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【虎ノ門】大倉集古館「特別展 志村ふくみ 100歳記念 ―《秋霞》から《野の果て》まで―」

  • 2025.1.5

人間国宝・志村ふくみ、「一色一生」から「いろなきいろ」へ

大倉集古館で開催中の「特別展 志村ふくみ 100歳記念 ―《秋霞》から《野の果て》まで―」[2024年11月21日(木)~2025年1月19日(日)]を見て来ました。

染織家で人間国宝の志村ふくみは大正13年(1924)滋賀県近江八幡に生まれました。

本展は、令和6年(2024)9月30日で100歳を迎えた志村ふくみの100歳記念の特別展です。 染織家になるきっかけとなった《秋霞》から《野の果て》まで、「一色一生」から「いろなきいろ」へ染織を通して芸術への情熱を紡いだ志村ふくみ100年の作品を振り返る展覧会です。

※展示室内はすべて撮影禁止です。本記事に掲載の写真は、すべて主催館の許可を得て撮影したものです。

志村ふくみの芸術の源流《秋霞(あきかすみ)》と《野の果て Ⅱ》

志村ふくみが染織家の道にはいるきっかけとなった作品《秋霞》(右)。つなぎ糸を使った初めて織ったきもので日本伝統工芸展初受賞となりました。 すぐ左は、母・小野豊の作品《吉隠》です。ふくみが染織の道を志したのは母の影響がありました。

やがて民藝運動の柳宗悦と、柳と志を同じくする若手の工芸作家とも交流し、染織家の青田五良から糸紡ぎと織物の手ほどきを受けたそうです。

日本ムラサキ(国産の紫草)で染めた紫、紅花の淡いピンク、春草の萌黄色のグラデーションが春の野を思わせる《野の果て Ⅱ》(左側)も展示されていました。

《野の果て Ⅱ》は、亡き兄で夭折の天才画家だった小野元衞との思い出の童話「野の果て」がモチーフとなっています。 ふくみは、自身の美の基準があるとすれば「亡き兄の妥協を許さぬ目」であると『語りかける花』「野の果て」で語っています。

 

出典:リビング東京Web

右から、志村ふくみ 《秋霞》 1958年 紬織/絹糸、藍 個人蔵(通期展示)、小野豊 《吉隠》 1960年頃 紬織/絹糸、藍 個人蔵(前期展示) 、志村ふくみ 《近江の帯 Ⅰ》 1960年 紬織/絹糸、藍、刈安、渋木、カテキュー 個人蔵(前期展示)、志村ふくみ 《野の果て Ⅱ》 2023年 紬織/絹糸、紫根、紅花、春草 個人蔵(通期展示)

薄緑色の淡い光のような《天蚕の夢(てんさんのゆめ)》

風にフワッとたなびくような軽さを感じさせる《天蚕の夢》。薄緑色の淡い光を放つ天女の羽衣のようなイメージを感じました。

「天蚕(てんさん)」とは、櫟(くぬぎ)の木に生殖してその葉を食べて緑色の大きな繭を作る天然の蚕の一種だそうです。 天蚕の糸は、とても繊細な糸で、機にかけると切れてしまいなかなか織れなかったとか。 「私を切らないで、やさしく織って」という声がどこからかしたようだったと語る作家は、機を織る手をやさしく糸を愛撫するようにしたところ切れなくなり織りあげることが出来た、と語っています。

 

出典:リビング東京Web

志村ふくみ 《天蚕の夢》 1995年 平織/天蚕 個人蔵(通期展示)

新作能「沖の宮(おきのみや)」に込めた未来へのメッセージ

詩人・石牟礼道子(いしむれみちこ)の原作と、染織家・志村ふくみの衣裳監修による新作能「沖の宮」の能装束が展示されていました。

島原の乱で命を落とした天草四郎(あまくさしろう)と、生き残った少女あやを通して描かれる人々の死と再生の物語です。 村の干ばつのため龍神の人柱に選ばれたあやが1人で乗せられた舟が沖へ流されます。そこへ雷鳴とともに天青の衣で現れた天草四郎の靈が海底の「沖の宮」へあやを導くという物語です。

