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『いたばしの地域ボードゲーム会』を立ち上げたフリー編集者「自然と地域の人や歴史を学べるゲームを作っていきたいです」

  • 2024.12.19

一週間後はクリスマス。そろそろサンタさんが子供達にどんなプレゼントを届けるか、そわそわする頃ですね。人気は、やっぱりゲームでしょうか? 板橋区でボードゲームを企画・制作するフリー編集者の方がいらっしゃいます。

板橋区在住の編集ディレクター松本浄さん

それぞれの朝は、それぞれの物語を連れてやってきます。

板橋区に住む編集ディレクターの松本浄さんは、昭和54年生まれの45歳。いわゆる“ファミコン世代”で、2つ違いの兄とテレビゲームに夢中になる子供時代を過ごしました。小学6年生になると、父親が使い古したパソコンでプログラミングをして、ゲームを作って遊んでいたと言います。

「ビルの壁をよじ登ってくるゾンビに、屋上から壺を落として撃退するゲームとか、いろんなゲームを作りましたね。あの頃はゲームで遊ぶより、作るほうが楽しかったです。ただ、当時は『ゲームで遊ぶことは悪いこと』といった風潮があって、自分でゲームを作っていることは誰にも話さず、こっそりと楽しんでいましたね。高校生になると、自分で考え、調べて学ぶことの楽しさに気づき、好きな科学の本ばかりを読んでいました」

その後、東京理科大に進学し、物理を専攻した松本さん。大学では自由な雰囲気の中で学べると期待していましたが、実際は講義形式の授業が多く、ただ聞くだけの日々に物足りなさを感じるようになります。やがて「早く社会に出たい」という思いが強まり、中退を決断します。

学習塾の教師を経て、出版社に就職した松本さんは、コピーライターとして、企業広告の制作に携わります。「お客さんの話を聞いてコピーを考える」という仕事が自分に向いていると気づき、独立を決意、結婚を機に板橋区へ引っ越しました。

現在は、デザイナーの奥様・松本初夏さんと、『いたばし編集デザイン室』を共同で運営しています。

「なぜ板橋に引っ越したのかよく聞かれるんですが、仕事がしやすい環境や交通の便がよいこと。そして一番は家賃の安さでしたね」

板橋に暮らすようになって、「板橋区民まつり」のパンフレットをはじめ、カフェやレストラン、中古車店のロゴマークや看板のデザインなど、松本さん夫婦は、地域に根ざした仕事も手掛けるようになりました。

『いたばしの地域ボードゲーム会』で参加者が楽しんでいる様子

「板橋に住んで16〜7年になりますが、最初は『何もないのが板橋の魅力』だと思っていたんです。でも“住めば都”とよく言ったもので、板橋が大好きと言う人がまわりに結構多いんですよ。同世代でゲーム好きの人もいて、そんな仲間と立ち上げたのが『いたばしの地域ボードゲーム会』でした」

ボードゲームとは、テーブルの上で遊ぶゲームのことで、例えば、将棋、囲碁、オセロ、すごろく、カルタ、トランプ、他にも「人生ゲーム」や「野球盤」など、電源を使わないアナログゲームことです。

いたばしケイサツ・いたばし防衛隊

『いたばしの地域ボードゲーム会』は、板橋区の地域ネタのオリジナルボードゲームを作って遊び、それを広める有志の会です。これまでに、板橋区に襲いかかる宇宙人から区民全員で街を守る『いたばし防衛隊』や、板橋・四国・オーストラリアの形を手の感触で当てるカプセルトイゲーム『イタシコラリア』など、板橋にまるわる様々なゲームを製作してきました。

新作カードゲーム「植村直己 遥かわが家へ」

そしてこのほど完成したゲームが『植村直己 遥かわが家へ』。板橋区ゆかりの冒険家・植村直己さんの壮大な旅をテーマに、大自然を超えて「わが家」へ帰還することを目的としたカードゲームです。2〜3人で対戦し、5分ほどで決着がつくゲームですが、大自然の脅威を前に、「進むか、立ち止まるか」、そのジレンマが楽しめます。

「植村直己さんがマッキンリーで消息を絶った時、私はまだ5歳でした。世界的な冒険家で、板橋区に住んでいたことは、引っ越してから知りました。区内に『植村冒険館』がありますが、今の子供達にゲームを通じて、植村直己さんのことを、もっと知ってもらいたくて制作しました」

『いたばしの地域ボードゲーム会』のメンバーは、40代のおじさん世代が中心です。そんなある日、一人の中学生が遊びに来ました。大人の中に混じって難しいボードゲームを一緒に楽しんで帰っていきました。あとで中学生の父親が「うちの子は引きこもりがちだったので、ボードゲームがきっかけで外に出るようになった」と喜んだそうです。

日本ボードゲーム教育協会のメンバーでもある松本さんは、こう言います。

「学校の授業は集団向けの効率化も必要なので、型にはまって退屈になりがちですが、本来、遊びと学びはとても近いもの……、楽しく笑いながら、自然と地域の人や歴史を学べるゲームを作っていきたいですね」

「植村直己-遥かわが家へ」を説明する松本浄さん
「植村直己-遥かわが家へ」を説明する松本浄さん

カードゲーム『遥かわが家へ』。このパッケージに載っている植村直己さんの言葉を最後にご紹介します。松本さんの好きな言葉です。

「必ず壁はある。それは乗り越えたとき、パッとまた新しい世界がある」

*『植村直己 遥かわが家へ』
https://sites.google.com/view/harukawagayae/top?authuser=0

*いたばし編集デザイン室
https://itabashi-edit-design.studio.site

*「いたばしの地域ボードゲーム会」
https://itabashi-boardgame.localinfo.jp

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