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NMB48安部若菜「やっと居場所を見つけた感じ」、2作目の小説「私の居場所はここじゃない」制作秘話を明かす

  • 2024.12.17
NMB48 安部若菜が2冊目の小説「私の居場所はここじゃない」を発表した。小説家としての安部若菜の作家性について迫った。 ※ザテレビジョン撮影
NMB48 安部若菜が2冊目の小説「私の居場所はここじゃない」を発表した。小説家としての安部若菜の作家性について迫った。 ※ザテレビジョン撮影

【画像】愛おしいまなざしを本に向ける安部若菜

文芸作家としても活動するNMB48の安部若菜の2冊目の小説『私の居場所はここじゃない』が12月6日に発売された。安部の1作目の小説『アイドル失格』は全12話で実写ドラマされ、「コンプティーク」でコミカライズも進行中。第2作『私の居場所はここじゃない』は、夢をテーマに芸能スクールに通う5名の高校生の物語を綴っている。WEBザテレビジョンでは、NMB48の主力メンバーとして活動する傍ら小説執筆にも精力的に挑戦する安部若菜に作家としてインタビューを実施。2作目を発表した心境や、作家としての努力やアイドル活動との両立…そして安部若菜の作家性に迫った。現役アイドル安部若菜にとっての執筆活動とは。

本当に本が好き、小説家になることは小さい頃からの夢だった

※提供写真
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――1冊目「アイドル失格」はドラマ化コミカライズもされました。どのような反響が安部さんに届いていますか?

読んだ後に著者の私がアイドルだったと知った、というコメントはいくつかいただいていました。それはまさに私の目指すところでもあったので嬉しかったですね。あと、これは本当に素直な意見だなと思って、「思ってたより面白かった」という意見も正直嬉しかったですね。やっぱりアイドルが書いた小説となると、どんなものかな?と最初は皆さん考えると思うんです。その予想を上回れたことはうれしかったですね。

――原作小説だけでなく、ドラマ版の『アイドル失格』を見てNMB48の山本望叶さん(ドラマ版主演)のことを知った、という人も多かったそうですね。

はい。結構いただきました。ポジティブな意見を多くいただいたのでうれしいですね。

――安部さんはNMB48のアイドル活動では「100通りの楽しみ方ができるアイドル」としていろいろなことをやられていますが、それでもいきなり小説を書き上げることはなかなかできることではないと思いますです。作家としての活動はどのようにカタチにしていったのでしょうか。

おっしゃっていただいた通り、割といろいろなことを怒られずになんとか…そこそこやれるタイプではありました。でも、執筆作業は、書き始めた最初はもう何を書いていいかも全くわからなくて、すごく迷ったんですけれど、もう思うままに、正解なのか不正解なのかもうわからないままずっとここまで書いてきてここまで来た、というのが正直なところです。

――書くことが好きな人は一般の方にもたくさんいると思います。でも、その「書いたものを形にする」ことが1番大変だと思います。やりきれたのはなぜでしょうか。

やり方がわからないけれど、とりあえずやってみた…のですが、やっぱり「書きたいって心から思ってやっていたから」じゃないでしょうか。書いてるうちは「一生終わらないんじゃないか」と思った時もあったんですけれど、自分で言ったからにはちゃんと完成させたかったんです。きっと、「やらされていること」だったらもうずっと文句ばっかり言ってたと思います(笑)

――「書きたい」の気持ちの源泉はどこににあったのでしょうか。

昔から本当に本が大好きで、小学生の頃にも「小説家になりたい」って言っていました。でも、アイドルになって、アイドルがいろんなことに挑戦できるありがたい環境にいたときに「やりたいことない?」って聞かれ、昔の夢だった小説を書きたいということが浮かんできて、それをなんとか実現できたという感じですね。アイドルをやってる中でも、結構鬱憤を抱えたりしていまして…でもそれは小説ならプラスに活かせると思ったんです。

夢は持たなければいけないものなのか?