あやの纏う長絹《紅扇(べにおおぎ)》(左)は紅花が鮮やかな緋色。ふくみが「そこだけが霊界の明るさを象徴」されたいと願った色です。シテの天草四郎の水衣《水瑠璃(みずるり)》(中央)は、「天のしずくのような青」「みはなだ色」の透明感が霊的存在であることを感じさせます。

水面に映る光の揺らめきを縦糸と横糸で文様化したような狩衣《龍神(りゅうじん)》(右)は、「沖の宮」の世界観を表しているようです。

「沖の宮」は、現代日本への危機感をつのらせた2人が、未来の世代へ残したい最後のメッセージが込められた物語です。

※12月17日(火)~2025年1月19日(日)は後期展示作品になります。

 

出典:リビング東京Web

左から、志村ふくみ監修 長絹《紅扇》2018 2018年 平織/絹糸、紅花、藍、刈安 制作 都機工房 個人蔵(前期展示)、水衣《水瑠璃》2017 2017年 平織/絹糸、紅花、藍、刈安 制作 都機工房 個人蔵(前期展示)、狩衣《竜神》2018 2018年 紬織/絹糸、藍、梔子、玉葱 制作 都機工房 個人蔵(前期展示)

志村ふくみ、草木が抱くいのちの色で染めた糸で紡いだ100年

「草木がすでに抱いている色のいのちを、私たちはいただいているのです。」(『人間国宝・志村ふくみ 100歳記念 《秋霞》から《野の果て》まで』世界文化社より) 草木の自然の色で染めあげた糸と作家の祈りにも似た詩情豊かな感性が紡いだきものの美を堪能する特別展です。

大倉集古館で開催中の「特別展 志村ふくみ 100歳記念 ―《秋霞》から《野の果て》まで―」は2025年1月19日(日)までです。 是非お出かけください。

 

出典:リビング東京Web

大倉集古館[/caption]

ミュージアムショップ

ミュージアムグッズは、小裂のにおい袋(2,200円)、卓上カレンダーのKogire CALENDAR 2025(1,980円)を購入。 卓上カレンダーは志村ふくみの小裂をコラージュしたデザインです。

 

出典:リビング東京Web

ミュージアムグッズ 大倉集古館[/caption]

〇大倉集古館

URL:https://www.shukokan.org/

〒105-0001東京都港区虎ノ門2-10-3(オークラ東京前)

TEL:03-5575-5711

交通:東京メトロ南北線 六本木一丁目駅 中央改札(泉ガーデン方面)より5分 東京メトロ日比谷線 神谷町駅 4b出口より7分 東京メトロ日比谷線 虎ノ門ヒルズ駅 A2a出口より8分 東京メトロ銀座線・南北線 溜池山王駅 13番出口より10分 東京メトロ銀座線 虎ノ門駅 3番出口より10分

※駐車場はありません

〇特別展 志村ふくみ 100 歳記念 ―《秋霞》から《野の果て》まで―

会 期:2024年11月21日(木)~2025年1月19日(日)

前期:11月21日(木)~12月15日(日)

後期:12月17日(火)~2025年1月19日(日)

※前期後期で作品の展示替えがあります。

開館時間:10:00~17:00(入館は16:30まで)金曜日は19:00まで開館(入場は18:30まで)

休 館 日:毎週月曜日(祝・休日の場合は翌平日)、12月29~31日

※新年は1月1日から開館 入 館 料:一般 1,500円、大学生・高校生 1,000円、中学生以下無料

※同会期中のリピーターは 500 円引き(一般、大学生・高校生料金をお支払いの方のみ)

※20名以上の団体は500円引き

※障がい者手帳、被爆者手帳をご提示の方とその同伴者1名は無料

※お着物(和装)の方は300円引き

※ミュージアムパスポート5,500円

※オークラ東京とのセット鑑賞券(ランチセット 6,000円、茶菓セット 3,100円)

※割引併用不可

※ミュージアムショップ:大倉集古館の営業時間に準ずる

◎『人間国宝・志村ふくみ 100歳記念 《秋霞》から《野の果て》まで』

2025年2月5日初版第一刷発行 (株)世界文化社

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