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【インタビュー】J2ジェフユナイテッド千葉DF岡庭愁人が母校の先輩からもらった言葉…未知のコンバートを乗り越え「熱くて、強い選手になる」

  • 2024.12.19
【インタビュー】J2ジェフユナイテッド千葉DF岡庭愁人が母校の先輩からもらった言葉…未知のコンバートを乗り越え「熱くて、強い選手になる」
【インタビュー】J2ジェフユナイテッド千葉DF岡庭愁人が母校の先輩からもらった言葉…未知のコンバートを乗り越え「熱くて、強い選手になる」

Text by ライター

J2ジェフユナイテッド千葉のDF岡庭愁人(しゅうと)は、J2最終節モンテディオ山形戦について多くを語らなかった。今季J1・FC東京から期限付き移籍で加入し、公式戦34試合出場3得点5アシストを記録しながらもベンチで最終節を見届けた背番号19。慣れ親しんだクラブから挑戦の場を移した岡庭が、今季を振り返った。

(取材・文・写真 浅野凜太郎)

山形戦について話すことは「難しい」

千葉は2024シーズンを7位で終えて、16季ぶりのJ1復帰を逃した。最終節山形戦はJ1昇格プレーオフ(PO)進出の可能性がある試合だったが、立ち上がり早々に失点を許すと、そのまま0-4で敗戦。イレブンは苦悶(くもん)の表情を浮かべながら、ピッチを去った。

完敗だった山形戦について「(ピッチの)中でやっている選手にしか分からないことがあるので、(意見を言うことは)難しいです」と口にした岡庭は、最終節で控えメンバーに入ったが、最後までベンチから試合を見届けた。

もちろん試合に出たかったが、自身のモットーである「チームのために自分ができること」を最後までやり続けた。試合中はベンチから声を出し、交代で下がった選手にはいち早く労いの言葉をかけた。思えば、岡庭は千葉加入後から最終節まで変わらずに、その姿勢を貫いていた。

【インタビュー】J2ジェフユナイテッド千葉DF岡庭愁人が母校の先輩からもらった言葉…未知のコンバートを乗り越え「熱くて、強い選手になる」
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チームがトレーニングの最後にシャトルランを行っていた日のことだ。小林慶行(よしゆき)監督が根付かせた強度の高い練習メニューに「きつい」と声をあげる選手もいた中、背番号19は仲間たちに「やるよ、やるよ!」と鼓舞していた。

途中出場となった第32節のJ2レノファ山口戦では試合終盤に背番号19がPKを獲得したが、蹴りたい気持ちを抑えてFW小森飛絢(ひいろ)にキッカーを譲った。キャリア初のハットトリックが懸かったエースとチームのためを思った行動をとった。

高校年代はFC東京U-18で育ち、大学サッカー界屈指の名門である明治大へ進学した岡庭は、右サイドバックとして持ち前の運動量と正確なクロスを磨きFC東京でプロ内定を勝ち取った。

「オカニー」のニックネームで親しまれ、サポーターからも愛される25歳のキャリアとプレースタイル、そしてピッチ内外での振る舞いは、FC東京と明治大の先輩である日本代表DF長友佑都と重なる部分がある。

【インタビュー】J2ジェフユナイテッド千葉DF岡庭愁人が母校の先輩からもらった言葉…未知のコンバートを乗り越え「熱くて、強い選手になる」
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岡庭は2021年に共闘したサムライブルーのDFについて「(FC東京に)入団した当初は、(長友のことを)意識していました。早く(長友の)ベースに乗っからないといけないと考えていた」と模範にしていた。

サイドバックというポジションは25歳にとって「大事にしてきたポジション」だ。憧れの存在に追いつこうと、昨季は期限付き移籍先の当時J2大宮アルディージャで奮闘。右サイドバックを主軸として、リーグ戦42試合に出場するなど、充実のシーズンを過ごした。

そして今季、若きサイドバックに転機が訪れた。

サイドハーフとして「いいところを伸ばしていけばいい」

「いくつかオファーがありましたが、慶行さんが足を運んでくれて熱い想いを語ってくれました。そこで1番心が動いたので、ジェフに来ました」

1月6日に千葉へ期限付き移籍で加入すると発表された。長い間J2で苦しむ古豪をトップディビジョンへ押し上げるための即戦力として、チームに迎え入れられた。

「自分を評価してくれるところで、活躍したい」と、気持ちを新たにして迎えた2024年だった。しかしリーグ戦の途中に行われたJ1柏レイソルとの練習試合で、岡庭は慣れ親しんだサイドバックではなく、監督からサイドハーフを任された。

「サイドバックとしてジェフに来た中で、サイドハーフにコンバート。最初のころは両方のポジションをやることもあって難しく考えてしまいました。気持ちが整理できていない時期もありました」と吐露した。

J2開幕前戦から第6節までのうち、5試合はメンバー外。その後も途中出場が続き、なかなか新しいポジションでチャンスをつかめなかった。

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岡庭は悔しさをバネに練習に打ち込んだ。ミニゲームでは積極的に仕掛けるプレーを心がけて、ゴール前で驚異となるプレーを連発。いざ試合に出場すれば、限られた出番の中でもクロスを量産して攻撃を活性化させた。