※ザテレビジョン撮影
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――1冊目は「アイドル失格」で、現役アイドルにとって恋愛は悪いことなのか、といったテーマがあったと思います。2冊目の今作「私の居場所はここじゃない」は芸能オーディションがテーマです。どういったインスピレーションから生まれたのでしょうか。

2作目は「夢」をテーマに書きたいっていうのが1番最初に決まっていました。今の私も、アイドルになるという夢を叶えたけど、でも叶えてからもまた別の夢に追われ続けて、別の夢を探さなきゃいけないのかな?とか、考えたこともあります。小さい頃から将来の夢について作文とか書かされるじゃないですか。「夢」があるのは当たり前みたいに世の中に染みついているけど、本当の夢ってそう簡単に見つからないよなとずっと思いながらアイドルをしてたことが、書くきっかけになりました。

――アイドルは楽しいところをお客さんに届ける仕事で、その裏側は普段は描かない部分が多いと思います。今回に関しては、その前段の「芸能人になる前の話」を5人分描かれています。安部さん自身が大人数のグループにいたからこそ、ひとりひとりに物語があるんだという思いがあったから、こういう形になったのでしょうか?

今回は「芸能界」じゃなくて、「普通の高校生」を主軸にしたかったんです。でもその話を書く時に、自分の経験・自分にしか書けないものを考えた時に、スクールに通って芸能界を目指す普通の子たちを描こうと考えました。やっぱり「芸能界」「アイドル」ってなると、ちょっと遠い世界になってしまうと思うんですけれど、誰でも共感できるような、親近感のある話にしたいと思ったんです。

――今回は5人の高校生それぞれの物語を描いています。5人がリレーみたいにほかの人の話にも入ってくるという面白い構成でしたね。

いろいろな視点から、夢に対する向き合い方みたいなものを書きたくて、5人 の主人公で視点が移り変わっていくっていうのにしました。…それが難しかったです。

――5人のうちに、男子のエピソードも入っています。ご自身が体験されたものをベースにしたのだと考えていたので、男子を描いているのも驚きました。

結構想像力を働かせたり、自分とは違う性格のメンバーに取材をしながら書きました。自分が経験してないことを書けるのが創作の小説だとも思うので、私の中ではそこを乗り越えないと小説を書いてるとは言えないなという思いもあって、取材した内容を自分の言葉で書くということをしました。

※ザテレビジョン撮影
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――今作は「夢」がテーマとのことでした。書き終えて、安部さんの中で、「夢」とは何であるか掴めましたか?

WEBザテレビジョンの連載の方にも「夢がなくちゃいけないんですか」と書いたのですが、夢を決めて追い続けるのが美徳みたいな感じが世の中ありますよね。でも、小説を書いてみて夢は途中で変えてもいいし、叶わなくてもいいこと、ということを改めて自分の考えとして持ちました。

――夢が叶わなかった結果、新しい夢が見つかる…など人にはいろいろなパターンがありますよね。

そうですね。夢があることで苦しい思いをすることももちろんあると思うんですけど、人に寄り添えるような、「この章の話、なんだか共感するな」みたいのが見つけていただけたら嬉しいなとは思います。

――「私の居場所はここじゃない」というタイトルにもつながりそうな気がします。

書き終わってからタイトルを決めたんですけど、結構物語の中でもキーワードで、いろいろな捉え方ができる言葉だと思いました。一般的には夢を叶える=ゴールで自分の居場所を手に入れるみたいなことだと思うんですけれど、でも1番の夢を叶えたとしても、それが自分の本当の居場所かどうかって実はわからないと思うんです。多分、いつまでたっても「もっといい場所があるんじゃないか」と思うものなんじゃないかと。それはもうこの物語にも共通していますし、同じように思ってる人が手に取ってくれたらいいなと思ってこのタイトルにしました。

安部若菜の夢の始まり…作家業は「やっと居場所を見つけた感じ」

※ザテレビジョン撮影
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――今回は5人がの高校生が登場します。特に思い入れの強いキャラクターは?

