとハーブティーを頼みおしゃべりをしている。

聡くんというのは、この近所に住んでいる慶應幼稚舎上がりの同級生の男の子で、朝美が一通メールを送れば30分以内で親のベンツに乗って現れるという、いわゆる「アッシー」のような存在だ。

彼のおかげで、おじさんから渡されるタクシー代はまるまる私たちのお小遣いに変わる。

育ちのいい男の、不毛な恋

「でた! 朝美専属の『サトシ交通』!」

由利が言い、適度にアルコールが回った2人はケラケラ笑う。

「よくあんなにマメに運転手ができるよね。いくら尽くしたってさ、朝美への気持ちは絶対に報われないのに。朝美って本当に悪い女。裏でフリータクシー呼ばわりされてるなんて、彼は思ってもないよ」

「やめてよー、だって向こうから『何してる?』ってずっと連絡が来るからさ。今ようやく暇になっただけ!」

「それにしても聡くん、本当に育ちがいいんだろうね。嫌な顔ひとつしないで、いつ朝美に呼び出されてもニコニコやってきて、友達まで全員送ってくれるんだから……」

私は同調して笑顔を貼り付けながらも、一体何をしているんだろうと、どこか冷めた気持ちになる。毎晩毎晩男たちの誘いを渡り歩き、よく飽きもせず笑っていられるものだ。

就活の面接帰りで、私は1人黒髪を引っ詰めて結び、リクルートスーツを着ている。朝からいくつかの会社を回ったので疲れていた。

2人はキャーキャーとスイーツをたくさん選んだくせに、ほとんど口をつけずに優雅に座っている。そのせいで、疲弊で糖分を我慢できない私ばかりが嫌でもフォークを伸ばすことになった。

彼女たちの黄色い声に苛立つのは、きっと疲れているからだ。

「受け取れない」女

由利はどこかのおじさんのコネで地方局のアナウンサーの内定を早々に掴んでおり、朝美は持ち前の要領の良さで好条件の一般職の内定をいくつも得ていた。

私のように本気で総合職の内定を狙い、真面目にコツコツと就活に励む女は周りにほとんどいない。おじさんのコネ、親のコネ、生まれながらの顔面偏差値にモテ力。都会には目に見えない特別なパスポートが溢れている。

それらを使えば人が羨む人生を簡単に手に入れられることを、大学で上京して初めて知った。ある程度の美貌を備えた女の人生はそう難しくない。

でも私は持っていない。使いこなすことができないし、使いたくもないから地道に1人頑張るしかない。

地元ではなかなかの優等生だったし、外見だってよく褒められた。円満な家庭で育ち、特段コンプレックスを持っていたわけでも、不自由があったわけでもない。上京するまでは東京の生活を楽しみにしていたし、自分の力量なら都会でもそれなりに通用するだろうと漠然と思っていた。

しかし、高価なジュエリーをさらりと身につけ、大金持ちや有名人と平然と付き合い、男からの誘いが絶えない2人とは明らかに人種がちがう。

財や権力のある男から、それらを平然と受け取れる女と、受け取れない女。

世の中の女はおそらくこの2種類に分かれる。私は後者の女だったのだ。

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取材/山本理沙 イラスト/黒猫まな子

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