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肌や膣の健康のために欠かせない“エストロゲン”。専門家に聞く女性ホルモンとの上手な付き合い方

  • 2024.12.19

女性ホルモンのひとつ、エストロゲンとは?

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「きっとホルモンのせい」。 ある年齢層の女性、特に中年前後の女性の身体のさまざまな部分に現れる不調を説明するのによく使われるセリフだ。だが、ホルモン、特にエストロゲン(卵胞ホルモン)という言葉が浸透したからといって、私たちの健康全般におけるその役割や更年期の適切な治療法などが理解されているわけではない。

エストロゲンとは、月経周期の調節を助ける一群のホルモン(エストラジオール、エストリオール、エストロンの3種類)で、泌尿器や骨、乳房、皮膚、心臓、血管、骨盤筋、脳など、体のさまざまな部分に影響を及ぼす。さらに、膣の健康に関しても重要な役割を果たしている。「膣の構造と弾力性をサポートするエストロゲンは、壁を厚く弾力性のあるものにし、膣の潤滑性を維持します」と話すのは、産婦人科医でHerMD Health創設者であるソミ・ジャヴァイド医学博士。また、女性の脳にはエストロゲン受容体が多く存在するため、学習や集中力、記憶力、成長といった認知機能にも関係してくる。「エストロゲンは、前頭前皮質や海馬などの脳部位に作用を及ぼし、気分や運動協調、痛覚過敏、認知、脳卒中やパーキンソン病、アルツハイマー病からの神経保護に影響を与えます」と、産婦人科医でHello Alphaの最高医療責任者であるメアリー・ジェイコブソン医学博士は説明する。「また、私たちの体に快感をもたらすホルモンであるセロトニンの調節にも関係しています。気分を高揚させ、不安や抑うつを食い止めるのがセロトニンです」とジャヴァイドは付け加える。

エストロゲンと肌の関係

健康な肌を維持するためには多くのことが必要だが、「エストロゲンは、肌のコラーゲンとエラスチンの生成を促進し、肌のハリ、強さ、若々しさを保つのに重要なタンパク質です」とジャヴァイド。また、創傷治癒を助けて肌のバリア機能を維持し、さらにヒアルロン酸の含有量を増やして肌の潤いを保つとされている。「膣の粘膜を潤すのと同じように、顔の皮膚も潤します」と、コネチカット州のエール大学で学んだ皮膚科医、モナ・ゴハラ医学博士は言う。

エストロゲンレベルが低下する時期

ほとんどの女性が月経周期の後半にエストロゲンの低下を経験する。「エストロゲンレベルは、視床下部、下垂体、卵巣の間の複雑な関係に基づいて、生理的に月経周期を通して変動します」とジェイコブソンは付け加える。

年齢を重ね閉経に近づくにつれ、体内のエストロゲンは緩やかに減少していき、プロゲステロンやテストステロンも減少することが研究で明らかになっている。だがジャバイドによれば、その減少には一貫性がなく、閉経までに12カ月間月経がなくなる期間にはエストロゲンレベルはより安定的に低下するという。

エストロゲン不足が私たちに与える影響

月経周期中にエストロゲンが一時的に低下すると、その影響は多岐にわたり、不機嫌になったり、偏頭痛や乳房の圧痛、肌が敏感になるといったPMS症状が現れる。また更年期には、エストロゲンレベルの低下に伴って、「膣のpHを維持し、感染、病気、炎症から膣を守る重要な乳酸菌のレベルも低下します」とジャヴァイドは言う。さらに彼女によれば、更年期や閉経期に女性の62%が罹患している軽い認知機能低下、例えば、ブレインフォグ(脳がもやがかること)、物忘れ、集中力の欠如、言葉がすぐに出てこない、などの症状にも関係するとのこと。ブリジット・エヴェレット主演のHBOオリジナルコメディ「サムバディ・サムウェア」のエピソードで、サムがジョエルに「私ったらなんで何も思い出せないの? 更年期? 閉経期?」と聞き、「何が違うの? 誰もわかんないよ」と2人で笑い合う場面がこの事象を物語っている。また、性交痛、生理不順、そして更年期障害で多いほてりの原因にもなるほか、薄毛や、皮膚の天然保湿物質のひとつである物質の分泌を支えているため、膣や顔の乾燥にもつながる。「実際にはいろんな部分に大きく影響が出るにもかかわらず、エストロゲンの分泌や不足が老化のプロセスと関連付けられることはあまりありません」と言うのはゴハラで、「肌のたるみが目立ち始め、小じわも目立つようにもなります」と付け加える。