1番似てると思うのは純平っていう男の子で、この子は「普通な自分」にすごい劣等感を持っていて、特別になりたいとか結構他の人を羨んでばっかりの男の子なんです。私もずっと「自分って全然何もないな」って思うことばっかりなので、そういう特別になりたいという思いは、結構いろいろな人が思ってることじゃないかなと思います。同じ思いを持つ方に共感していただきたくて、1番時間をかけて書きました。

※提供写真
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――今は多様性の時代で、「何者かになれ」というより「君は君でいいんだよ」という時代です。そんな中で「高校生の夢」を描くことにはどういう思いがありますか?

今は今で、SNSを見ると、普通の高校生でも何万、何十万というフォロワーがいる人が目に入ってきたりします。“すごい人”が溢れてるので、そういう存在を目にして劣等感を持ったりすることが多いのではと思いました。むしろそっちの方が強いかもしれない。

――安部さんはアイドル7年目です。ご自身がアイドルになることを夢に持っていた時の話を伺えますか。

中学生の頃からアイドルになりたいなとは思いつつ、でも絶対自分なんかなれるわけないって思っていました。だから、アイドルって夢を持った自分を恨むぐらいその時期は苦しくて。諦めをつけるためにダメ元で高校1年生の時に48グループのオーディション受けました。アイドルになる人って、「自分大好き!」みたいな人が集まってる場だと思ってたんですけど、入ってみたら自信を持ってる人の方が少なくて。みんな自分と同じなんだっていうのはアイドルになって実感したので今回の話も、芸能界を目指してるけど意外と普通の子たちが主人公になっています。

――そんな安部さんもNMB48でアイドル7年生で大阪のトップアイドルなわけですが、自信のなさはどのように克服していったのでしょうか。グループには人数も多いから競争も激しいのではと思います。

今でも、周りの子と比べて自分はダメだなって思う時もすごくあります。自分に自信がないがスタートだったので、私にできることを探して挑戦を続けていたら7年経ってたっていう感じです。これまで本当にいろいろなことに挑戦して、小説(執筆)もその途中で出会ったものです。でも小説を書くっていうことはすごくやりたいことでもあるし、大事な挑戦になってたので、振り返ってみたらやってきたことは間違ってなかったなと思います。

――なるほど、そうして「100通りの楽しみ方ができるアイドル」が出来上がったんですね。落語や、YouTube、ラジオ、となんでもやりますね。

いえいえ全然!突き抜けた1個がないことが自分の中ではずっとコンプレックスですね。

――作家業は2冊目で、ドラマ化コミック化されていることも考えると十分に「突き抜けてる」と思います。芸能人で本を書いている方はたくさんいらっしゃいますが、作家業の手ごたえはいかがでしょうか?

やっと自分にとっても、「居場所を見つけた」感じもあります。だからこそ、一作出しただけで終わりたくないなと思っていたので、今回また作品を発表できてうれしいですね。作家として1つずつ階段を上っていきたいです。

若者世代の将来の不安や葛藤を丁寧に描いていきたい

※ザテレビジョン撮影
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――安部さんが、今後作家として届けていきたいのはどういう作品ですか?

1冊目も2冊目も共通してることは、やっぱり若い世代の人たちの葛藤や悩み、将来への不安とか、そういう部分を丁寧に描くのを持ち味にしていきたいですね。私はアイドルとしてそこを体験してきました。1作目、2作目と書いてみて、もしかしたらそういう方向性が私が書くべきものなのかなと思い始めています。心理描写とかを細かく書ける人になりたいですね。

――次回作の構想はありますか?

いつかは本格的な恋愛小説を書きたいとは思ってるんですけれど、アイドルであるうちに書くと、なんだかよくない気がしていますので(笑)、個人的には大阪だったり、お笑いにこだわりもありますから、コメディー要素がある物語を手掛けてみたいですね。

――では、最後に改めて2冊目の小説「私の居場所はここじゃない」にかける思いをお聞かせください。

1作目の「アイドル失格」とは毛色も違う話になったと思いますし、登場人物も前回より増えた分、また違った物語をお届けできたのかなと思っています。今作は芸能スクールが舞台ですけれど、普通の高校生のお話です。芸能に興味がない人でも共感してもらえるところがあると思います。夢を追っている若者に限らず、もっと上の年代の方にもぜひ読んでいただきたいです。

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