するとJ2第14節の横浜FC戦で今季初の先発出場を勝ち取り、チームの勝利に貢献。続くJ2ヴァンフォーレ甲府戦ではクロスからアシストを記録した。

「サイドハーフとして大切にしなければいけないことを、自分の中で区別できた。それが落ち着いてから自分自身も結果が出たり、チームに大きく貢献できる場面が増えました」

成長の兆しを見せたハードワーカーは、サイドハーフをモノにした。出場すればクロスからチャンスを演出し、守備でも二度追い、三度追いを繰り返した。また競争が激しい千葉の中でも、複数ポジションでプレーできる新たな武器が強みとなり、時にはクローザーとしてチームを支えた。

【インタビュー】J2ジェフユナイテッド千葉DF岡庭愁人が母校の先輩からもらった言葉…未知のコンバートを乗り越え「熱くて、強い選手になる」
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「いいところをどんどん伸ばしていけばいいと気づきました。(長友と)同じところで勝負しなくても、自分自身という武器でどう戦うのか。(サイドバックでのプレーは)ブラさないまま、(サイドハーフを)自分の中で受け入れました」

これまで積み上げてきたサイドバックとしてのアイデンティティを生かしながら、サイドハーフとしての新境地を開いた。いつしか「自分は前線の選手だ」という自覚が強くなり、ゴールへの執着心が増していった努力家は、ピッチ内外で確かな手ごたえを感じ始めていた。

ただその一方では「いつでもスタメンから外れる」という危機感を持ち続けていた岡庭。し烈なスタメン争いの中で、後半戦は悔しい思いを味わった。

第34節J2ザスパ群馬戦でクローザーとして出場すると、カウンターの場面で手をかけられてファウルを受けた。その直後、得点のチャンスを奪われた悔しさから、やり場のない怒りを爆発させた。

【インタビュー】J2ジェフユナイテッド千葉DF岡庭愁人が母校の先輩からもらった言葉…未知のコンバートを乗り越え「熱くて、強い選手になる」
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当時の心境について岡庭は「サッカー選手なので…」と消化不良を吐露。第32節から最後の第38節までは、スタメン出場の機会に恵まれなかったサイドハーフは、目に見える結果に飢えていた。

「最後の5節くらいは、あまりチームに貢献できなかった。もっと、もっと突き詰めないといけないところが出たシーズンだと思います」

母校が同じ先輩DFからの言葉

期限付き移籍先の千葉でコンバートを経験し、慣れないポジションで奮闘したが、シーズン終盤には苦い思いを経験した。それでも不平不満を漏らさずに、最後の最後までチームの和を重んじる振る舞いを見せた背番号19の強さはどこからくるのか。

岡庭は、今季途中から千葉にやって来た先輩DFの言葉を教えてくれた。

J1ジュビロ磐田で活躍し、今夏に期限付き移籍で千葉へ加入した明治大の先輩DF小川大貴と頻繫にコミュニケーションを交わした。

【インタビュー】J2ジェフユナイテッド千葉DF岡庭愁人が母校の先輩からもらった言葉…未知のコンバートを乗り越え「熱くて、強い選手になる」
【インタビュー】J2ジェフユナイテッド千葉DF岡庭愁人が母校の先輩からもらった言葉…未知のコンバートを乗り越え「熱くて、強い選手になる」

明治大を卒業し、愛するクラブから飛び出したという共通点を持つ二人は、「どうすればチームがよりまとまるのか」、「相手にとって怖いプレーとは何なのか」など、お互いのサッカー観について深く話し合っていくうちに、一つの結論にたどり着いたという。

「『結局、サッカー選手は気持ちだよね』と言われて…それを聞いたとき『あぁ、そうだよな』と納得しました。想いが乗ったプレーには重みがある。それで出られるかどうかは分からないけど、プレーの質とかこだわり、ピッチ外でも想いが表れると思うんです。思い返せば、いままで出会ってきた先輩方も、そこは大事にしていました」

25歳は「いまより、もっと必要とされるような、熱くて、強い選手になりたい」と青写真を描いている。目標としていた先輩たちを超えていき、プレイヤーとしてもっと成長したいという熱い想いが、ピッチ内外での振る舞いに表れていた。

【インタビュー】J2ジェフユナイテッド千葉DF岡庭愁人が母校の先輩からもらった言葉…未知のコンバートを乗り越え「熱くて、強い選手になる」
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千葉での日々は、決して順風満帆なものではなかったが、新たに見つけた自分の可能性に前向きな気持ちを抱いている。背番号19は「本当にいいチームだった」と、イレブンへの感謝を述べながら、来季への決意を語った。

「新たに1個前のポジションで、限界をつくらずにやって来られたと思います。選手としての想いは毎年のように強くなっていますし、その中で僕は成長していきます」

J2の舞台で新境地を開いた男は、いかなる逆境でも倒れない。岡庭愁人は、誰よりも熱い気持ちを持って、未知のキャリアを力強く進んでいく。

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