失われたエストロゲンを補充する方法

Oestrogen pill, conceptual image

更年期の初期症状に対する最初の対策として、経口避妊薬(ピルやパッチなど)を勧められる場合がある。そして移行期に移ると、生活習慣の改善、非ホルモン的介入、またはホルモン補充療法(HRT)を組み合わせた治療法などの選択肢が出てくる。ホルモン補充治療は慎重に行う必要があるが、NAMS(北米更年期学会)による最新ガイドラインでは、標準の選択肢として支持されるように。そのホルモン補充療法はプロゲステロン(黄体ホルモン)の有無にかかわらず、局所療法と全身療法に分類されるのが一般的だ。

「局所療法とは、膣のような特定の患部を対象とした治療法のことです。全身療法は、内服、パッチ、スプレー、ジェル、リングなどさまざまな方法で処方され、一般的に局所療法よりも高用量のエストロゲンを含みます。そして血流に入れ、身体のあらゆる部分に循環するようにします」とジャヴァイド。ジェイコブソンによれば、全身療法は、ほてり、膣の乾燥、寝汗、骨量減少などに効果があり、睡眠と性機能の改善、生活の質の向上につながるという。ジャヴァイドはまた、テストステロン療法が性機能、興奮、欲求の改善に役立つという新たな研究も紹介してくれた。また別の研究で、ホルモン療法が特定の遺伝子型を持つ女性の認知機能低下を予防し、脳の健康状態を改善する可能性があることが判明した、とジャヴァイドは付け加える。

エストロゲンが過剰分泌されている場合は?

産婦人科医でVSpotの最高医療責任者であるモニカ・グローバー医学博士は「エストロゲンレベルを調節するテストステロンやプロゲステロンのバランスが崩れていると、エストロゲンが多すぎることもあります」と言う。この過剰状態は、がんを含む特定の疾病状態につながる可能性がある。ニュージャージー州に拠点を置く美容皮膚科医ジェニーン・ダウニー医学博士は、エストロゲン受容体陽性の乳がんや、子宮体がん、子宮内膜がん、子宮頸がんなど、さまざまな種類のがんを患う患者が多いことから診察を慎重に行うようにしており、「エストロゲンを摂取しすぎている人もいます」と彼女は指摘する。

エストロゲンを皮膚に塗布するメリット

この話題については、医師の間でも意見が分かれている。MMSkincareの創始者であり、自身もエストロゲン療法を受けている皮膚科医エレン・マーマー医学博士は、皮膚に対するホルモン療法のメリットは見落とされがち、と言う。「エストロゲン局所投与は、皮膚の乾燥やニキビ、赤ら顔に効きます」と彼女は言い、高用量のエストロゲンを皮膚に使用する場合は、全身療法と同様に医師の注意のもとに行うべきです、と付け加える。「エストロゲンの低下はコラーゲンを萎ませ、血管やリンパの循環や保湿を低下させます。エストロゲンを皮膚に塗布することで、これらの症状を緩和し、保湿を改善できます」。他方で、美容目的で皮膚に有益であるという十分な証拠を認めていないゴハラや、有益性を認めつつもエストロゲンの代替品のみを勧めるダウニーのような医師もいる。

その彼女が更年期移行期の患者に勧めるのは、彼女自身が臨床試験に携わった、MEP(メチルエストラジオールプロパノエート)技術を用いたエンペル(EMEPELLE)のような、更年期用のスキンケアプロダクトだ。「非ホルモン治療で、肌のコラーゲンの減少や乾燥、くすみ、菲薄化、しわの改善にとても役立ちます」とダウニーは言い、エストロゲンを模倣するこの外用薬は、レチノールのような成分に対して有効だと考えている。一方でゴハラは、レチノールのようなコラーゲンを増やすスキンケアの定番や、バイオシミラー成分(ヒアルロン酸に脂質が豊富なクリームをトッピングしたようなもの)を使ったダブル保湿を患者に勧める。ここで誰もが一致しているのは、同じクリームを使って顔と膣のダブル保湿をすべきではないということ。「顔の皮膚もですが、外陰部の皮膚はもっと敏感です」とグローバーは言い、成分によっては外陰部の皮膚を刺激し、薄毛の原因になる可能性があると付け加える。pHが乱れてしまうのは当たり前、と言うのはダウニーだ。「顔とデリケートゾーンに同じクリームを使っていた患者さんが、カンジダ膣炎に感染したことがあります。絶対に真似しないでくださいね」

Text: Fiorella Valdesolo Translation: Moe Ideishi

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